Saturday, December 21, 2024

シアトルの冬 心霊治療家四〇名との質疑応答

Q&A with 40 psychic healers



 英国の心霊治療家連盟の会員は今や六千名を数えるに至っている(平成六年現在)。これから紹介するのは、その連盟の代表四〇名がシルバーバーチと交わした徹底した質疑応答の録音からの抜粋である。

 その規模の大きさもさることながら、心霊治療について出された事細かな質問に対して、例によってシルバーバーチが懇切ていねいに答えていて、しかもそれが地上の人間の生き方についての忠言ともなっていて、シルバーバーチの霊言集を締めくくるのに相応しい内容になっている。

 まず質疑応答に入るに先立ってシルバーバーチが心霊治療の原理について一般的な講話を行なっている。 (一部割愛。これまで繰り返し述べられていることであると同時に、そのあとの質疑応答の中で何度も出てくることだからである)

 「心霊治療の目的はきわめて単純です。魂を目覚めさせること、これに尽きます。身体の症状が消えても魂が霊的なものに目覚めなかったら、その治療は失敗したことになります。反対に病気そのものは治っていなくとも、魂が目覚めて霊的なものに関心を抱くようになれば、その治療は成功したことになります。

 私たちの側からすれば、霊の資質と霊力は、大霊の子が例外なく宿している神性を自覚させるために使用すべきものであり、その結果として地上降誕の目的の認識が芽生えるのです。それこそが霊媒現象と呼ばれているさまざまな現象の背後に託された目的なのです。

 ですから、病人が良くならなかったからといって残念がることはありません。残念に思うべきなのは、その病人があなた方との出会いによって霊的実在に目覚めるまでに至らなかった場合です。それが心霊治療の究極の目的なのですから。

 私たち霊団も、各国に築かれた橋頭堡を強化して、霊力が受け入れる用意のできた人々に順当に届けられるようにと、結束を固めております。

その目的は、今のべた究極の目的、すなわち地上の人間が自分とは本質的には何なのか、何をしにこの地上にいるかについての理解を植えつけ、それを地上で実践するにはどうあらねばならないかを自覚させることです。

 一言でいえば、物質界の人間も霊的宿命を背負った霊的存在だということを悟らせることです。

 心霊治療の能力も、霊体に潜在する無限の資質の一つです。霊眼で見るクレアボイアンス、霊耳で聞くクレアオーディエンスと同じです。心霊治療家になるためにはその霊力の始源とコンタクトしなくてはなりません」


───その霊力がそちら側で創造される過程を教えていただけませんか。つまり病人の特殊な条件に合わせて操作する、その方法です。

 「これは説明の難しい問題です。非物質的なエネルギーを表現する用語が見当たらないのです。霊力とは生命力であり、生命の素材そのものであることを理解して下さい。活力そのものです。無限に存在します。柔軟な性質をしており、どんな形態にも変化します。変換も組み替えも自由自在です。

 それを扱う、知識と経験と理解の豊富な者が、こちらで待機しております。そちらの化学者や科学者に相当します。その者たちが、この霊力を各種の病気に合わせて特性をもたせる技術の開発に、いつも取り組んでおります。

そのチャンネルとなる治療家を通して、病気のタイプに合わせて〝調剤〟する実験も行なっております。以上のような説明しか私にはできません。最終的には治療家のもとを訪れる患者によって一つひとつ異なるプロセスがあると思ってください。

その際、患者のオーラが診断の大きな参考になります。それが精神的状態と霊的状態を物語ってくれるので、それをもとにして、今のべた治癒エネルギーの調剤が行なわれます」


─── それには知的な努力が要求されるわけですね?

「〝知的〟と言う用語は適当でないでしょう。実体感を伴うものだからです。実際に〝調合〟が行なわれるのです。みなさんが化学物質と呼んでいるものに相当するものが用いられます。精神力は必要です。なぜなら、こちらでは、何をこしらえるにも精神が実体を伴った素材となるからです」


─── 遠隔治療のことはこちらへ置いといて、直接治療においては治療家の身体や霊体は、霊力の通路としてどの程度使用されるのでしょうか。

 「遠隔治療においても使用されるのですよ」


─── 私たちの身体や霊体が実際に使用されるとおっしゃるのですか、それとも霊波の調整のために患者との懸け橋として使用されるという意味ですか。

 「実際にあなた方の霊体を使用するのです」


─── そのプロセスをご説明ねがえますか。

 「治療家はテレビの受像機のようなものと想像してください。送られてくる霊波をあなた方の霊体で半物質的な治癒エネルギーに転換します。変圧器のようなものと思ってください」


─── 遠隔治療でも同じ役目をするわけですか。

 「そうです」


─── でも、転換されたものがどうやって患者に届けられるのでしょうか。

 「患者の側からそういう要請が出ているからです。患者の思念がバイブレーションをこしらえ、あなた方治療家のもとに届けられます。すでに懸け橋ができていますから、その波動にのっかって治癒エネルギーが送り届けられます」


─── 自分のために遠隔治療の依頼が出されていることを患者自身が知らない場合はどうなりますか。

 「誰かが知っているはずです。そうでなければ治療を施すことはないわけでしょ?」


─── 仮に私が一方的にその患者の様態を知って治療してあげようと思った場合はどうなりますか。

 「それで立派にリンクができているではありませんか」


─── でも、患者からの要請の思念は出されていません。

 「いえ、リンクはできています。あなたがこしらえています。いいですか、思念というのはこちらでは実体があるのです。私は今あなたという人物を見ておりますが、あなたの肉体は見えておりません。霊媒(バーバネル)の目で見れば見えるのでしょうけど(※)。

私たちにとっては思念こそ実体があるのです。あなたの肉体は薄ぼんやりとしか見えません。あなたから思念が発せられると、それが実体をもって見えます。それがバイブレーションをこしらえ、それが遠隔治療で使用されるのです」


 ※─── シルバーバーチはバーバネルの言語中枢しか使用していない。したがって入神中は目を閉じ、そして座ったままでしゃべり、立ち上がったり歩いたりすることはなかった。


─── 今ローマ法王がファティマの神殿を訪れています。うわさによると、その神殿で多くの病人が癒やされていて、それがマリヤの仲介によると言われているのですが、マリヤが直接治療に当たっているとは思えません。この神殿での癒やしの力は何なのでしょうか。

 「癒やされると信じる、その信心です」


─── でも、それはただの信仰ではないでしょうか。

 「そうです、信仰です。信仰ではいけないのですか。癒やしてもらえるという信心は、実際に癒やされるに至る第一歩です」


─── 私は、患者が治るための条件として信仰は無用であると理解しております。むしろ患者の心が邪念に満ちていると、それが治療の妨げになると考えておりますが、それは正しいでしょうか。

 「信仰心は、それが理性に根ざし、いわゆる盲目的信仰でないかぎりは、むしろ結構であると私は考えます。皆さんは霊的知識を手にしておられるとはいえ、それは全体からみればささやかなものでしかないことを知らないといけません。

物質に包まれて生きているこの地上では、全知識を得ることは絶対に不可能です。こちらへ来てからでもなお不可能です。

 そこで私は、知識の上に信仰を加えなさいと申し上げるのです。理性に裏うちされた信仰、知識を基盤とした信仰は立派です。それにケチをつけるつもりは毛頭ありません。むしろそれが、余裕ある雰囲気をこしらえ、治癒力の流入を容易にすることがあります。

 霊力は明るく楽しい、そして快活で受容性に富んだ性格の人ほど効果を発揮し、陰うつで猜疑心の強い、そして動揺の激しい性格の人には、よい効果は出ません」


─── オーラを霊視できない治療家の場合、治癒力がうまく働いていることを知るにはどうすればよいでしょうか。

 「オーラが見える見えないは治療そのものとは何の関係もありません。病気の原因の診断ができるか否かも関係ありません。治療家は施療すればそれでよいのです。そういった余計なことを気遣う必要はありません。霊医が扱いやすい状態になることが大事です。 

 要するに霊の道具として少しでも完ぺきに近づくことを心掛けることです。ご自分の人間性から人間的煩悩をすべてご法度にするくらいでないといけません。そう心掛けただけ、その治療家を通して、より多くの霊力が流入します。治療力の質や量を決定づけるのは、その治療家の生活そのものです」


─── 治療家の中でも優秀な人とそうでない人とがいるのはなぜですか。

 「演奏家にせよ、作家にせよ、上手な人とあまり上手でない人がいるのと同じです。他の治療家にくらべて能力がより多く顕現しているということです」


─── 治療家自身が病気になった場合、他の治療家に依頼しなければならないでしょうか、それとも自分で治せるものでしょうか。

 「他の治療家に依頼しなくても、自分で治癒エネルギーを引き寄せて治すことができるようでないといけません。大霊に祈るのに教会へ行く必要はないように、治療家が他の治療家のところへ行く必要はありません。直接エネルギーを引き寄せることができればの話ですが」


─── 医師の述べるところによりますと、最近の病気の主なものはプレッシャーと仕事上の悩みだそうです。これにはあなたのおっしゃる(三位一体の)不調和がどの程度まで介入しておりますでしょうか。

 「あなたが今おっしゃったことは、私が言っていることを別の言葉で表現したまでです。仕事上の悩みをおっしゃいますが、つまりは不調和のことです。霊と精神と肉体の三者が調和していれば、仕事にせよ何にせよ、悩みは生じません。悩むということは調和を欠いているということの証拠です。

 霊的知識を手にした者が悩むようではいけません。悩みや心配はマイナスのエネルギーです。霊的に啓発された魂は取り越し苦労とは無縁です。

私はそれを不調和と呼び、あなたは仕事上の悩みと呼んでいるまでのことで、自分が永遠の存在であることを知り、従って地上のいかなるものにも傷つけられることはないとの信念に燃える者に、悩みの入る余地はありません」


─── 治らない人がいるのはなぜでしょうか。

 「霊的にみて治るべき権利を得るにいたっていないということです」


─── 遠隔治療で一度リンクができたら、改めてこしらえる操作は不要でしょうか。

 「一度できたら不要です。霊界とのつながりはすべて磁性的(※)なものです。ですから、一度できたらリンクは切れることはありません」

  ※─── 磁気治療でいう磁気とは別。強烈に引き合う霊的性質を言っている。


─── すると、どこにいようと、たとえば教会にいようが駅にいようが、関係ないわけですね?

 「霊の世界には地理的な位置はありません。どこへ行こうと、皆さんの身のまわりに常に存在しております。教会の中にいるから、あるいは飛行機で高く上がったからといって、それだけ大霊に近づくわけではありません


─── 地上界で物的存在が顕現するに先立って必ず思念が存在すると言われます。言いかえると、人間はまず思念の母体をこしらえていることになります。それが事実だとすると、治療家が患者に接するに先立って心の中で完全に治った状態を描き、完全な健康体のイメージをこしらえることは、治癒を促進することになるのでしょうか。

 「大いに促進します。思念には実体があるからです。完全な健康体を強く念ずるほど、それを達成する可能性に近づくことになります。何事につけ、理想に向かって最善を尽くさないといけません。

常に最高のものを念ずることです。希望を失ってはなりません。いつも明るく楽天的な雰囲気をかもしなさい。そうした状態の中で霊力は最高の威力を発揮します」


─── さきほど、治らない人は霊的に治る権利を得るにいたっていないからだとおっしゃいましたが、私には少し割り切りすぎているように思えます。その論理でいくと善人は必ず治り、悪人は絶対に治らないということになりませんか。

 「事はそんな単純なものではないのです。霊的な目をもってこの問題をご覧になれば、そういう安直な考えは出ないはずです。たとえばあなた方人間にとって苦難はご免こうむりたいところでしょうけど、私たちから見ると、こんなに有り難いものはないのです。

大失敗をしでかすと皆さんは万事休すと思われるでしょうが、私たちから見ると、新しい人生の出発点とみて喜ぶことがあるのです。

 善とか悪とかを物的尺度で計るような調子で簡単に口にしてはいけません。善悪の判断基準は私たちとあなた方とでは必ずしも一致しません。

私は霊的にみて治るべき権利を得ていなければならないと申し上げているのであって、善人とか悪人とは言っておりません。自我がその霊性に目覚めた時にはじめて治る権利を得たことになるのです」


─── 純粋に物理的な理由で治らないということもあるのではないでしょうか。たとえば神経が完全に破壊されて視力を失った場合、新しく神経をこしらえるということは法則上不可能だと思うのです。

 「私たちは今、奇跡の話をしているのではありません」


─── おっしゃる通りですが、治らないケースについての一般論を語っておられると思ったものですから・・・・・・

 「私が申し上げているのは、治るはずの病気がどうしても治らず何の変化も見られない時は、その患者はまだ治るための霊的権利を得るにいたっていないことがあるということです」


─── 両脚が奇形の赤ちゃんがいます。片方の脚は変化が見られるのですが、もう一方は何の反応もありません。なぜでしょうか。

 「両脚が奇形というのを一つの病気としてではなく、右脚と左脚の二つの病気とみるべきで、同じ治療エネルギーでは両方は治せないということです。何もかも同じエネルギーで治っているのではありません。一つ一つ条件が異なり、一つ一つ特性があるのです。

地上の人間に分かりやすくということになると、そういう表現しかできません。ほかにもいろいろと事情があるのです。病気の原因にはいくつもの次元があり、それが入り組んでいて複雑なのです。

 治療というのは見かけはあっさりと治っているようで、実際はそう簡単なものではないのです。身体に表れた症状を取り除けばそれで済むというのではありません。

魂に関わる要素も考慮に入れなくてはいけません。こうすれば魂にどういう反応が出るか、病気の背後にひそむ意図は何なのか、なぜその患者が心霊治療家のところへ来たのか、その患者の魂が霊性に目覚める段階にまで進化しているかどうか、等々。

 こうしたことはあなた方には測りようがないでしょう? が、心霊治療はそういう要素まで考慮しなくてはならないのです。なぜかと言えば、少なくとも治療に当たっている間は宇宙の生命力そのものを扱っているからです。

ということは、あなた方も無限の創造活動に参加していることになるのです。だからこそ責任の重大性を声高に説くのです」


─── てんかんの原因は何でしょうか。

 「脳に障害があって、それが脳への印象を妨げ、精神からの正しい連絡を受けられなくしているということです」


─── でも、治るのでしょうね?

 「もちろんです。病気はすべて治ります。〝不治の病〟というものは存在しません。治してもらえない人が存在するだけです」


─── 遠隔治療を依頼されたことが三度ないし四度あるのですが、私の感じでは成功しなかったと思います。いずれの患者も死亡したのです。

 「もしかしたらそれは、あなたにとって最上の成功だったかも知れませんよ。魂が首尾よく肉体から離れるのを助けているのです。それも心霊治療の役目の一つなのです。治療するということは寿命を長びかせることではありません。

霊を目覚ませることです。それがいちばん大切なのです。優先させるべきものを優先させることです。霊に関わることこそ第一順位です。霊が正常であれば身体も正常です」


─── 治療家によっては二、三分で治す人もいれば、二時間も掛ける人、また何週間も何か月も、時には何年も掛けながら治らない人もいます。なぜでしょうか。

 「〝その実によって彼らを見分けよ〟とバイブルにあります。大切なのは結果です。治療家は霊団との最高の協調関係を作り出すように日常生活を規制すべきです。結果はおのずと出ます。まず家の中を整えて下さい。あとのことは霊団が面倒を見ます。

 必要な時は援助を求めて祈りなさい。決して放っておくようなことはいたしません。諦めて手を引くようなことも絶対にいたしません。いつも自分を役立てる用意をしてください。どんな患者でも拒みません。どんな患者でも歓迎します。

霊の力は万人が受ける権利をもっているのです。霊界側が欲しいのは、喜んで治癒力の流入の通路となってくれる人です」


─── ある人を治療したところ、良くはなったのですが、その後他界してしまいました。どう理解すべきでしょうか。

 「霊の世界へ戻っていくのがなぜ悲劇なのでしょうか。赤ちゃんが地上へ誕生した時、私たちの世界では泣いている者がいるのです。反対に、死んでこちらの世界へ戻ってくるのを大喜びして出迎えている者がいるのです。地上を去ることをなぜそんなにいけないことのように考えるのでしょうか」


─── サイキックとスピリチュアルを区別しておられるようですが、なぜでしょうか。

 「同じく治療といっても、物質次元の磁気的なものがあり、幽体を使用した心霊的なものがあるのです。さらにその上に、霊界の高い界層からのエネルギーによる治療があります。これをスピリチュアルと呼びます」


─── サイキックと呼ぶものの範囲は?

 「地球に近いレベルのものと思って下さい」


─── それは身体上の効果だけで、魂の琴線にふれるレベルのものでないことを意味するのでしょうか。

 「いえ、魂への影響もまったく無いわけではありません。が、きわめて限られており、受容性に乏しいと言えます。霊的意識としては低いレベルでの働きしかありません」


─── その背後にエネルギーの作用はないのでしょうか。

 「あることはありますが、質的には落ちます。エネルギーには無限の段階があります。その頂点には大霊がおわします。そして物質はその最下層に位置します。治療はその階梯のどの段階においても行えます。どの段階になるかは治療家の霊性の高さによって決まります」


─── 精神的な病に冒されている人には同情を禁じ得ないのですが、正直言って私たちの無力さを痛感させられております。

 「精神病も心霊治療で治せます。霊団にすべてをあずけて祈るのです。それだけでいいのです。そうすることで治癒エネルギーがあなた方を通して流れます。直接治療ができない場合は遠隔治療でエネルギーを送ってあげればよろしい。

 心霊治療の態勢は今や立派に確立されております。もう排斥されることはありません。あなた方一人ひとりに果たすべき役割があります。重大な役目です。皆さんは霊力のチャンネルとして大霊の無限の進化の計画の中に組み込まれていることを忘れてはなりません。素晴らしい仕事です。が、同時に、責任ある仕事でもあります。

 本日はこの私をご招待くださり、語り合いの時をもたせていただいたことを光栄に存じております。少しでもお役に立っていれば幸いです。少なくとも互いに勉強になったことは確かでしょう。

 お終いに大霊の祝福を祈念いたしましょう。初めも終わりもない大霊の援助を求めましょう。そしてその御心をわが心とすべく、日常の生活を規律正しいものにいたしましょう。

 大霊の道具として常に最善を尽くしましょう。その努力の中で、私たちの働きの場が常に大霊の愛のマントに包まれていること、そして私たち一人ひとりが温かき大霊の御胸に抱かれていることを実感いたしましょう。

 皆さまに大霊の祝福のあらんことを」   



   あとがきに代えて


                                                近藤千雄
 近代の歴史を振り返ってみると、二十世紀は近代的戦争の世紀だったと言っても過言ではないであろう。第一次および第二次世界大戦をはじめ、日清・日露・ベトナム戦争、最近では超近代兵器による中東の湾岸戦争が記憶に新しい。

 シルバーバーチの霊媒モーリス・バーバネルは一九〇二年の生まれで、第一次・第二次の世界大戦の中を生き抜いて、一九八一年に七十九歳で他界している。まさに戦乱の二十世紀を生き抜いてきたわけであるが、その大半の六十年間をシルバーバーチの霊媒として仕えたのみならず、〝ツーワールズ〟(※)と〝サイキック・ニューズ〟の二紙の主筆として健筆を揮った。

バーバネルがよく自慢したことの一つは、第二次世界大戦の最中も一週としてその二紙を休刊しなかったことであるが、それ以上に私が頭が下がる思いがするのは、シルバーバーチの交霊会(正式の名をハンネン・スワッファー・ホームサークルといった) も週一回のペースを崩さなかったことである。

 ※───当初は週刊紙として発刊し、のちに月刊誌になり、さらに数年前にヘッドクォーター出版社に買い取られた。が、最近その編集長にバーバネルの子分のトニー・オーツセンがおさまったのも奇縁である。

 これは、バーバネルの執念に頭が下がるという意味ばかりではない。支配霊のシルバーバーチが戦乱による波動の乱れで通信不能の寸前まで至りながら、ついに諦めなかったこともその背景にある。われわれ人間には想像できないことであるが、霊的通信網が一本また一本と切断され、霊団の者が 「もうダメです、引き上げましょう」 と進言しても、 「こういう時こそわれわれの援助が必要なのだから」 と、シルバーバーチは叱咤激励したと言う。



   大きかったスワッファーの存在

 さて、そのシルバーバーチとバーバネルのコンビによる仕事が一九二〇年のある日突如として始まったことは、大方のシルバーバーチファンはすでにご存知と思う。

最初のころはバーバネル自身もそれがどういうメカニズムになっていて何の目的で行なわれるかも分からず、嫌々ながら入神させられるまま行ない、聞く者も、奥さんのシルビアをはじめ三、四人の知人だけだった。もちろん記録など残してはいない。そこへ決定的な意味をもつハンネン・スワッファーの登場となる。

 スワッファーは当時すでに英国ジャーナリズム界に君臨する大物で、しかもバリアンティンと言う直接談話霊媒による交霊会(〝デニス・ブラッドレー・ホームサークル〟といった)に出席した時に大先輩のノースクリッフ卿の出現によって決定的な死後存続の証拠を手にし、 『ノースクリッフの帰還』 という著書でそれを公表して大センセーションを巻き起こしていた(一九二四年)。

 そのスワッファーがうわさを聞いてバーバネルの交霊会に出席し、シルバーバーチの霊言の質の高さに感嘆した。そして、それを是非とも〝サイキック・ニューズ〟か〝ツ―ワールズ〟に掲載するよう進言した。が、バーバネルは自分がその二紙の主筆であり社長でもあることを理由に、それを断った。

 が、出席するたびにシルバーバーチという霊の霊格の高さを感じ取る一方のスワッファーは、バーバネルにしつこく公表を迫った。二人は親しい友人でもあったので時には口論となることもあったらしいが、ついに (推定で一九三五年頃から) 霊媒がバーバネルであることを伏せるという条件のもとに連載がはじまり、それを、まとめた最初の霊言集が『シルバーバーチの教え』 のタイトルで一九三八年に出版された。

 が、その時点でも、序文を書いたスワッファーも〝霊媒がひやかし半分のつもりで交霊会に初めて出席した時は十八歳の無神論者だった〟と述べるにとどめ、バーバネルの名は公表されなかった。が、それがいつまでも隠し通せるわけはない。

 「いったい霊媒は誰なのか」 という問い合わせの多さに圧倒されて、ついに一九五九年になって〝シルバーバーチの霊媒は誰か───実はこの私である〟という見出しでバーバネル自身が公表したのだった。


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