Thursday, December 5, 2024

シアトルの初冬 先発隊の到着

Arrival of the advance team


 先発隊の到着
一九一九年三月七日  金曜日

 十重二十重(とえはたえ)と上方へ延びている天界の界層を見上げつつ、吾々は今や遅しと(キリストの降臨を)お待ちしておりました。


その天界の連なる様子はあたかも巨大なシルクのカーペットが垂れ広がっているごとくで、全体にプリーツ(ひだ)とフラウンス(ひだべり飾り)が施された様子は天界の陽光を浴びてプリズムのごとく輝くカスケード(階段状の滝)を思わせます。

プリーツの一つ一つが界層であり、フラウンスの一つ一つが境界域であり、それが上下の二つの界をつなぎ、それぞれの特色ある色彩を一つに融合させておりました。その上方からきらめく波がその巨大なマントを洗うように落ちて来ます。

色彩が天上的光輝を受けて、あたかも宝石のごとくきらめきます。その宝石の一つ一つが天使であり、それぞれに天上的光輝の美しさを一身に受け、そして反射しているのです。

 そう見ているうちに、吾々の視力の届くかぎりの一ばん高い位置の色彩がゆっくりと変化しはじめました。本来の色彩をとどめつつも別の要素、新たなきらめきが溢れております。

それを見て吾々はキリストならびに従者の一行がようやく吾々の視界の範囲まで降下してこられたことを知りました。


シルクのプリーツの一つがすぐ下のプリーツへ重なり、あたかも次のプリーツに口づけし、そのプリーツが同じように頭を垂れて頬を次のプリーツの肩にそっと触れていくのにも似た光景は、何とも言えない美しさでした。

 以上が吾々が見たキリストの降臨の最初の様子です。吾々には突き透せない光輝の中から今やっとお出ましになり、一歩一歩地球へ近づきつつもなおその間に広大な距離を控え、各界にその霊力を放散しつつ降りて来られるようでした。

流れ落ちる光の波はついに吾々の界より二、三手前の界層の境界域に打ち寄せてまいりました。そこまで来てさらに一段と理解がいきました。

吾々が見ているのはキリストの近衛兵の大連隊が光輝を発しつつ前進してくる様子だったのです。しかしキリストのお姿はまだ見えませんでした。

 その途方もない霊力と栄光の顕現にただただ感嘆と高揚にしばし浸っているうちに、こんどは吾々自身の内部から、愛と慈悲の念と今まさに始まらんとしている大事業に全力を投入しようとの決意の激発による魂の興奮を覚えはじめました。



それは同時に、いよいよキリストが近くまでお出でになられたことを告げるものでした。

 いよいよお出でになられた時の様子、さらには吾々の界を通過して下界へ降りて行かれた時の様子、それはとても言葉では尽くせません。あまりにも荘厳すぎるのです。が、私にできるかぎり何とか表現してみましょう。

 魂の興奮は次第に度合いを増し、吾々はお出ましの瞬間を見届けんものと、身を乗り出し首を伸ばして見つめました。まず目に入ったのは側近の随行者の先遺隊でした。

その一行は吾々にお迎えの準備を促す意味がありました。と言うのは、この度のお出ましはこれまでに私がたびたび叙述した顕現とは異なるのです。大事業の完遂のために幾千万とも知れぬ大軍を率いて、その本来の威力と栄光のままにお出ましになられるのです。

吾々もそのご威光を少しでも多く摂取する必要があり、それにはゆっくりとした過程で順応しなければなりません。そこでまず先発隊が派遣され、道中、必要とみた者には叡智を授け、ある者には祝福を与え、またある者には安らぎの口づけをするのです。

いよいよその一行が悠揚迫らぬ態度で吾々のところまで来られました。いずれ劣らぬ尊い霊格を具えられた方ばかりです。

上空を飛翔される方々と吾々の間を通り抜けて行かれる方々とがありました。そして吾々の誰かに目が行き、一瞬のうちにその足らざるところを察知して、必要なものを授け、そして先を急がれました。

上空を行かれる方から指示が出されることもありました。全体が強調的態勢で行動し、それが吾々にとって大きな教訓となりました。



──あなたご自身には何かありましたか。
 その一行の中には女性が混じっておりました。それは吾々の霊団も同じです。地上の戦争にも女性が派遣されるでしょう。吾々も女性ならではの援助の仕事のために女性を引き連れておりました。

 そのとき私は仲間から離れて後方にいました。というのは、従者の一行に話しかけたい者が大ぜいの仲間とともに前の方へ出て来たからです。

するとその私のところへ一対の男女が近づいて来られ、にっこりと微笑まれて双方が私の手を片方ずつ握られました。男性の方は私よりはるかに体格があり、女性の方は男性より少し小柄でした。いずれ劣らぬ端整な容姿と威厳を具えておられますが、そうした従者のいずれもがそうであるように、素朴な謙虚さと愛を感じさせました。

男性の方はもう一方の手を私の肩に置いてこう言われるのです──〝アーネル殿、貴殿のことを吾々二人はよく存じ上げております。吾々は間断なく生じる仕事においていつも互いの資質を出し合って協力し合っている間柄です。

実はこのたびこの界を通り過ぎることになって二人して貴殿をお探ししておりました。このご婦人から貴殿に申し上げたいことがあるようです。かねてよりそのことを胸に秘めて機会をうかがっておられました〟

 さてその婦人は実にお美しい方で、男性の光輝と相まった眩しさに私はただただ狼狽するばかりで、黙って見まわすしか為すすべがありません。

すると婦人はその握りしめていた手をさらに強く握られながら幾分高く持ち上げられました。続いて婦人の美しい頭にのっていた冠が私の目の前に下りて来ました。

私の手に口づけをされたのです。そしてしばしその姿勢を保たれ、私は婦人のしなやかな茶色がかった髪に目を落としました。まん中で分けられた髪が左右に垂れ、黄金のヘアバンドを付けておられました。私はひとことも口が利けませんでした。

高揚性と至純な聖(キヨ)さに溢れたよろこびが私を圧倒してしまったのです。それはとても筆舌に尽くせるものではありません。

 それから私はおもむろに男性の方へ目をやって私の戸惑いの気持ちを訴えました。すると婦人がゆっくりと頭を上げ私の顔を見つめられ、それと時を同じくして男性の方がこう言われたのです──〝アーネル殿、このご婦人は例の少女ミランヌの祖母に当たられる方です〟

 そう言われて婦人の方へ目を向けると、婦人はにっこりとされてこう言われたのです。

 「お礼申し上げます、アーネル様。あなた様は私が遠く離れ過ぎているために出来なかったことをしてくださいました。実はその子が窮地におかれているのを見て私はあなたへ向けて送念いたしました。あなたは私の願いに鋭敏に反応してくださいました。

間もなくその子も自分からお礼を申し上げるに参ることでしょうが、私からひとことお礼をと思いまして・・・・・・」

 そう言って私の額に口づけをされ、やさしく私のからだをご自分のおからだの方に引き寄せられました。それからお二人そろって笑顔でその場を立ち去られました。

その時の強烈な印象はその後いささかも消えやらず、霊的には常に接触が取れているように思います。今もそれを感じます。

 貴殿はミランヌなる少女が何者であろうかと思っておられる。実は私もその時そう思ったのです。もっともその少女との係わり合いについてはよく覚えております。

 古い話ではありません。あるとき仕事をしていると、貴殿も体験があると思いますが、誰かが自分に注意を向けているような感じがして、ふと仕事の手を休めました。そしてじっと受身の気持でいると、声ではなくて、ある種の衝動を覚え、すぐさまそれに従いました。


私は急いで地上へ向かいました。たどり着くとまた外部からの力で、今まさに地上を去って霊の世界へ入ろうとしている若い女性のところへ一直線に導かれていきました。最初は何のためなのかよく分かりませんでした。

ただそこに臨終を迎えた人体が横たわっているというだけです。が、間もなく分かりました。そのすぐ脇に男の霊が立っていて、その女性の霊が肉体から離れるのを待ちかまえております。

その男こそ地上でずっと彼女に災いをもたらしてきた霊で、彼女が肉体から離れるとすぐに邪悪の道へ引きずり込もうと待ちかまえていたのでした。

 その後のことをかいつまんで言えば、彼女が肉体から出ると私は身を挺してその男が近づくのをさえぎり、男の近づけない第三界の安全な場所へ運んだということです。今ではさらに二界層向上しております。その間ずっと私が保護し介抱してきました。

今でも私が保護者となってあげている霊の一人です。これでお分かりでしょう。お二人にお会いして、あの時の要請の出どころが分かり、同時に、その要請に応えて私が期待どおりにお役に立っていたことを知って、とてもうれしく思った次第です。

 そうした喜びは地上にいる間は理解できないでしょう。しかしイエスは施物分配の話と、首尾よく使命を全うした者を待ちうける歓迎の言葉の中に、そのことをすでに暗示しておられます。こう言っておられます──〝よくぞ果たされた。

そなたたちの忠誠心をうれしく思う。さ、私とともに喜びを分かち合おう〟(※)

 私もイエスとともに喜びを分かち合う光栄に浴したのです。ささやかながら私が首尾よくそれを全うして、今こうして一層大きな喜びの中に新たな大事業に参加することを許されたのです。多分ご婦人の言葉はキリストがお述べになる言葉そのものだったのだと確信しました。キリストの喜びとは常に献身の喜びなのです。
アーネル ±


(※マタイ25・21。この部分は聖書によって用語や若干の違いが見られるが、そのいずれもこの通信の文章とはかなり異なっている。アーネル霊は霊界の記録を見ているのであるから、この方が実際のイエスの言葉に近いのであろう──訳者)

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