Thursday, August 1, 2024

シアトルの夏 本当のあなたは、その身体を通して顕現しているものより、はるかに大きいのです。

The real you is much greater than what is manifested through that body.



 ハンネン・スワッハー・ホームサークルの招きでシルバーバーチの交霊界に出席した各界の著名人は、これまででも相当な数にのぼる。政治家・芸術家・舞台俳優・動物保護団体のメンバー等々、実に多彩である。本章はそうしたゲストとの問答を特集してみた。


 まずロンドンのフリート街に立ち並ぶ新聞社の一つの主筆で、スピリチュアリズムにも興味を持つジャーナリストが、ある日の交霊会で、思念とインスピレーションの違いについて質問した。それについてシルバーバーチはこう答えた。

 「物質の世界に住んでおられるあなた方は、きわめて創造性の乏しい存在です。よくよくの例外を除いて、まず何一つ創造していないと言ってよろしい。が、基本的には、受信局であると同時に、発進局でもある存在です。

 まず外部から思念が送られてきます。それがいったんあなたという受信局で受け止められ、それに何かが付加されて発信され、それを別の人が受信するという具合です。あなたに届いた時の思念と、あなたから発信される時の思念とは、すでに同じではありません。

あなたの個性によって波動が高められることもあり低められることもあり、美しくなっていることもあり、醜くなっていることもあり、新たに生命力を付加されていることもあり衰弱していることもあります。

 しかし、それとは全く別に、霊的な波動の調整によって、あなたと同じ波動をもつ霊からのインスピレーションを受けることもできます。人間が死んで私たちの世界へ来ます。

その時、精神と魂に宿されているものは何一つ失われることはありません。それは霊的にして永遠であり、霊的にして永遠なるものは絶対に消滅することはないからです。その魂と精神に宿された資質はその後も成長し、拡大し、発達し、成熟してまいります。

 そうした霊性を宿しているからこそ、こちらへ来てしばらくすると、地上の人間のために何か役立つことをしたいと思うようになるわけです。そして、やがて自分と同質の人間を見出します。あるいは見出そうと努力しはじめます。

 地上で詩人だった人は詩人を探すでしょう。音楽家だった人は音楽家を探すでしょう。そして、死後に身につけたものを全てを惜しげもなく授けようとします。問題は波長の調整です。インスピレーションが一瞬の間の体験でしかないのは、私たちの側が悪いのではありません。

二つの世界の関係を支配している法則が完全に理解されれば───言いかえれば、地上の人間が霊界の自由な交信の障害となる偏見や迷信を取り除いてくれれば、無限の叡智が人間を通してふんだんに流れ込むことでしょう。

 要は、私たちの側から発信するものを受信する道具がなければならないこと、そしてその道具がどこまで高い波動の通信を受け取れるかという、性能の問題です。すべてのインスピレーション、すべての叡智、すべての真理、すべての知識は、人間側の受信能力に掛っております」


───それだけお聞きしてもまだ、なぜインスピレーションというものが一瞬のひらめきで伝わるのかが理解できません。

 「その瞬間、あなたの波長が整って、通信網に反応するからです」
 と答えた後、そういう思念が霊界からのものか地上の人間からのものかの区別の仕方について質問されて、こう述べた。

 「両者をはっきり選別することはとても困難です。思念には、地上の人間の発したものが地上の他の人間によって受け取られることもありますが、霊界からのものもあります。

思念は常に循環しております。そのうちのあるものが同質の性格の人に引き寄せられます。これはひっきりなしに行われていることです。

 しかしインスピレーションは、霊界の者が、ある共通の性質、関心あるいは衝動を覚えて、自分がすでに成就したものを地上の人間に伝えようとする、はっきりとした目的意識をもった行為です。地上の音楽や詩、小説、絵画の多くは、実質的には霊界で創作されたものです」


───天才をどう説明されますか。

 「まず理解していただきたいのは、大自然または法則───どう呼ばれても構いません───は、決して真っすぐの一本の線のように向上するようには出来ていないことです。

さまざまな変異・循環・螺旋を描きながら進化しています。全体からみれば、アメーバ―から霊にいたる段階的進化がはっきりしておりますが、その中にあって、時たま一足跳びに進化するものと後退するものとが出てきます。先駆けと後戻りが常に存在します。天才はその先駆けに当たります。

これから何十世紀あるいは何百世紀かのちには、地上の全人類が、程度の差こそあれ、今の天才と同じ段階まで発達します。天才は言わば人類進化の前衛です」


───現在地上で行われている進化論と大分違うようですが・・・・・・

 「私の見解はどうしても地上の説とは違ってきます。皆さん方はどうしても物的観点から問題を考察せざるを得ません。物的世界に生活し、食糧だの衣服だの住居だのといった俗世の問題を抱えておられるからです。

そうした日々の生活の本質そのものが、その身を置いている物的世界へ関心を向けさせるようになっているのです。

日常の問題を永遠の視点から考えろと言われても、それは容易にできることではありません。が、私たちから見れば、あなた方も同じ霊的存在なのです。いつ果てるともない進化の道を歩む巡礼者である点では同じです。

 いま生活しておられるこの地上が永遠の住処でないことは明白です。これから先の永遠の道程を思えば、地上生活などホンの一瞬の出来事でしかありません。私たちの視界は焦点が広いのです。皆さんからお受けする質問も、霊的真理に照らしてお答えしております。

その真理が人間生活においてどんな価値を持つか、どうやって他の同胞へ役たてるべきか、どんな役に立つかといった点を考慮しながらです。

 これまでの私は、私の説く真理が単純素朴なものであること、唯一の宗教は人の為に自分を役たてることであることを、皆さんもいい加減うんざりなさるのではないかと思うほど、繰り返し述べてきました。私たちの真理の捉え方が地上の常識と違う以上、そうせざるを得ないのです。

 大半の人間は、地上だけが人間が住む世界だと考えております。現在の生活が人間生活のすべてであると思い込み、そこで物的なものを、いずれは死んで残して行かねばならないものなのに、せっせと蓄積しようとします。

戦争・流血・悲劇・病気の数々も、元はといえば、人間がこの時点において立派に霊的存在であること、つまり人間は肉体のみの存在ではないという生命の神秘を知らない人が多すぎるからです。人間は肉体を通して自我を表現している霊魂なのです。

それが地上という物質の世界での生活を通じて魂を成長させ発達させて、死後に始まる本来の霊の世界における生活に備えているのです」


 このシルバーバーチの言葉がきっかけとなって、サークルのメンバーの間で〝進化〟についての議論がひとしきり花が咲いた。それを聞いていたシルバーバーチは、やおら次のような見解を述べた。

 「人間はすべて、宇宙の大霊の一部、言いかえれば無限の創造活動の一翼を担っているということです。一人ひとりがその一分子として進化の法則の働きを決定づけるということです。

霊としての真価を発揮していく階梯の一部を構成しているのです。霊は、自我意識が発現しはじめた瞬間から存在し、その時点から霊的進化が始まったのです。身体的に見れば人類は、事実上、進化の頂点に達しました。が、霊的にはまだまだ先は延々と続きます」


 別の日の交霊会に、世界的に名の知れた小説家が出席した。シルバーバーチが出る前に、地上で世界的に有名だった人物で今ではシルバーバーチ霊団のメンバーとして活躍している複数の霊がバーバネルの口を借りて挨拶し、それに応えてサークルのメンバーが挨拶を介している様子を、その小説家は黙って見つめていた。

やがてシルバーバーチが出現して、その小説家に向かって

 「私には、あなたが今日はじめての方とは思えません。実質的に霊力に無縁の方ではないからです」
 と述べてから、更にこう続けた。

 「あなたの場合は意識的に霊力を使っておられるのではありません。あなたご自身の内部で表現を求める叫び、使ってほしがっている単語、原語で表現してほしがっているアイディア、湧き出てきてあなたを包み込もうとする美、時として困惑させられる不思議な世界、そうしたものが存在することを知っている人間が持つ、内的な天賦の才能です。違いますか?」


───全くおっしゃる通りです。

 「しかし同時に、これは多くの方に申し上げていることですが、ふと思いに耽り、人生の背後でうごめいているものに思いを馳せ、いかにして、なぜ、いずこへ、といった避け難い人生の問題に対する回答をみずから問うた時、宿命的とも言えるいきさつで道が開けてきました。お若い頃からそうであったはずですが、いかがですか?」


───その通りです。

 「私たちは方法は何であれ、自分の住む世の中を豊かにし、美と喜びで満たし、いかなる形にせよ慰めをもたらす人を、誇りをもって歓迎いたします。しかし、あなたは、これまでになさったことより、まだまだ立派なことがお出来になります。お分かりでしょうか? 」


───ぜひ知りたいものですね

 「でも、何となくお感じになっておられるのではありませんか?」


───(力強い口調で)感じております。

 ここでシルバーバーチがサークルのメンバーの一人に向かって

 「この方は霊能をお持ちです」
と言うと、そのメンバーも 「そのようですね。霊眼をお持ちです」 と相づちを打った。


 するとシルバーバーチは
 「しかしこの方の霊能は、まだ鍛錬がなされておりません。純粋に生まれつきのものです」

 と述べてから、今度はその小説家の方へ顔を向けて

 「あなたは陰から指導している複数の霊の存在にお気づきですか。あなたが感じておられるより、はるかに多くの援助をしてくれているのですよ」

 といった、すると別のメンバーが、その小説家がこれからするべきことは何かを訊ねた。

 「それは、これまでなさってきたことより、はるかに大きな仕事です。そのうち自然に発展していきます。すでにその雰囲気がこの方の存在に充満しておりますから、多分ご自分でも気づいておられるはずです。じっとしていられないことがあるはずです。私が言わんとしていることがお分かりでしょう?」


───非常によく分かります。

 「次に申し上げることをよく理解しておいてください。他のすべての人間と同じく、あなたも、その小さな身体に大きな魂を宿しておられるということです。ぎこちない大ざっぱな言い方をしましたが、あなたという存在は、肉体という、魂の媒体としては痛ましいほど不適当な身体を通して表現せざるをえないということです。

 あなたの真の自我、真の実在、不滅の存在であるところの魂に宿る全能力───芸術的素質・霊的能力・知的能力のすべてを顕現させるにつれて、その分だけ、身体による束縛から逃れることになります。魂そのものは本来は物質を超越した存在ですから、

たとえ一時的には物質の中に閉じ込められても、そのうち、鍛錬や養成をしなくても、無意識のうちに物質を征服し優位を得ようと、あらゆる手段を試みるようになります。

 それが今まさに、あなたの身の上に起きつつあるわけです。インスピレーション・精神的活動・目に見えない側面の全てが一気に束縛を押し破り、あなたの存在に流入し、あなたはそれに抗しきれなくなっておられる。私の言っていることがお分かりでしょうね?」


───非常によく分かります。

 しかし同時に、あなたは私たちの世界の存在によって援助されております。すでに肉体の束縛から解放された人たちです。その人たちは情愛によってあなたと結ばれております愛こそ宇宙最大の絆なのです。愛は、自然の成り行きで愛する者同士を結び付け、いかなる力も、いかなるエネルギーも、その愛を裂くことはできません。

愛がもたらすことのできる豊かさと温もりのすべてをたずさえてあなたを愛している人たちは、肉体に宿るあなたには理解できない範囲で、あなたのためにいろいろと援助してくれております。

 しかし、それとは別に、そうした情愛・血縁・家族で結ばれた人々よりも霊性においてはるかに高級な霊が、共通の関心と、共通の目的意識をもって、あなたのために働いてくれております。

今ここで簡単には説明できないほど援助してきており、これからのち、条件さえ整えば、存在をあなたに知らしめることもあり得るでしょう」


───ぜひ知らせてほしいものです。それに、そうした背後霊の皆さんに、私からの感謝の気持ちを伝えていただけますでしょうか。

 「もう聞こえていますよ。今日私からぜひあなたにお授けしたいのは、あなたのまわりに存在する霊力の身近さについての認識です。私は皆さんから見て、古い霊です。

私にも為し得る仕事があることを知り、わずかですが、私が摂取した知識が地上の人々にお役に立てばと思って、こうして戻ってまいりました。

 すでに大勢の友、その知識を広めるために私の手足となってくれる同僚をたくさん見いだしております。本日も出席しているバリッシュ (心霊治療家) のように特殊な使命を帯び、犠牲と奉仕の記念碑を打ち立てている者もいます。

 しかし、すべての同志が、自分が使用されていることを意識しているわけではありません。でも、そんな人たちでも、時たま、ほんの一瞬に過ぎませんが、何とも言えない内的な高揚を覚え、何か崇高な目的の成就のために自分も一翼を担っていることを自覚することがあるはずです」

 
 別の日の交霊会に米国人ジャーナリストが招かれた。そして最初に出した質問が「霊界というのはどんなところでしょうか」という、極めて基本的なものだった。

その時レギラーメンバーの一人が「この方は心霊研究家 ※」とお呼びしてもよいほどの方ですよ。と言ったことが、次のようなユーモラスな答えを引き出すことになった。


 ※───ここでは心霊学にくわしい人といった程度の意味で言ったのであろう。その心霊学は心霊現象の科学的研究を目的としているだけで、霊魂説も幾つかの学説の中の一つとして扱われているだけである。その点を念頭に置いて、シルバーバーチがその学説を並べ立てて皮肉っぽく答えているところがユーモラスである───訳者。



 「この私は、地上の人たちから〝死んだ〟と思われている一人です。存在しないことになっているのです。私は、本日ここにお集まりの方々による集団的幻影にすぎません。私は、霊媒の潜在意識の産物なのだそうです。霊媒の第二人格であり、二重人格であり、分離人格ということになっております。

 こうした用語のどれをお使いになっても結構ですが、私もあなたと同じ、一個の人間的存在です。ただ私は、今あなた方が使っておられる」肉体を随分前に棄ててしまいました。

あなたとの違いは、ただそれだけです。あなたは物的身体を通して自我を表現しているスピリットであり、私は霊的身体を通して表現しているスピリットであるということです。

 私はほぼ三千年前に霊の世界へまいりました。つまり三千年前に〝死んだ〟のです。三千年というと、あなた方には大変な年数に思えるかもしれませんが、永遠の時の流れを考えると、わずかなものです。その間に私も、少しばかり勉強しました。

霊の世界へ来て、神からの授かりものである資質を発揮していくと、地上と同じ進化の法則に従って進歩していきます。霊的な界層を一段また一段と向上してまいります。

 〝界層〟という言い方をしましたが、一つ一つが仕切られているわけではありません。霊的な程度の差であり、それぞれの段階には、その環境条件にふさわしい者が存在するということです。

霊的に進化向上していくと、それまでの界層を後にして、次の、一段と高い界層へ融合していきます。それは階段が限りなく続く長い長い、一本のはしごのようなものです。

 そう考えていけば、何百年、あるいは何千年か後には物質界からはるか遠く離れていき、二度と接触する気持ちが起きなくなる段階に至ることは、あなた方にも理解できるでしょう。所詮、地上というところは、大して魅力のある世界ではないのです。

地上の住民から発せられる思念が充満している大気には、およそ崇高なものは見られません。腐敗と堕落の雰囲気が大半を占めております。人間の生活全体を暗い影がおおい、霊の光が届くのは、ほんの少数の人に限られております。

 一度あなたも、私と同じように、経済問題の生じない世界、お金が何の価値ももたない世界、物的財産が何の役にも立たない世界、各自があるがままの姿がさらけ出される世界、唯一の富が霊的な豊かさである世界、唯一の所有物が個性の強さである世界、生存競争も略奪も既得権力も無く、弱者が窮地に追いやられることもなく、

内在する霊的能力が、それまでは居眠りをしていても、存分に発揮されるようになる世界に住まわれたら、地上という世界がいかにむさ苦しく、いかに魅力の乏しい世界であるかが分かっていただけると思います。

 その地上世界を何とかしなければならない───私のようにまだ地上圏に戻ることのできるスピリットが援助し、これまでに身につけた霊的法則について幾らかでも教えてあげる必要があることを私は他の幾人かの仲間と共に聞かされたのです。

人生に迷い、生きることに疲れ果てている人類に進むべき方向を示唆し、魂を鼓舞し、悪戦苦闘している難題の解決策を見出させてあげるには、それしかないことを聞かされたのです。

 同時に私たちは、そのために必要とする力、人類の魂を鼓舞するための霊力を授けてくださることも聞かされました。しかし又、それが大変な難事業であること、この仕事を快く思わぬ連中、それも宗教組織内の、そのまた高い地位にある者による反抗に遭遇するであろうことも言い聞かされました。

悪魔の密使とみなされ、人類を邪悪の道へ誘い、迷い込ませんとする悪霊であると決めつけられるであろうとの警告も受けました。

 要するに、私たちの仕事は容易ならざる大事業であること、そして、ついでに付け加えさせていただけば、その成就のためにはそれまでの永い年月の中で体験してきた霊界生活での喜びも美しさも、すべてお預けにされてしまうということでした。

が、そう言い聞かされてこれを断った者は、私たちのうちの誰一人としていませんでした。かくして私たちは、他の仲間と共に地上へ戻ってまいりました。再生するのではありません。地上界の圏内で仕事をするためです。

 地上圏へ来てからのまず第一の仕事は、霊媒となるべき人物を探すことでした。これは、どの霊団にとっても一ばん骨の折れる仕事です。次に、あなたがたの言語(英語)を勉強し、生活習慣も知らねばなりませんでした。あなた方西洋人の文明も理解する必要がありました。

 続いてこの霊媒の使用法を練習しなければなりませんでした。この霊媒の口を借りて、幾つかの訓え───誰にでも分かる簡単なもので、したがってみんなが理解すれば地上が、一変するはずの真理───を説くためです。

 同時に私は、そうやって地上圏で働きながら、私を派遣してくれた高級霊たちと連絡を保ち、より立派な叡智、より立派な知識、より立派な情報を私が代弁してあげなければならなかったのです。初めのころは大いに苦労しました。今でも決して楽ではありませんが・・・・・・

 そのうち私の働きかけに同調してくれるものが次第に増えてまいりました。すべての人が同調してくれたわけではありません。居眠りしたままの方を好む者も大勢いました。

自分で築いた小さな牢獄にいる方を好む者もいました。その方が安全と考えたわけです。自由へ解放された後のことを恐れたのです。

 が、そうした中にも、そこここに、分かってくれる人を見出しました。私からのご利益は何もありません。ただ、真理と理性と常識と素朴さ、それに、近づいてくれる人の為をのみ考える、かなり年季の入った先輩霊としての真心をお持ちしただけです。

 その後は、私たちの仕事は順調に運び、多くの人々の魂に感動を与えてまいりました。無知の暗闇から抜け出た人が大勢います。自由の旗印のもとに、喜んで馳せ参じた人が大勢います。〝死〟の目的と〝生〟の意味を理解することによって、二度と涙を流さなくなった人が大勢います」


───魂は母体に宿った時から存在が始まるのでしょうか。それともそれ以前にも存在(前世)があるのでしょうか。

 「これは又、厄介な問題に触れる質問をしてくださいましたね。私は自分でこう思うということしか述べるわけにはまいりません。私はいつも人間の理性と思慮分別に訴えております。

もしも私の述べることが皆さんの理性を反発させ、知性を侮辱し、そんなことを認めるわけにはいかないとおっしゃるのであれば、どうぞ聞き捨てて下さい。拒絶していただいて結構です。

拒絶されたからといって私は少しも気を悪くすることはありません。腹も立てません。皆さんへの愛の気持ちに変わりはありません。

 ここにおいでのスワッファーも、相変わらず考えを改めようとしない者の一人です。他の者はみんな私の口車に乗って(?)前世の存在を信じるようになってくれているのですが・・・・・・

 私の知るかぎりで言えば、前世はあります。つまり生まれ変わりはあるということで、その多くは、はっきりとした目的を持つ自発的なものです」

 これを聞いたスハッファーが

 「私は再生の事実を否定したことはありませんよ。私はただ魂の成長にとって再生が必須であるという意見に反対しているだけです」

と不服そうに言うとシルバーバーチが

 「これはうれしいことを聞きました。あなたも私の味方というわけですな。全面的ではなくても・・・・・・」

と皮肉っぽく言う。するとスワッファーが言い返す。

 「あなたは、私も今生に再生してきているとおっしゃったことがあるじゃないですか。私はただ、再生に法則はないと言っているだけです」

これを聞いたシルバーバーチが穏やかにそれを否定して言う。

 「何かが発生する時、それは必ず法則に従っております。自発的な再生であっても法則があるから可能なのです。ここでいう法則とは、地上への再生を支配する法則のことです。この全大宇宙に存在するものは、いかに小さなものでも、いかに大きなものでも、すべて法則によって支配されているというのが私の持論です」


ここで米人ジャーナリストが関連質問をした。

───人間にとって時間が理解しにくいことが再生問題を理解しにくくしているというのは事実でしょうか。


 「例によって、私なりの観点からご説明しましよう。実は、あなたはあなたご自身をご存じないのです。あなたは物質界へ一度も顔を出したことのない側面があるのですが、あなたはそれにお気づきになりません。

物的身体を通して知覚した、ごくごく小さな一部分しか意識しておられません。が、本当のあなたは、その身体を通して顕現しているものより、はるかに大きいのです。

 ご存じの通り、あなたはその身体そのものではありません。あなたは身体を具えた霊であって、霊を具えた身体ではありません。

その証拠に、あなたの意識はその身体を離れて存在することが出来ます。たとえば睡眠中がそうです。ただし、その間の記憶は物的脳髄の限界のために意識されません。

 結局あなた方が意識できる自我は、物質界に顕現している部分だけということになります。他の、より大きい部分は、それなりの開発の過程をへて意識できるようにならないかぎり、ごく稀に、特殊な体験の中で瞬間的に顔をのぞかせるだけです。一般的に言えば、大部分の人間は死のベールをくぐり抜けて初めて真の自我を知ることになります。

 以上があなたのご質問に対する私の回答です。今あなたが物的脳髄を通して表現しておられる意識は、それなりの開発法を講ずるか、それともその身体を棄て去るかのいずれかでないかぎり、より真実に近いあなたを認識することはできないということです」


───この地上には、あなたの世界に存在しない邪悪なものが溢れているとおっしゃいますが、なぜそういう邪と悪とが存在するのでしょうか。

 「権力の座にある者たちのわがままが原因となって生じる悪と邪───私は〝無明〟という言葉の方が好きですが───、それと、人類の進化の未熟さゆえに生じる悪と邪とは、はっきりと区別する必要があります。

 地上の邪と悪には、貧民(スラム)街ができるような社会体制の方が得をする者たち、儲けることしか考えない者たち、私腹を肥やす為なら同胞がどうなろうと構わない者たちといった、現体制下の受益者層の存在が原因となって発生しているものが実に多いことを知らねばなりません。そうした卑劣な人種がのめり込んでしまった薄汚い社会環境があるということです。

 しかし、他方において忘れてならないのは、人間は無限の可能性を秘めていること、人生は常に闇黒から光明へ、下層から上層へ、弱小から強大へ向けての闘争であり、進化の道程を絶え間なく向上して行くものであるということです。闘争もなく困難もなければ、霊にとって征服すべきものが何もないことになります。

 人間には神の無限の属性が宿されてはいますが、それが発揮されるのは、努力による開発を通してしかありません。その開発の過程は黄金の採取と同じです。粉砕し、精錬し、磨きあげなければなりません。地上にも、いつかは邪悪の要素が大幅に取り除かれる時が来るでしょう。

しかし、改善の可能性が無くなる段階は決して来ません。なぜなら、人間は内的神性を自覚すればするほど、昨日の水準では満足できなくなり、明日の水準を一段高いところにセットするようになるものだからです」

℘190
───イエスの山上の垂訓にある〝黄金律〟(人からしてもらいたいと思うことを人にしてあげなさい) は〝適者生存〟の原理と、時として矛盾することがあるように思えるのですが・・・・・・

 「私は進化の法則を、無慈悲なものほど強く生き残るという意味での “適者生存〟 と解釈することには賛成できません。適者生存の本当の意味は、生き残るための適応性を具えた者が存在する、ということです。言い換えれば、存続するための適性を発揮した者が生き残るということです。

 注目していただきたいのは、生き残っている動物を観察してみると、それが生き残れたのは残虐性の性でもなく適者だったからでもなく、進化の法則に順応したからであることが明らかなのです。

もしも適者のみが生き残ったとすると、なぜ有史以前の動物は死滅したかといいう疑問が生じます。その当時はいちばん強い生物だったはずですが、生き残れませんでした。

 進化の法則とは成長の法則の一つです。ひたすらに発展していくという法則です。他の生命との協調と互助の法則です。つまるところ、イエスの黄金律に帰着します」


〝偶然〟の要素について質問さされて───

 「世の中が偶然によって動かされることはありません。どちらを向いても───天体望遠鏡で広大な星雲の世界を覗いても、顕微鏡で極小の生物を検査しても───そこには必ず不変不滅の自然法則が存在します。

あなたも偶然に生まれてきたのではありません。原因と結果の法則が途切れることなく繰り返されている整然とした秩序の世界には、偶然の要素の入る余地はありません。

 全生命を創造した力は、その支配のために、規則ないしは法則、あるいは摂理というものを用意したのです。その背景としての叡智も機構も完璧です。すべては霊的なものです。

すべての生命は霊的存在だからです。生命が維持されるのは、その本質が物質ではなく霊だからです。霊は生命であり、生命は霊です。

 生命が意識を持った形態を取る時、そこには個としての霊が存在することになります。そこが動物と異なるところです。人間は個別化された霊、つまり大霊の一分霊なのです。

 人生には個人としての生活、家族としての生活、国民としての生活、世界の一員としての生活があり、摂理に順応をしたり逆らったりしながら生きております。

逆らえば、そこに暗黒と病気、困難と混乱と破産、悲劇と流血が生じます。順応した生活を送れば、叡智と知識と理解力と真実と正義と公正と平和がもたらされます。それが黄金律の真意です。

 人間はロボットではありません。一定の枠組みの中での自由意思が与えられているのです。決断は自分で下さないといけません。個人の場合でも国家の場合でも同じです。摂理に適った生き方をしている人、黄金律を生活の規範として生きている人は、大自然から、そして宇宙から、よい報いを受けます」


 続いて〝汝の敵〟に対する態度のあり方について、こう説いている。

 「私から見れば、どの人間もみな〝肉体を携えたスピリット〟です。私の目にはドイツ人もイギリス人もアメリカ人もありません。みんなスピリットであり、大霊の一部であり、神の子です。

 時には対症療法としてやむを得ず〝罰〟を与えねばならないこともあるでしょうが、すでに述べたとおり、新しい世界は憎しみや復讐心からは生まれません。

全ての人類のためを思う心からしか生まれません。復讐を叫ぶ者、目には目を、歯には歯をの考えを持つ者は、将来の戦争の種を蒔いていることになります。

 全ての人間には生きる場が与えられております。理性と常識とによって問題を解決していけば、全ての者に必要なものが行きわたるはずです。そう申し上げるより説明のしようがありません。

 あなたの国(米国)はなぜあの短い期間にあれだけの進歩を成し遂げたか。それは一語に尽きます───寛容心です。英国が永い歴史の中で発展してきたのも、寛容心があったからこそです。

米国は人種問題、国籍問題、宗教問題を解決してまいりました。その歴史を通じて、全ての人種にそれぞれの存在価値があること、人種が増えるということは、いずれは優れた国民を生むことになることを学んできました。

 今あなた方の国民が体験していることは、やがて全世界が体験することになります。米国は、世界問題解決のミニチュア版のようなものです。たとえば、あなたの存在を分析してみても、遺伝的要素の一つ一つは確認できないでしょう。

それと同じで、米国は雑多な人種から構成されておりますが、その一つ一つが存在意識を持っており、雑多であるが故に粗末になるということはありません。逆に、豊かさを増すのです。

 成長の途上においては、新しい要素の付加と蓄積とがひっきりなしに行われ、その結果として最良のものが出来上ります。

それは自然と言うものが新しい力、新しい要素の絶え間ない付加によって繁栄しているものだからです。限りない変化が最高の質を生み出すのです。大自然の営みは、いっときの休みもない行進です」


 その日のもう一人のゲストに、ポーランドの役人がいた、そしてまず最初に次のような質問をした。


───霊界の美しさを味わうことができるのは、地上で美しさを味わうことができた者に限られるというのは本当でしょうか。

 「そんなことはありません。それでは不公平でしょう。地上には真の美的観賞力を養成するための施設がないのですから、数知れぬ人が美しさを味わえないことになってしまいます。

霊の世界は償いの世界であると同時に、埋め合わせの世界でもあります。地上世界では得られなかったものが補われて、バランスを取り戻すのです」


 これを聞いてメンバーの一人が───


───今の方の質問の背景には、人間が死ぬ時はこの世で培ったものを携えていくという事実があるように思うのですが・・・・・・


 「地上の人間は、無限の精神のほんの一部を表現しているにすぎないことを銘記しないといけません。それを表現する窓が五つ(五感のこと)しかありません。それも至ってお粗末です。

 それが肉体から解放されると、表現の範囲が飛躍的に大きくなります。精神がその本領を発揮しはじめます。表現器官の性能がよくなるからです。

霊界にはあらゆる美が存在しますが、それを味わう能力は、霊性の発達の程度いかんに掛っています。二人の人間に同じ光景を見せても、一人はその中に豊かさと驚異を発見し、もう一人は何も発見しないということもあり得ます。

 それにもう一つ別の種類の美───魂の美、精神の美、霊の美があり、その美しさの中に、永遠不変のものが有する喜びを味わうことができます。

充実した精神───思考力に富み、内省的で人生の奥義を理解出来る精神には、一種の気高さと美しさがあるものです。それは、その種のものとは縁遠い人、従って説明しようにも説明出来ない者には、見られないのです」

℘196
───美の観賞力を養う最良の方法は何でしょうか。

 「それも、大体において、各個人の霊的発達の問題です。適切な教育が全ての人に等しく利用できることを前提として言えば、美を求める心は、魂の発達とともに自然に芽生えてくるものです。

価値観が高まれば高まるほど、精神が成長すればするほど、醜い、卑劣な環境に不快感を抱くようになるものです。波長が合わなくなるからです。自分の置かれた環境をより美しくしたいと思い始めたら、それは進化と成長の兆しであると思ってよろしい。

 地上界をより美しくしようとする人間の努力は、魂が成長していく無意識の発現です。それは同時に、無限の宇宙の創造活動へ寄与していることでもあります。神は人間に、あらゆる材料を提供して下さっております。その多くは未完の状態のままです。

そして、地上のすみずみにまで美をもたらすには、魂・精神・理性・知性・成長の全てを注ぎ込まねばなりません。

最後は何事も個人単位の問題であり、各自の成長に帰着します。霊性が開発すればするほど、進化すればするほど、それだけ神の属性を発現することになり、それだけ一層、美を求めるようになります。私がつねづね霊的知識のもつ道徳的ないし倫理的価値を強調するのはそのためです。

貧民(スラム)街が存在してならないのは、神性を宿す者がそんな不潔な環境に住まうべきではないからです。飢餓がいけないのは、神性を宿す肉体が飢えに苦しむようであってはならないからです。

悪がすべていけないのは、それが内部の神性の発現を妨げるからです。真の美は、物質的、精神的、霊的のすべての面において、真の調和がいきわたることを意味します」


───美的観念を植えつけるにはどうしたらよいでしょうか。

 「個々の魂が自ら成長しようとすることが必須条件です。外部からありとあらゆる条件を整えてあげても、本人の魂が成長を望まなければ、あなたにも為す術がありません。

ですから、あなたに出来ることは霊的知識を広めることによって無知をなくし、頑迷な信仰をなくし、偏見をなくしていくことです。とにかく、知識のタネを蒔くのです。

時にはそれが石ころだけの土地に落ちることもあるでしょう。が、根づきやすい土地も至るところにあります。蒔いたタネはきっと芽を出します。

 私たちの仕事は、真理の光を可能な限り広く行きわたらせることです。その光は徐々に世界中を照らすようになり、人間が自分たちの環境を大霊の分子、すなわち神の子が住まうにふさわしいところにしようと望めば、迷信という名の暗闇のすべて、醜さと卑劣さを生み出すものすべてが改善されていくことでしょう」


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