Saturday, December 21, 2024

シアトルの冬 四つの団体の代表を迎えて

Welcoming representatives from four organizations




 シルバーバーチの交霊会は大半が霊媒のバーバネルの自宅の応接室で行われているが、前章の交霊会のように、出張先で行なうこともたまにあった。

 これから紹介するのは、現在は解散している「スピリチュアリスト評議会」の代表を集めて行なわれたもので、「グレーター・ワールド・アソシエーション」(『ベールの彼方の生活』の版元)、「スピリチュアリスト・アソシエーション・オブ・グレート・ブリテン」 (SAGBの略称で知られるスピリチュアリズムの中心的施設)、

「スピリチュアリスト・ナショナル・ユニオン」(SNUの略称で知られる英国最大のスピリチュアリストの集団)、それに「スピリチュアリスト霊媒同盟」の四つの団体から構成されていた。

(訳者注─── スピリチュアリズムの組織または団体にはこのほかに、英国では次章で紹介する「心霊治療家連盟」があり、米国には「米国スピリチュアリスト連盟」があり、世界的規模のものとしては「国際スピリチュアリスト連盟」(ISF)がある。私もその会員の一人である。

 シルバーバーチフアンの中には「宗教は組織をもつと堕落する」という言葉の意味を取り違えて、独立独歩を決めこみ、それが一種の利己主義ないし独善主義となっていることに気づかない人がいる。営利を目的とした組織と、真理普及およびサービス実践のための協力態勢とは別であることだけを、ここで述べておきたい)


 さて四団体の代表を前にしてシルバーバーチが挨拶をする ───

 「このたび皆様のご招待にあずかり、こうして語り合う機会を得ましたことを大きな栄誉と思っております。たずさわっておられる大きなお仕事の推進に当たって、私の申し上げることが幾らかでも力になればと願っております。

 申すまでもなく私は全知全能ではありません。が、ここにお集まりの皆さんよりは長い人生体験があります。その人生で私は大宇宙の仕組みとそれを統御している摂理について、皆さんよりは多くの知識を身につけたつもりです。

と言って、私が述べることは格別に耳新しいものではありません。真理には新しいも古いもありません。その表現の仕方がいろいろとあるというまでのことです。

 さて、皆さんは霊的真理とその証を手にされている点において、特別に恵まれた方たちです。より大きな生命の実在を身近かに自覚しておられます。

また皆さんと同じように崇高なる地球浄化の大事業に参画している霊団の存在を、ある人は霊視力で確かめ、ある人は霊聴力で確かめ、そういう能力をお持ちでない方でも、直観的に確信しておられます。霊団の役目は皆さんが迷うことなくこの大事業を計画どおりに推進するように導くことです。

 改めて申し上げるまでもないことと思いますが、皆さんが標榜しておられる霊的真理は、はるか高遠の界層の進化せる霊団によって立案された総合的な計画の一部として届けられているものです。その高級霊団を〝マスターズ〟と呼ぶ人もいれば〝ヒエラルキー〟と呼ぶ人もいます。

いずれにしても霊力が地上界へ絶え間なく、そしてより多く流入するように、またそのためのチャンネルとなるべき使者がますます多く地上へ派遣され、さらには、本日ここにお集まりの方々のように霊的真理に目覚めた方々が一致団結して普及活動に勤しめるように指導することを使命としているのです。

 愛する人を失って悲しみに暮れている人々、病床に伏せている人々、悩める人々、人生に疲れた人々等々・・・・・・こういう人たちは皆、人生の目的を見失っております。教会も科学者も思想家も何の力にもなってあげられないのが現実なのです。

 〝人間の窮地は神の好機〟という格言があります。肉体に包まれた霊(本来の自我)がその霊性に目覚め、活発に活動を開始するのは、そうした窮地にあって、もう物質の世界には何一つ頼りになるものがない ── 万事休すだ、と観念した時からです。

 皆さんが果たすべき役目は、そうした窮地にいる人々が真の自我に目覚め、地上に生を享けた目的を理解し、他人のために役立てるべき才能に気づかせてあげることです。

一口に言えば、肉体の死後から始まる永遠の旅路の次の段階にそなえて、この地上にあって自己実現を成就させてあげることです。

 それが地球浄化の大事業の一環なのです。その計画を立案し、その実現のために尽力している霊団が、今、あなた方の仕事を背後から援助しているのです。大切なのは、この評議会を結成している各グループ、団体、協会によって築かれた橋頭堡が十二分に強化されることです。

そうなれば、灯台と同じように辺りを明るく照らして、人生に疲れた人や道を見失ってしまった人々があなた方のもとを訪れ、悩みを解決するための英知を手にすることができます。

 それこそが、今あなた方がたずさわっておられる仕事なのです。大切なのはそこです。それは責任を伴うことでもあります。〝召される者は多く、選ばれる者は少ない〟と言ったイエスの言葉を思い出して下さい。あなた方は〝選ばれた者〟なのです。

みずから志願した人もいるでしょうし、依頼を受けた人もいるでしょう。どなたがどちらであるかは私にも分かりません。

 大切なのは霊的真理を広めるという責任です。これは人類全体にとって測り知れない恩恵をもたらすことになるからです。物質的な泥沼にはまり込んだ、この混乱せる地球にとって、生死に関わる大事業です」


─── それを国家的規模で行なうのがわれわれの仕事だと思うのですが、この評議会にとどまらず、スピリチュアリストの全組織を集合して大集会を開いてはどうかという案があります。それで効果が上がるでしょうか。

 「上がると思えばおやりになってみてはいかがですか。一致団結するにこしたことはありません。あなた方の第一の目標は一人でも多くの人々に真理を届けることです。

それに劣らず大切な目標は、霊的能力を授かっている人たちがその能力を正しく開発し、仕事の神聖さを自覚し、日常生活においても、最大限の霊力が自分を通して流入するように、身持ちをきちんとすることです。

 大切なのは組織そのものではありません。その組織として何をするかです。組織の名称はどうでもよろしい。大切なのは、どれだけのサービスをするかです。

大霊にとって団体や組織の名称は何の意味もありません。いかなる手段で霊的真理を表現し、霊力を地上に流入させるかです」


─── 一人でも多くの人に真理を届けるべきであるとおっしゃいました。そのこと自体に反論する者はいないと思うのですが、数が多くなりすぎると腐敗ないし堕落する傾向も懸念されます。手を差しのべる相手を選択するということも必要ではないでしょうか。

 「霊界側の観点から申し上げれば、皆さんは一人でも多くの人々に基本的なメッセージとその真実性の証を提供してあげるべきです。大霊の子には分け隔てなく霊的真理を手にする機会を用意してあげるべきです。

これは掛けがえのない神の恩寵であり、全人生の指導原理となるべき貴重な宝です。その好機に遭遇して、それを受け入れるか拒否するか、それはその人の責任において判断すべきことであって、あなたの気遣いは無用です。

 あなたのおっしゃる〝相手を選ぶ〟ということの趣旨はよく分かりますが、それはむしろ、すでに基本的真理を手にした人々、霊性開発へ向けての準備が整った人々を対象とした時に、さらに高度な霊的レベルとの交流を目指す上で、

果たしてそれだけの力量があるか否かを判定する時に問題とすべきことです。私が申し上げているのは、霊的な真理について何も知らずにいる人を対象とした時のことで、これは相手を選ぶべきではありません」


─── 私の考えでは、大切なのは霊能者の〝質〟であって〝量〟ではない───つまり霊媒現象の水準を高めるべきだと思うのですが、いかがでしょうか。

 「何ごとにつけ霊的なことを扱う際には量より質を優先すべきであるというご意見には私も賛成です。信頼のおけない霊能者一〇〇人よりも、真摯で有能な霊能者一人の方がましです」


─── 霊媒現象の質を高めるための方法をお教え願えませんか。

 「いくらでもあります。たびたび引用句を用いて恐縮ですが、ぴったりの言葉があるので引用させて下さい。聖書に〝まず神の国と義を求めよ。さればこれらの(世俗的な)こともすべて叶えられるであろう〟とあります。優先すべきものを間違わないようにとの戒めです。

 霊の道具である霊能者が自分の才能を神聖なものであるとの自覚を得た時から、重大な責任を背負うことになります。まず日常生活において、その才能を傷つけたり汚したりすることのないように心掛けないといけません。

 次に、その才能を最高の水準にまで高める努力を真剣に行わないといけません。そのためには手にした知識を日常生活の中で実践しないといけません。また瞑想と精神統一を実修しないといけません。同じ道を歩んでいる人たちに教えを請う必要もあるでしょう。

 あなたにはその指導がお出来になります。これまでの体験から、とかくはまりがちな落とし穴、困難、誘惑を指摘してあげることができます。そうした中でも一ばん大切なのは、自分の責任の自覚です。神の使者としての、途方もなく大きい責任です。

 そうした優先すべき事柄をきちんと優先させた生き方をしていれば、あとはおのずと収まります。霊的に正しければ、精神的にも物的にもきちんと整います。その優先順位を間違えたら最期、すべてが狂ってきます」


─── 霊媒は自然法則や霊媒現象の原理についてより多く知るほうが好ましいのでしょうか。

 「これはよく問題にされることで、私がどう言ったところで誰かが反論するでしょう。が、私がこれまで長年にわたってこの霊媒(バーバネル)を使用して、この種の霊媒現象(入神談話)の複雑なメカニズムについては十二分に理解しているつもりです。

その体験を踏まえて、あらゆる角度から検討してみて、何につけ、知っているということの方が知らずにいるよりもよいと考えます。知識をもつということは武装することです。知らずにいることは無防備ということを意味します」


─── あなたご自身およびあなたのような指導霊が地上のわれわれを援助するという場合に、それは、われわれ人間が為すべきことを実行するための能力の開発を指導するということと理解してよろしいでしょうか。つまりあなた方のなさることはアドバイスを与えるだけ、と。

 「とんでもない、それだけではありませんよ」

─── 必要な状態を生じさせることもなさるのでしょうか。

 「もちろんです。強いて例えれば、何本もの糸を操って必要な条件を整えなくてはならないこともあります。背後霊と緊密な関係を常日ごろから体験している方なら、必要とあれば霊側はどんな事態でも生じさせることができることを、身にしみてご存知のはずです。

 それには、困難というよりは、微妙な操作を必要とします。完ぺきな協調体勢を築くために、微妙なバイブレーションを扱うからです。 

 問題は、人間はとかく自分たちにとって都合のよい時機に都合のよい結果を要求することです。それはできません。こちらの条件に合わせて行なうしかありません。

本当はその方があなた方にとってもベストなのです。私たちはあなた方よりも広い視野で眺めていますから、どういう事態があなた方自身にとって一ばんよいかの判断ができます。人間の頼みごとを全部その通りに叶えてあげたら、とんでもない事態になりかねません」



─── 現在の霊界と地上界の霊的交信の状態にあなたは満足しておられますか。もしご不満であるならば、ここであなたおよびあなたの霊団の皆さんにぜひともお聞きしたいのですが、今後の交霊に関して何か特別の計画を用意されているのでしょうか。その計画に私たちはどういう態度で臨めばよいでしょうか。

 「よい質問をしてくださいました。まず申し上げたいのは、もし私たちが満足しているとしたら、それは使命を十分に果たしていないことを意味します。満足できないということは、神性の発露であると言ってもよいのです。

そうです、私たちは決して、この程度でよいと思うことはありません。もっとも、大変な困難に遭遇しながらも、よくぞここまで来れたものだという自己評価はしております。

 しょせん私たちは、今置かれた事情のもとで最善を尽くすほかはありません。それも人間という不完全な存在との協力のもとにやらねばならず、私たちもやはり人間的存在なのです。誰一人として完全の域に達した者はいないのです。

 ですから、結局のところ、完全へ向けての試行錯誤の中で努力しなければならないわけです。霊界通信において、霊媒現象において、あるいは心霊治療において、これからも可能なかぎり最高の結果を目指して最善を尽くしてまいります。皆さんが最善を尽くし、私たちが最善を尽くし、一致協力して最大限の影響力を行使するように致しましょう」


─── 私たちは困り果てると神に祈りますが、そちら側の態度として、私たちが祈るようになるまで放っておくのでしょうか。それとも祈ろうが祈るまいが、事の成り行きに任せる時もあれば、援助する時もあるのでしょうか。

 「この大霊のしろしめす宇宙という大機構の中においては、誰一人として、またいかなる存在といえども、放っておかれるということは、摂理上ありえないことです。大自然の摂理は完ぺきですから、全てを包摂しております。

何一つ、誰一人として、その支配から免れることはできません。大霊が見落とすということは有り得ないのです。どこにいようと、あなた方は大自然の摂理の支配下にあり、天の配剤を受けております。

 あなたにとって今何が必要かは神は先刻ご承知です。それを祈りによって表現することは結構なことです。なぜなら、その時点におけるその人の霊的ならびに精神的発達程度に応じて、可能なかぎりの援助が得やすくなるからです。

なるべくなら言葉に出して祈った方がよろしい。その波動によってあなたが何を動機に祈っているのか、その意図が鮮明になるからです」


─── 祈るということをしない人、あるいは絶望のどん底にあって神なんかいるものかと思っている人はどうなりますか。救いようがないのでしょうか。

「大霊の存在を信じる信じないは関係ありません。信じてくれないからといって大霊がお困りになることはありません」


─── いろいろな理由で神に祈れない、あるいは神の存在が信じられない人がいるとします。が、今とても困っていて手助けを必要としています。どういうことになるのでしょうか。

 「援助を受けるか受けないかは、大霊の存在を信じるか信じないかによって決まるのではありません。それまでに到達した精神的ならびに霊的進化の程度によって決まるのです。援助を手にするに値するだけのものを受けるのです。原因と結果の法則です。それが大自然の摂理なのです」


─── 生まれ変わりを信じておられますか。

 「もちろん信じております」


─── あなたの霊媒も信じていますか。

 「霊媒が何を信じようと私には関係ありません。同じく、彼も私のことに責任はありません」


─── 一個の霊が地上へ生まれ出る際には、あらかじめ一生の計画、つまり決められた寿命や体験すべき出来ごと、為すべき仕事があるということは信じていますが、もしも思わぬ事情から当人がその予定された道から外れて、取り返しのつかない事態に立ち至った時には、その人生を途中で切り上げてしまうこともあるというのは本当でしょうか。

 「まず初めに申し上げておきたいのは、そうした内的次元の問題に深入りすると、地上の言語では説明のできない、微妙で複雑な法則や事情を取り扱うことになるということです。

 物資界に生まれ出るに際しては、大体において今回はこうしたいという確たる目的を心に決めております。が、いざ物的身体に宿ってしまうと、種々雑多なエネルギーの相互作用に巻き込まれます。

中にはその初心の霊的目的に気づかないまま、愚かな道にはまり込んでしまう人もいます。自由意思がある以上、それもやむを得ません。

 そこで背後霊というものが用意されていて、自己実現にとって最善の道へ導こうと努力します。あなた方のもとを訪れる人の中には、そうやって背後に導かれて来ている場合があるのです。その時こそあなた方の活躍の好機です。その人にとっても起爆剤に点火される決定的な出会いとなるかも知れません。

 そうした指導をするに際して私たちが使用するエネルギーやテクニックは極めて微妙で、地上の言語ではとても説明できません。が、基本的には、地上で使用する身体は自分で選んでおり、歩むべき道もあらかじめ承知しております。しかも、順調に運べば見事に開花してサービスに役立てることのできる霊的才能をたずさえていることもあります。

 しかし、人間には自由意志が許されています。いよいよ重大な岐路にさしかかった時、約束したはずの道を嫌がって気楽な人生を選んでしまえば、それはそれでやむを得ないことです。

そういう選択をした者が、死後に後悔して、もう一度やり直すということも現実にあることです。これでお答えになりましょうか」


───まだ残っております。

 「最後の一点はわざと残しておきました。そうやって道を間違えた場合に、その人生を途中で切り上げるということは致しません。背後霊にもそういう権限はありません。力量もありませんし、そうしたいとも思いません。あくまでもサービスと指導へ向けて努力します。自己実現をしようとしている魂に余計な干渉はしません」


───自分の身体を自分で選んだということは、親も自分で選んだということですか。

 「むろんです。賢明なる子は親のことをよく知っております」(賢明なる親はわが子のことをよく知っている、というシェークスピアのセリフを言いかえている)


───もしも自由意志を放棄したらどうなりますか。

 「それも自由意志の行使ではないでしょうか」


───それまで歩んできた道をもうイヤだと思いはじめたらどうなりますか。

 「ですから、自分の地上生活は自分の思うようにすればいいのです。そのかわり、その物的身体で行なうことについて、すべて自分が責任を負わなくてはいけません。自分で選択したものなのですから」


───自由意志を放棄するのも自由意志の行使になるのでしょうか。

 「さきほどそう申し上げたつもりですが、私の言い方がまずかったのでしょう。人間は大霊の無限の創造活動の永遠の過程に参加することができるのです。それもあなたの自由意志にまかされています」


───さきほど背後霊による微妙なエネルギーとテクニックの話をされましたが、いわゆるデーバ(精霊の高級なもの)の勢力が霊媒現象にどのように関与するかについてお話ねがえませんか。

 「生命というのは無限ですから、無限の形態で顕現しております。人間的存在だけではありません。物質に宿ったことのない高等な存在もいます。

 さらに原始霊といって、人間よりは進化の程度は低いのですが、やはり生命力を持った存在がいます。これも無数の分野───植物・動物・鉱物・花・その他───の自然法則の運用に貢献しております。物的現象の背後をご覧になれば、大自然の摂理が見事に重なり合いながら、完ぺきな調和と協調関係が保たれていることがお分かりになります。

 さてご質問の、デーバの勢力が霊媒現象に関与する際にエネルギーを提供しているかということですが、いわゆる物理的心霊現象を起こす時によく働いています。〝物質化〟に協力しているのです」


───〝寛大な社会〟(※)はわれわれの間でも意見の分かれるところですが、どう思われますか。

 ※───道徳的な面について寛大ということで、性の解放に重点が置かれている。

 「私は何事につけ自分で正しいと判断したことには寛大であるべきという考えに賛成です。人間には神の監視装置が植えつけられています。皆さんが道義心とか良心と呼んでおられるものです。それが正しいか間違っているかを告げてくれるようになっています」

───悪は、善と違って、それ自身の存在原理を有しないという説をどう思われますか。と申しますのは、哲学思想や宗教思想の中には、全宇宙および全存在は善と悪の二つの原理の対立から生まれた結果であるというのがあります。悪も善と同じレベルの存在と見るわけですが、いかが思われますか。

 「生命には両極があるということをまず認識して下さい。作用があれば反作用があります。光があれば闇があり、日の当たる場所があれば日陰があります。戦争があれば平和があり、善があれば悪があるといった具合です。硬貨の表と裏といってもよいでしょう。

 物理学でも作用と反作用は同じであり、かつ正反対であるとしています。悪は善の倒錯であり、憎しみは愛の倒錯です。本来は善に換えられる同じエネルギーだということです。

 日向ばかりにいては光の何たるかは分かりません。死があるから生を意識できるのです。悲しみがあるから喜びが味わえるのです。病気になってはじめて健康の有り難さが分かります。

これを両極性の法則といいます。転んだことのない者は立ち上がるということを知りません。あらゆる性質が本源的には同じものであり、従って低級なものも高級なものになりうることを意味します」


───ということは、この世においてもそちらの世界においても、進歩、特に霊的な進化は、その両極性、善と悪の対立を軸として展開するということになるのでしょうか。つまり善悪は死後にも存在するということでしょうか。

 「悪とは、得てして無知のことである場合があります。悪であるということを知らないでいるということです。邪心も、得てして無意識のうちに出していることがあります。邪悪であることを知らずにいるということです。

根っから邪悪な人間は、そう沢山いるものではありません。そういう人たちは未熟な魂であることを認識してあげてください。生命の進化は永遠の過程である以上、発達した者と未熟な者とが常に存在することになります。

 それはこちらの世界でも同じことです。ピンからキリまで、無数の階梯の存在がおります。〝ヤコブのはしご〟(※)は地上界のどん底から天界の最上界まで伸びているのです。

 要は相対性の問題です。地上の人間にとって幸せに思えることが、私たちから見ると惨めに思えることがあります。たとえば赤ちゃんの誕生はあなた方にはおめでたいことでしょうが、私たちにとっては必ずしもそうは思えません。また人間は死を悲しみますが、私たちは霊の解放と受け止めます。見方の違いです」

 ※───旧約聖書に出てくる話で、ヤコブが見た天界のはしご。それを天使が上り下りしていたという。


───霊の世界には時間はないというのは本当でしょうか。

 「私たちの世界の太陽は昇ったり沈んだりしませんから、夜と昼の区別はありません。従ってそれを基準にした時間はありませんが、物事が発生し進行するに要する時間はあります。私も本日この場所へやってまいりました。それには時間が掛かりました」


───言いかえると、何らかの変化が生じる時、つまり出来ごとの発生する順序はある種の時間が必要です。その計り方は物的なものではないわけですね?

 「あなたがおっしゃってるのは時間ではありません。時間の経過の計り方です。それは地上とは大いに異なります」

 予定の時刻まであと五分ですと聞かされてシルバーバーチが締めくくりの祈り(ベネディクション)の言葉を述べる。

 「ではお終いに皆さんとともに来し方を振り返り、私たちを包み込む慈悲深き大霊の無限の力に感謝を捧げましょう。そして、これからもその存在をますます自覚できるように日々の生活を整えるように努力いたしましょう。

 大霊の心をわが心とし、全生命の始源と一体となるように心掛けましょう。それが正しく行なわれる時、大霊の加護と導きのマントに包まれていることを自覚するようになりましょう。

 かくして私たちは大霊の愛の配剤のもとにあることを知り、さらにまた、サービスに勤しむ者に必ず訪れる内的やすらぎを得るにふさわしい資質を発揮しつつあることを自覚なさることでしょう。
 大霊の祝福の多からんことを」

No comments:

Post a Comment