Lift Up Your Hearts
Compiled by Tony Ortzen
Psychic Press Ltd .,
2 Tavistock Chambers,
勃興以来すでに百五十年になんなんとする今日でさえ、スピリチュアルリズムが世界中にセンターをもって活発な活動をしている事実を知らない人が多いのに驚かされる。 活動といっても交霊会ばかりではない。心霊治療を施したり、霊能開発のための指導教室も開いている。
英国バークシャー州にあるウィンザー・スピリチュアリスト・チャーチの代表であるシンプソン夫妻も、永年にわたってスピリチュアリズムの理念に基づいて活動している人である。その日の交霊会に招かれた夫妻を、例によってシルバーバーチは温かい歓迎の言葉で迎えた。
「このスピリチュアリズムの真理、この叡知、この光明、この知識を広めるために霊力の通路となって、縁あって近づいてくる人々に援助の手を差しのべることのできる人をこのサークルにお招きするのは、私にとって大いなる喜びです。今日も、お二人に何か力になってあげることができれば、と願っております。
お二人がどういうお仕事をなさり、それがどういう形で多くの人々のために役立っているかは、私にはよく分かっております。私から申し上げる必要はないと思いますが、お二人がこの自己犠牲の奉仕の道に身を投じ、神より授かった霊的能力によって使命に邁進され、霊力というものがその通路さえあればいかに大きな仕事を為すことができるかを身をもって示してこられたのも、全ては霊の導きによるものでした。
〝チャーチ〟と呼ばれている灯台においてこれまでにどれほどの貢献をなさったか、また、今そこから放たれる光によって道に迷っている人々をどれだけ導いておられるか、それはお二人には測り知ることは出来ないでしょう。
お二人が結び合われたのも、今のお仕事を成就するためだったのです。振り返ってご覧になれば、窮地に陥った時に、そしてまた、道がついに開けた時に、泰然自若としてこの道に勤しむことができるように霊が援助し取るべき手段を指示してくれたかがお分かりになると思います。私の申していることがお分かりでしょうか」
───よく分かります。有り難うございます。
「いえ、私への感謝は無用です。感謝の気持ちはすべからく大霊に捧げるきです」
───勇気づけのお言葉を頂いて、とてもうれしいです。
「私の言葉によって、霊の道具として働いている方々が勇気付けられることになれば、つまり熱意を倍加して仕事に精励することになれば、私の努力も大いに報われることになります。霊の道具を見出すのは容易ではないのです。
たとえ見出しても、その能力を開発して正しく活用するように指導するのが、また容易なことではないのです。さらに、せっかく使いものになる段階にまで育て上げたころには、煩悩が頭をもたげて、道に外れたことをやり始めます。
お二人は、啓示された光に忠実に従ってこられました。託された仕事に能力の限りを尽くされました。お二人との出会いを心から感謝している人が大勢います。
霊の道具として為し遂げる仕事は極めて特殊なものなのですから、そのチャンスが少ないからといって、ご自分の存在価値を低く見積もってはいけません。
あなた方は今、キリスト教という硬直した教えに背を向けてしまった人々、〝伝統的〟とか〝正統派〟とかだけで体面を保っている教義に不満を抱く人々が大勢出はじめた時代、そういう国に生きておられます。中には教会は一体何をしているのかと、内部反乱を起こす者も出はじめております。
そうした不満、特に若者の欲求に応えることができるのは、もはや牧師の声ではありません。科学者でもありません。哲学者でも経済学者でもありません。病人を癒すことでもよろしい。
迷信を永遠の真理と置き換える仕事によってでもよろしい、とにかく霊的原理に則って生きようとする人々に希望と将来性を見せつけることです。宇宙の生命活動の全てが、その霊的原理に基づいているのですから。
たった一つの魂でも救ってあげることができたら、たった一つの魂に正しい道を教えてあげることができたら、たった一つの魂に真実の自我に目覚めさせ、存在の意義を自覚させてあげることができたら、それは人間としての大いなる徳積み───霊力と無縁となってしまった聖職者に為し得ない、貴重なサービスを施したことになるのです。
もとより、それは容易なことではありません。この仕事は歓楽に満ちたバラ色の道とは縁遠い道です。強健なる魂は、困難を覚悟しないといけません。しごかれ、鍛えられ、さまざまな挑戦を受けることを覚悟しないといけません。
そうした試練を受けて初めて、内部の霊性がその本来の力、本来の美しさ、本来の気高さを見せるのです。その試練の中にあって絶え間なく霊力が発揮されているのです。
お二人がこれまでに為し遂げられた仕事と進歩、そして今まさに為し遂げつつあることに喜びを感じてください。それが、大霊の叡知によって創案された包括的な大計画への、あなた方の分野での貢献なのです。
こうした素晴らしい霊的真理を手にし、人生の目的を理解し、自己実現と同胞への貢献の意義を悟ることができた私たちは何と幸せでしょう」
ここで一息入れてから、改めてシルバーバーチが尋ねた。
「何か私にお聞きになりたいことがありますか?」
これに夫人が答えて言う。
───私が驚いていることが一つあるのです。講演を要請されて会場へ行き、壇上に上がった時は、ヤジが飛んでくるのではないかと一瞬怯えることがあります。そんな時、ただ真理を有るがままに述べればいいのだと悟ると、怯えも消え、しかも、全くヤジられることがないのです。
永遠の生命の次のページに備える
「真理に対する反感や敵意は、無知が生み出す産物です。分別心が無いのです。恐怖心から出ていることもあります。いわゆる洗脳の結果である場合もあります。
精神が汚染されていて、何の抵抗力も無かった幼い時期に植え付けられた型にはまった教えから離れて理性を働かせることが出来なくなっているのです。
そういう人たちのことを気の毒に思ってあげないといけません。光の中で生きられるものを、暗闇の中で生き続けている人がこの地上に無数にいるという現実は、実に悲しむべきことです。なぜ人間は知識よりも無知を好み、真理よりも迷信を好むのでしょうか。
それは、その人自身にとって気の毒なことなのです。地上に存在を得たそもそもの目的が、霊的覚醒を得ることであり、その結果として、折角の人生を無駄に終わらせることなく、いずれは必ず訪れる死の後に控える、永遠の生命の次のページに備えないといけないのです。
もし反抗に遭った時は、あなたが手にされた珠玉の真理をその人はまだ知らずにいることを気の毒に思ってあげて、その人の力になる言葉を投げかけてあげられるように、大霊に祈ることです。
少しでも真理に近づかせてあげることができれば、それだけで、その人との出会いが無駄でなかったことになるのです。不幸にして何の役にも立たなかった時は、その人がまだ霊的真理を受け入れる用意ができていなかったことを意味します。受け入れる用意が出来ていない魂には、為すすべがありません。
私が同志の方々にいつも申し上げていることは、自分に可能な範囲で最善を尽くすということ、これ以上のことは人間には求められていないということです。
あなた方地上の人間は、不完全さを沢山携えた存在であり、その欠点を少しずつ改めていかねばなりません。が、それは長い時間を必要とする仕事であり、たった一回の地上生活で成就できるものではありません。
その点あなたは大変恵まれた方です。血縁によってつながったスピリットだけでなく、地上的な縁は全くないスピリットの愛によっても守られております。
血縁よりもっと永続性のある縁によって結ばれているスピリットです。そうした広範囲のスピリットによる援助があるからこそ、必要に応じたサービスを施すことが出来るのです。
そして、もう一つ大切なことをお教えしましょうか。そうした霊界の援助者は、インディアンであろうと、中国人であろうと、ニグロであろうと、本当の自我の全てではなく、進化せる存在のごく一部を顕現させているだけだということです」
「確かに、そうだろうと思っておりました」。と夫妻が相づちを打った。
「すべてに犠牲が伴っているのです。背後霊にも割り当てられた仕事があり、それを成就するためにはあなた方の協力が必要なのです。本日このサークルに来られて、今後の仕事への意欲を刺激されたとしたら、これも無駄でなかったことになります」
───無駄だなんて、とんでもありません。私たちも今年で揃って七十歳になりました。が、もう年だといった気持から生き方を変えることは、とても考えられません。
「これまで全てのことがうまくいったのは、お二人の生き方が霊の力の導きを最優先して来られたからです。霊の力は決して見捨てません。決しておろそかにはしません。常に導き、守り、支援し、お二人の霊的能力を最高度に発散させてくれるでしょう。
ですから、うんざりなさってはいけません。お二人のチャーチを訪れるのは、肉体を携えた霊的存在です。その霊的身体は目に見えないかも知れません。ましてや魂(自我の本体)は見えません。大切なのは肉体ではありません。それはそれなりに役目があります。が、魂と霊的身体の成長こそ大切なのです。
その成長にあなたが何らかの寄与をすることができれば、それは他の誰にもできないことをなさったことにほかなりません。ですから、堂々と胸を張って、大いなる愛と力に守られていることを常に自覚して仕事に励んでください。よろしいでしょうか?」
───大変勉強になりました。お礼を申し上げたいところですが、あなたは謝辞をお受けにならないことを存じておりますので、本日のことは大霊に感謝申し上げることに致しましょう。
「私が語った教えをお二人が有意義に活用して下さっていることは、よく存じております。が、私自身の教えではありません。私はただのマウスピースに過ぎません。英語をマスターして、上層界から授かった教えをあなた方のお役に立つ形で表現することができることを光栄に思っているところです。
私のお蔭でよい仕事が出来ているとおっしゃって下さる方にお会いすると、私の心は喜びにあふれます。ですが、そのことで感謝の言葉をお述べになりたいのであれば、むしろ私の言葉を記録してくれている速記者(ムーア夫人)に向かって述べるべきでしょう。大変な仕事です。ですが、彼女は喜んで召使いであることに甘んじております」
「ほんとうに有り難い事です」とシンプソン夫人。
「彼女と旦那さんについての秘密をお教えしましょうか。実は二人はこの私が引き合わせたのです。この仕事のためにです。その意味では私に全責任があるのです。
ですが、これまでのところ、二人はうまく行っているようです。私たち霊団の者はこうしたカップルがいることを誇りに思っております。特殊な指導を受けており、それはこれからもまだ続きます。
ということは、この交霊会もまだまだ続くということです。そういう計画になっているのです。どの政党が政権を握ろうと、明日のことを思い煩ってはなりません。将来を決めるのは霊的真理の意義をどこまで実生活に生かすかということです。
霊的真理に従って生きるようにならないかぎり、本当の平和も調和も善意も、そして霊的・精神的・物的な恩恵も、手にすることはできません。そこに、われわれ」が携わっているこの仕事の重大性があるのです」
これを聞いて速記者の〝旦那さん〟である元牧師が質問する。
───今こうしている間にも、社会問題で悩み苦しんでいる人が大勢いるわけですが、スピリチュアリストとしてはどういう態度で臨むべきでしょうか。
霊的原理の上に社会秩序を
「霊的真理を手にした者が恐れや不安を抱くようなことがあってはなりません。この世には問題がいっぱいあります。今も言いましたように、社会秩序が霊的原理を土台としないかぎり、問題の絶えることはありません。それを唯物的原理の上に築こうとするのは、砂上に楼閣を築こうとするようなものです。
お互いが心の中に敵意を宿しているうちは、外にも平和は有り得ません。憎悪、激情、敵意、貪欲などに燃えている人がひしめき合っている時に、協力体制などというものが出来るでしょうか。
愛とは摂理の成就であるといいます。地球上の人間の一人ひとりが兄弟であり姉妹であり、全人類が親戚縁者であることを理解すれば、互いに慈しみ合うに違いありません。そういう意図のもとに大霊は、各自に神性の一部を賦与し、その連鎖の輪が全世界を取り巻くようにしてくださっているのです。
現段階の人類はまだ、自分が基本的には霊的存在であるという永遠の真理を、実感を持って認識するまでには至っておりません。同じ神性を宿しているがゆえに、お互いが切ろうにも切れない霊的な縁で結ばれており、進歩するも退歩するも、一蓮托生ということです。
そこにあなた自身の責任が生じます。真理を手にしたら、その時から、それをいかに使用するかについての責任を問われるということです。霊的真理に目覚め、霊力の働きに得心がいったら、その時から、今日の悩み、明日への不安を抱くことがあってはなりません。
あなたの霊性が傷つくようなことはありません。あなたが手にした霊的知識、あなたに啓示された真理に忠実に生きていれば、いかなる試練の炎の中を通り抜けても、霊性が火傷を負うことはありません。
地上界で生じるいかなる苦難にも、霊的に傷ついたり、打ちひしがれたりすることは絶対にありません。動機と目的さえ正しければ、霊の力が何とかしてくださることは、これまでの体験でも十分に証拠を手にしておられるはずです。
残念ながら今のところ、霊的真理を理解している人は極めて少数であり、決して多くはありません。大半の人間は、物量・権力・圧政・隷属的体制こそ〝力〟であるかに考えております。が、大霊の子は身体的・精神的・霊的に〝自由〟であるべく、地上に生を受けているのです。
いずれは霊的真理が世界各地に浸透するにつれて、地上の人間も日常生活をより自由に、より明るく生きることが出来るようになるでしょう。この英国においても、また他のいかなる国においても、もう〝話が終わった〟わけではありません。
進化しようとする霊性がゆっくり着実に発現してまいります。その歩みを地上的勢力が邪魔をし進歩を遅らせることはできても、大霊の意図を変えさせることはできません。
もしもそれくらいのことで大霊の意図が変更の止むなきに至るものであれば、この地球はとっくの昔に崩壊していたことでしょう。
霊は物質に優るのです。霊力こそ宇宙の支配力なのです。だからこそ、いつも申し上げるのです───心を奮い立たせなさい、胸を張って生きなさい、地上世界に怖がるものは何一つありません、と。何事も必ず克服できます」
霊団は決して見捨てない
サークルのメンバーの一人で、動物愛護運動に献身している女性が反抗の大きさを訴え、もはや刃折れ矢つきた感じですと述べた。するとシルバーバーチが───
「あなたが取るべき態度は、あなた個人としての最善を尽くして、そこでストップすることです。身体的に疲労の極に達し、精神的にも限界と思える段階に至ったら、それをあなたの限界として、それから先へは進まないことです。持てる力を一気にぶちまけても、あなた一人の力で世の中を変えることはできません。
あなたがこちらへこられた後も、事情はそのままです。あなたには、この地上へ出てくる時に約束した仕事があり、今それをおやりになっているところです。
その仕事のために、これまで霊の世界からいろいろと援助の手が差しのべられてきました。現在も援助の手が差しのべられております。そして、これからもその手が引っ込められることはありません。
しかし、大切なのは、あなたの精神を穏やかに、冷静に、そして確信に満ちた状態に保つことです。そうすれば、霊の力が必ずやその力を発揮します。正義・善・節度、これを守れば必ずや目的は成就されます。
もしも辛い思いをするのがもうご免だと思うようになったら───それも人間として私は決して咎めるつもりはありませんが───少なくともあなたの霊的成長はそこで止まります。成長は困難に立ち向かうこと、挑戦を受け止め、そして克服していくことによってのみ得られるのです。
あなたの場合は、自分で自分を守るすべを知らない動物のための仕事をなさっているわけですが、いかなる仕事であれ、自分を役立てる仕事をしている時は、必ず大勢の高級霊が援助の手を差しのべております。その霊団が途中で仕事を投げ出してしまうようなことは絶対にありません。
耐え忍んでいれば、必ずや目的は成就されます。もとより簡単にはまいりません。苦しいことも辛いこともなしに成就されるとは申しません。が、必ずや成就されます。霊団の方は決して降参しません。成就するまで援助します」
別のメンバーが「霊の力は強烈かも知れませんが、肉体の力は弱いのです」と言うと
「肉体の力はどこから湧いて出るとお考えですか」
───霊からです。
「ならば、必要に応じてその霊力を引き出せばいいでのではありませんか」
───そのつもりでやっております。が、一日も終りに近づくと、いささか疲れます。
「だったら、そこで止めて、睡眠をとり、体力を回復して、次の日の仕事に精を出せばよろしい。私も永いこと地上界の仕事にたずさわってきて、皆さんのご苦労はよく理解しているつもりです。が、条件さえ整えば、 イザという時には霊力が湧き出るものであることを確信しております。
ただし〝条件が整えば〟ということを忘れないでください。何度も申し上げてきましたように、その条件は霊界側の条件のことです。霊界側のタイミングで、霊界側の方法で働きかけます。人間側の都合にわせて行うのではありません。
私たちはあなた方より広い視野で見ております。人間の視野はきわめて限られております。ですから、背後霊に任せることです。万事うまく行きます。一時的には不遇を忍ばねばならないことがあるかも知れません。しかし最終的には必ずうまく収まります」
続いてお金の問題が持ち上がったが、シルバーバーチは
「お金はとかくトラブルのもとになります。余るほど入っても厄介ですし、残してもトラブルのもとになります」と述べて、金銭への執着を戒め、いくつかの個人的な問題についてコメントしたあと、こう述べた。
「どうやら私の時計の電池が切れかかってきたようです(※)。そろそろ引き上げなくてはなりません。
お別れする前に、ともに心を静かにして、お互いがそれぞれの道に進むに当たって、こうしてしばしの間いっしょに過ごしたこの部屋は、霊の力が降りたがゆえに聖められていることを知って下さい。
その聖なる霊力にこうして浸ることができたことを、私たちは光栄に思わないといけません。それはまさに全生命の根源である創造主から発せられた力です。日頃の生活においても、その崇高なる力を少しでも多く受け入れることが出来るように心掛けようではありませんか。
誰にでも分け隔てなく授けられるこの大霊からの愛に浴し続け、任せられた仕事に明るく精を出し、いついかなる時も、高き界層からの使者に見守られていることを忘れないようにしましょう。
内も外も平和がみなぎるようになる道は、各自がそう自覚するしかありません。神の祝福の多からんことを」
※───われわれ地上の人間は、肉体という潜水服を着て大気という海の中に潜っているようなもので、いつまでももぐり続けるわけにはいかない。時おり上がって一服する必要がある。それと同じで、肉体に宿っての活動にも限界があり、ある一定時間以上は続けられなくて、いったん肉体から脱け出て、霊気を補充しなくてはならなくなる。それが睡眠である。
ここででシルバーバーチが言っているのは、たぶん霊界の霊媒であるインディアンが、バーバネルの身体に宿ってその肉体機能を操るためのエネルギーが切れかかっていることを意味していると察せられる。
もちろんシルバーバーチと名のる高級霊も、地上圏との接触のためにかなり波動を下げていることは事実であるが、本人が語っているところによると、本来の所属界に戻って英気を養うのはイースターとクリスマスの二度だという。その間は、われわれ人間が地上界に束縛されているように、シルバーバーチの霊的な意識はかなり制約されているらしい。高級霊にとっては〝苦行〟にも等しい大へんな犠牲的行為で、『霊訓』のインペレーター霊などは、これを〝国籍離脱〟にも似た行為と呼んでいる───訳者。
嘆かわしいほどの無知
別の日の交霊会で、死者の葬儀を霊界ではどうみているかと質問されて、シルバーバーチが例によってそのテーマをきっかけとして話題を広げていった。
「死者にまつわる過剰な悲しみや嘆き、動転は感情的な障壁をこしらえて、こちらから何をしてあげようにも、まずそれを取り除かねばならなくなります。
ですが、現代人の嘆かわしいほどの無知を考えれば、それも止むを得ないことです。すでに役目を終えた肉体の死を大げさに嘆き悲しみ、その肉体から脱け出て元気はつらつとした霊の存在については、毛の先ほどの知識も持ち合わせない───残念ながらそれが地上界の現実です。
それは、しかし、皆さんの努力によって成就しなければならない仕事がたくさんあるということでもあります。ところが、本来ならその職責上みんなの先頭に立って霊的知識を擁護しなければならない聖職者たちが、まるきり霊的知識を持ち合わせないというのですから、情けない話です。
しかし、そんなことにはお構いなく、霊的真理は必ずや広がります。それを完全に阻止できる力は地上には存在しないのです。が、そうした事実を知ることによって、これから啓発していかねばならない分野についての理解が得られるのではないでしょうか」
そう述べてから、霊媒を仕事としているその日のゲストに向かってこう続けた。
「あなたが携わっておられる仕事がまさにそれですよ。あなたの内的自我の欲求が今のお仕事へあなたを導いたのです。大霊から授かった能力を活用して人のために役立つ仕事をなさっている方に対して、私は同志としての親愛感を覚えます」
ゲスト───大変な道を選んだものだと思っておりますが、でも頑張ります。
「一歩でも大霊に近づくための霊的成長を求めている者が、安楽な道を求めてどうしますか ?」
ゲスト───おっしゃることはよく分かります。でも、時には耐え難くて堪らない心境になることがあります。そして、天に助けを求めます。すると、もうダメかと思った段階で救いの手が差しのべられることがあります。
「絶体絶命の最後の一瞬まで我慢させられることがあります。霊的進化のある段階まで来ると、それ相応の配慮がなされるのです。代償と埋め合わせの法則は寸分の狂いもなく働きます」
ゲスト───霊媒としての仕事に携わっている時は霊界が身近に感じられて、最高の生き甲斐を覚えることは事実です。俗世の苦労を忘れて、精神の高揚が得られます。
「そうでしょうとも。たとえわずかではあってもその光栄に浴し、その響きを耳にされた時、あなたは地上にあって霊の高揚を体験されたことになります。それを他の人々に伝える努力をしないといけません。それこそが全生命が基盤としている永遠の霊的実在だからです」
ゲスト───ですけど、最近では物理的なもの、現象的なものに関心が偏り、精神的なもの、霊的なものへの関心」が薄らいでいるようです。わきへ押しやられている感じです。
〝おもちゃ〟 が必要な人もいる
「いえ、それは一部の人々に言えることであって、全体としては、そんなことはありません。いつの時代にも〝おもちゃ〟を必要とする人がいるものです。見かけは立派な大人でも、霊的には子供なのです。もっと素晴らしいものがあることに気づくまでは、おもちゃのような幼稚なもので満足なのです。
とはいえ、何の関心も持たないよりは、たとえ低次元のもの(現象的なもの)であっても〝霊〟に関わるものに関心を持つ方が上でしょう。
霊は無限であり、従ってその顕現の形態も無限であることを忘れてはなりません。要は地上の人間が霊の世界との正常な関わり合いを持つことが大切なのです。とくに現代のような物質偏重の時代にはそれが必要です。
なぜなら、何らかの形で霊の世界と結びつくことによって、援助・導き・霊感・叡知・愛といったものが届けられることになるからです。いったんその霊的関係ができ上がると(人間の側が拒絶しないかぎり)二度と断絶することはありません」
ゲスト───どういう形を取ろうと、それは一粒のタネを蒔くことになるのだと思うのです。そのタネが芽を出し、生長し、実るように、忍耐づよく見守る必要があります。問題は、とかく人間は煩悩によって迷いが生じるということです。
それは無理もないことです。そもそもこうして地上に生まれてきたということが、あなたがまだまだ完全でないことの証拠です。欠点に気づいてそれを直し、過ちを犯してそこから教訓を学び、そうやって少しずつ内部の神性を開発していく、それが地上生活のそもそもの目的です。が、それは長い長い時間を要するとことです。
その過程において、一人の人間の魂に本当の自我を見出させてあげることが出来たら、それであなたの存在意義があったことになります。たった一つの魂で十分です。魔法の杖の一振りで何千人、何万人もの人を一度に改心させて霊的な価値を悟らせるなどということは、絶対にできません」
ゲスト───でも、真理を知った者は誰しも、できるだけ多くの人に物的価値と霊的価値とを調和させた生き方をしてもらいたいと願うものです。
霊能者の役目
「あなたの役目は、霊にかかわる真理を事実に即して披露することです。地上で生活している人に、今そうして生きているそのすぐ身のまわりに、より大きな生命の世界がひしめくように存在していて、それこそが永遠の住処であり、いずれはみんなそこへ行くことになっているということを教えてあげることです。
言いかえれば、人間は本来が霊的存在であり、それが肉体をたずさえているのであって、霊を従えた肉体ではないということ、そしてその霊も、肉体と同じように、成長の為の養分を必要としているということを、なるほどと納得させてあげるのが、霊能者としてのあなたの仕事です。
そう納得させてあげたら、それから後のことは、あなたの関与することではありません。その人は本当の自分を見出したのですから、それからあと、その本当の自分の存在の意義をどういう形で生かすかは、その人自身が決めることです。
たとえ試行錯誤をくり返しながらであっても、何とかして自分を人のために役立たせようと努力していれば、そういう人への援助を仕事と心得ている高級霊がしかるべき指導してくれます。
ですから、迷ってはいけません。もとより生やさしい仕事ではありません。が、努力のし甲斐のある仕事です。霊能者のみができる仕事です。まさしく神が地上に派遣した使者です。
あなたもその一人であることを誇りに思ってください。大霊の仕事のお手伝いをしているのです。迷って首をうなだれるようではいけません。地上で最高の仕事にたずさわっているのですから、堂々と胸を張って歩みなさい。
霊界からの援助者は、地上の使者が無私の協力の姿勢を崩さないかぎり、決して見捨てるようなことは致しません。地上の啓蒙のために、今もっとも必要としている霊的な恩恵をもたらすべく、辛抱強く援助し続けてくれます」
ゲスト───謙虚に、愛の心をもって、誠実に───これをモットーとして仕事をしております。
「霊能者の仕事がラクであるかに想像する人がもしいたら、それはとんでもない見当違いであると言わざるを得ません。ラクを求めるようでは、それは魂が進化していない証拠です。困難な道であることを承知の上で、内在する霊力の威力を信じて挑戦するようでないといけません。
これまであなたがたどられた道は長く、困難で、涙をにじませたこともありました。が、何とか切り抜けてこられましたし、これからも切り抜けることができます。
忘れないでいただきたいのは、あなたのもとを訪れる人、あるいは、あなた方から出向いてあげる人はみな、肉体の奥に埋もれている魂が自由を求め、無知と迷信から脱け出ようとしている人々であるということです。その牢獄の扉を押し開けて魂を解放してあげるのが、あなたの仕事です。
臆することなく突き進みなさい。一人でも多くの魂を解放してあげなさい。神の計画は積極果敢な行動を求めているのです」
ゲスト───ここまで来て撤退するわけにはまいりません。
「そうですとも。いったん霊的な眼が開いた者は、臆することがあってはなりません。あなたには霊的能力という、大霊からの授かりものがあります。それを最大限に活用しなくてはいけません。
あなたを通して届けられるものが、霊の始源と同様に純粋で無垢であるように、最大限の努力をしなくてはなりません。
要は、完全を目指すしかないのです。これは大変なことです。霊的な褒賞はそう簡単には得られません。が、いったん身につけたら、二度と失われることはありません」
人間はみな潜在的霊能者
ここでゲストが興味ぶかい質問をした。仮りに霊的な潜在能力を持って生まれた者が地上でそれを発揮できずに終わった場合、死後その能力を親和力の強い地上の類魂にゆずって発揮させるということが出来るものかということだった。シルバーバーチはこう答えた。
「霊的能力は天賦の才能です。その人の生得の資質であり、自然に備わったものですから、それを他の者にゆずることは出来ません。各自が各自にそなわった資質を発達させるのです。それを地上生活にそなえて用意してきたのです。
霊界へ戻ってみて、地上でそれを十分に発揮できなかったことに気づいたとしても、愛情や親和力、あるいは興味の共通性によって(背後霊となって)世話することになった人間に、その分をゆずって発揮させるというわけにはいきません。その人間にそなわっている能力を発揮させるように指導するしかありません」
サークルのメンバー ───地上で発揮できなかった霊力をそちらで発揮することはできるのでしょうね?
「もちろんできます」
───ということは、霊的能力は物的身体とは関係ないというわけですね?
「能力そのものは霊にそなわったものです。霊の機能といってもよろしい。物的身体にいろいろと機能があるように、霊にも機能があります。
霊視能力というのは、あなた方が肉体の眼で見るように、霊の眼で見ることです。霊聴能力というのは、肉体の耳で聞くのと同じように、霊の耳で聞くことです。人間は本質的には霊的存在ですから、その意味では人間はみんな潜在的な霊能者であるわけです。
もっとも、その能力の顕現の仕方には無限といってもよいほどの形態があります。純粋にスピリチュアル(霊的)といえるものに到達するまでには物的(フィジカル)なもの・心霊的(サイキック)なもの、幽的(アストラル)なもの、その他いくつもの段階を経ることになります」
───霊能者になるかならないかを決めるものは何でしょうか?
「地上へ誕生する前の本人の自由意志で決めています」
───ということは、私は今の霊媒としての仕事を誕生前に選択したのでしょうか?
「もちろんですよ。あなたは母親の胎内に宿る前から存在していたのです。たまたまこうなったというものではありません」
───それにしても、この種の仕事を選ぶ人が少ないことには何か理由があるのでしょうか?
「地上世界の大切な仕事は、必ず少数派によって為されるものなのです」
───自分で選択するのでしょうか?
「そうです。あなたも、出発点で決断したのです。その時点では、この道を選べばこういうことになるということを承知していたのです。それから地上へ誕生したのですが、誕生した時はそうした記憶は潜在意識に埋もれてしまいます。そして、人生体験の中で少しずつ取り戻していきます。
あなたがこうした人生を選ばれたことには偶然も、奇跡もありません。すべては法則と秩序と意図のもとに行われています。すべてが計画されているのです」
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