Monday, February 12, 2024

シアトルの冬 シルバーバーチ霊団の使命

Mission of the Silver Birch Spirit Group

 自分自身についての単純・素朴な真理───これを本当に理解している人が何と少ないことであろう。ところがその自分みずからを知らない人間がとかく他人のことについては、あたかも深い洞察力を持っている人間であるかのような口を利くものである。

曰く───〝あいつも、もうそろそろ気づいてもよさそうなものだが・・・〟〝いつになったら目が覚めるのだろう〟〝あの人がもし側から見られるように自分で自分を見つめることが出来たら、さぞかし・・・〟等々。他人についての単純な真理を表現したこうした言葉はよく耳にするが、それを口にする本人も自分自身についてはとかく何も知らないものである。

 こうした中にあって、古来、その霊性の高さと教説の崇高さにおいて際立ったものを見せる存在がいる。人間それ自身についての彼らの説くところには永遠の真実味がある。

 ソクラテスがそれであり、イエスがそれであり、そしてこのシルバーバーチがそれである。ロンドンの霊媒(バーバネル)の言語機能を借りて語る、三千年前に地上を去ったという古代霊シルバーバーチは、交霊現象にまつわるあらゆる障壁を乗り越えて、しかも稀れに見る言語感覚の冴えをさりげなく発揮しながら、こう語る。

 「私にできることは永遠・不変の宇宙の原理・原則を指摘することだけです。地上世界のことがすべて探求しつくされ、説明しつくされ、理解されつくしたあとに、なおかつ誰一人として完全に究めることも説明することも出来ない永遠の摂理があります。それは構想においても適応性においても無限です。

人間のすべてが、日々決断を迫られる問題に直面した時に、自分が霊的存在であること、大切なのは物的なもの───それはそれなりに存在意義はあっても───ではなくて、それがあなたの本性、永遠の霊的本性に与える霊的な意義であることを自覚することができるようになれば、どれだけ素晴らしいことでしょう。

 物的なものはいずれ朽ち果て、元のチリに帰ります。野心、欲望、富の蓄積、こうしたものは何の役にも立ちません。所詮はあなた方も霊的存在なのです。真の富はその本性に宿されているものだけであって、それ以上ではありえませんし、それ以下でもありえません。

そのことを生涯を通じて悟っていかなくてはいけません。それを悟った時、あなたは真の自分を見出したことになり、自分を見出したということは神を見出したということになり、そうなった時のあなたこそ真の意味での賢者と言えるのです。

 私の目には、あれこれと〝大事なこと〟があって毎日あっちへ走りこっちへ走りして、忙しく暮らしながらその実〝一番大事なこと〟を見落とし、なおざりにしているために、心が絶望的でヤケになっている大勢の人々の姿が見えます。このあたりに私どもが説く教えの核心があるのですが、お判りになりますか。

その人たちが日々の生活の中に生きるよろこび───神の子として当然味わうべき充足感を見出してくれるようにと願って霊界から舞い戻ってくるそもそもの目的がそこにあることが判っていただけるでしょうか。

 それはいわゆる宗教、教会、信条、教義といったものより大切です。人類を分裂させ戦争と混沌と騒乱の原因となってきた、その類のもののいずれにもまして大切です。が、それは自分という存在についての(霊的存在であるという)至って単純な事実に過ぎないのです。なのに、それを悟っているのはごく僅かな人たちだけで、大多数の人は知らずにおります」

 さて、こうした霊的啓示をわれわれは、たまたま良い霊媒がいたから得られた、気紛れで無計画なものと受け止めがちである。が、シルバーバーチがこれから明かすように、その背後では幾重にも組織された霊団によって、遠大な計画のもとに推進されている。

(訳者注───シルバーバーチに限っていえば霊媒のバーバネルが誕生する以前から計画を立て英語の習得や心霊現象の研究と準備を重ねてきたというが、同じことが各国・各民族において太古よりそれ独自の形で推進されてきており、これから先には本格的なものが計画されていることであろう。地上人類は言わばケンカや遊びから学ぶ幼児期を終えて、やっと本格的な霊的真理を学ぶ時代に入りつつある───そんな程度の段階にあるのではなかろうか)


 シルバーバーチはこう語っている。
 「私たち霊団の使命はれっきとした目的ないし意義を持つ証拠を提供し、それによって心霊的法則というものが存在することを立証する一方、生きる喜びと霊的教訓を授けるということです。物理的法則を超えた別の次元の法則の存在を証明するだけでなく、霊についての真理を啓示するということです。

 そうした使命を持つ私たちには、真っ向から立ち向かわねばならない巨大な虚偽の組織が存在します。過去幾世紀にもわたって積み重ねられてきた誤りを改めなければなりません。人間が勝手にこしらえた教義を基盤として築き上げられてきた虚飾の大機構を解体しなくてはなりません。

 私たちの努力は常に、物質界の神の子等にいかにして魂の自由を見出し、いかにして霊的真理の陽光を浴び、いかにして教義の奴隷となっている状態から脱け出るかをお教えすることに向けられております。これは容易な仕事ではありません。

なぜなら、いったん宗教という名の足枷をはめられたが最期、迷信という名の厚い壁をつき破って霊的真理が滲透するには永い永い年月を要するからです。

 私たちは霊的真理の宗教的意義をたゆまず説き続けます。その霊的な重要性に目覚めれば、戦争と流血による革命よりはるかに強烈な革命が地上世界にもたらされるからです。

 それは魂の革命です。その暁には世界中の人々が受けて当たりまえのもの───霊的存在としてのさまざまな自由を満喫する権利を我が物とすることでしょう。」


 私たちが忠誠を捧げるのは教義でもなく書物でもなく教会でもありません。宇宙の大霊すなわち神とその永遠不変の摂理です。

 いずれ地上世界に強力な霊の力が注がれます。世界各地において霊的勢力の働きかけが認識されるようになります。これまで蔓延(はびこ)ってきた利己主義と無知に歯止めをかけるための大きな仕事があるからです。それはいつか必ず成就されます。が、その途中の段階においては大きな産みの痛みを味わわなくてはならないでしょう。

 その仕事を支援せんとして私どもの世界から大ぜいのスピリットが馳せ参じております。あなた方の顔見知りの人、血のつながりのある人もいれば、愛のつながりによって引かれて来る人もいます。

背後霊というとあなた方はすぐに顔見知りの名前を思い浮かべがちですが、一方にはまったくあなた方の知らない人たちで、ただ自分の力を役立てることにのみ喜びを覚えて援助してくれている人たちがいることも、どうか忘れないでください。

 聖書にはサウロ(のちのパウロ)がダマスカスへ行く途中、天からの光に包まれ、目が眩んで倒れ、それがきっかけで改心する話がありますが(使徒行伝9・3、22・6)世の中はそんな具合に一気に改まるものではありません。

一人ずつ霊的真理に目覚め、一人ずつ神の道具となっていくという形で、少しずつ光明が広がっていくのです。霊的なものは大事に育て慎重に広めていく必要があることを銘記しなければなりません。急激な改心はえてして永続きしないものです。私たちの仕事は永続性が生命です。

 一個の魂が神の道具となった時、一個の魂が暗闇から光明へ、無知から知識へ、迷信から真実へと目覚めたとき、その魂は世界の進歩に貢献していることになります。 なぜなら、その一人ひとりが言わば物質万能主義の棺に打ち込まれるクギのようなものだからです。

 発達にも二つの種類があることを知ってください。霊そのものの発達と、霊が使用する媒体(※)の発達です。

前者は魂そのものの進化であり、後者は単なる心霊的能力の開発にすぎません。霊的進化を伴わない心霊能力だけの発達では低い次元のバイブレーションしか出ません。両者が相携えて発達したとき、その人は偉大な霊能者であると同時に偉大な人物であることになります。

(※その働きを普段われわれは精神あるいは潜在意識として捉えている。この中にいわゆる超能力が宿されている。シルバーバーチは別のところでそれがいずれは人類の当たり前の能力として日常茶番に使用されることになると述べているが、ここでは、それがすなわち人格の向上を意味するものでないことを指摘し、超能力者だからといってすぐに崇めたがる風潮を戒めている。訳者)

 私たちが携えてくるメッセージは地上人類にとって実に素晴らしい恩恵をもたらします。魂を解放し、神からの遺産(神的属性)の素晴らしさに目を開かせます。あらゆる足枷と束縛を棄てるように教えます。霊的真理の本当の有難さを教えます。

物的生活の生き方と同時に霊的生活の生き方も教えています。美と愛と叡智と理解力と真理と幸福をもたらします。人のために、ひたすら人のために、と説くメッセージです。

 ところが、そのメッセージを携えてくる私たちが、神を正しく理解していない人々、霊の働きかけの存在を信じない人たちによって拒絶されております。それはいつの時代にもよくある話です。

 一方、現在の地上の状態はそうした私たちスピリットの働きかけをますます必要としております。流血につぐ流血、そしてその犠牲になった人々の涙の絶えることがありません。無明ゆえに地上人類は神の摂理に従った生き方をしておりません。暗黒と絶望の道を選択しております。そこで私たちが希望と光明と平和と調和をもたらす知識を携えてきたのです。

無知ゆえに私たちを軽蔑します。私達のメッセージを拒絶します。私たちを背後から導いている強大な力の存在に気づいてくれません。しかし霊的実在を教える大真理は必ずや勝利をおさめます。

 摂理に逆らう者はみずからその苦い実りを刈り取ることになります。摂理に従って生きる者は物的・霊的の両面において豊かな幸せを刈り取ります。

 暗闇が蔓延する地上にあって、どうか希望を失わず、あなた方と共に人類の高揚のために働いている多くの霊、物的世界を改善しようとしている霊の努力は必ず実ることを信じていただきたいのです。その背後に控える霊力は宇宙で最も強力な力だからです。

 価値あるものは苦難と悲哀なしには達成できません。地上は地上なりの教訓の習得方法があるのです。それは避けるわけにいきません。今、霊的勢力が地上全土にわたって活動を開始しつつあり、あらゆる地域の人々に霊的メッセージが届けられ、その心を明るく照らし、その光が広まるにつれて物質万能主義の闇を追い散らしていきます。

 私たちは罰の恐ろしさをチラつかせながら説得することはしません。恐怖心から大人しく生きる、そんな卑屈な臆病者になってほしくはありません。内部に宿る神性を自覚し、それを発揮することによって霊性を高め、一段と崇高な真理と叡知を身につけていただくことを目指しております。

 そのためには、まず、これまでに得たものに不満を抱くようにならなければなりません。なぜなら、今の自分に満足できず、さらに何かを求めようとするところに、より高い知識を得る可能性が生まれるものだからです。満足する人間は進歩が停滞します。満足できない者はさらに大きな自由へ向けて突き進むことになります。

 私たちは決してあなた方に〝理知的に難しく考えず、ただ信じなさい〟とは申しません。逆に〝神から授かった理性を存分に駆使して私たちを試しなさい。徹底的に吟味しなさい。その結果もし私たちが述べることの中に低俗なこと、邪険なこと、道義に反することがあると思われたら、どうぞ拒絶してください〟と申し上げております。

(訳者注ーシルバーバーチがそう述べる時、自分の訓えを押し付けるつもりはないという態度の表明であると同時に、次のような事実を踏まえていることも指摘しておきたい。それは、シルバーバーチの名が広まるにつれてその名を騙(かた)る霊が出没していることである。

これは霊媒のバーバネルの在世中にもあったが、他界後も世界各地であるようである。シルバーバーチは自分が霊媒とは別個の存在であることを証明するために他の霊媒、たとえばロバーツ女史を通してバーバネル夫妻に語ったことはあるが、それもそう約束した上でのことだった。そういう事実を踏まえて、だから、変だと思われたら遠慮なく拒絶してくださいと言うことにもなった。)
 
 私たちはひたすらあなた方に〝より高潔な生活〟自己犠牲と理想主義を志向する生活を説いております。もしそれをお認めいただければ、それは私たちの訓えの中身に神の極印が押されていることを証明するものと言えましょう。

 たった一個の魂でも目覚めさせることができれば、悲嘆に暮れる者をたった一人でも慰めてあげることができれば、怖じ気づいた人の心を奮い立たせ人生に疲れた人に生きる勇気を与えることが出来れば、それだけでも努力の甲斐があったことにならないでしょうか。

 私たちのメッセージを耳にして心に動揺を来し、困惑し、分けが分らなくなりながらも、先入主的信仰によって身動きが取れずにいる人が大ぜいおります。しかしその人たちも、牢獄に閉じ込められた魂へ向けて呼びかける自由の声を耳にして煩悶しています。

 そういう人たちにこそ、私たちのメッセージを届けてあげるべきです。思いも寄らなかったものが存在することを知ってそれを必死に求めようとする、そのきっかけとなります。真理とはすべて踏み石の一つに過ぎません。

 この霊媒の口をついて出る言葉にもしもあなた方の理性に反撥を覚えさせるもの、神の愛の概念と矛盾するもの、愚かしく思えるもの、あなたの知性を侮辱するものがあるとすれば、それは、もはや私の出る幕ではなくなったことを意味します。私の時代は終わったことになります。

 この交霊会もこれまで数え切れないほど催されておりますが、その間私が魂の崇高なる願望と相容れないものを述べたことは、ただの一度もないと確信しております。私たちは常にあなた方の魂の最高の意識に訴えているからです。

 地球人類は地球人類なりに、みずからの力で救済手段を講じなくてはなりません。出来合いの手段はないのです。前もって用意されたお決まりの救済手段というものはないのです。

そのためにはこれが生命現象だと思い込んでいる自然界の裏側に目に見えない霊的実在があること、そして物質界に生活している人間は物的存在であると同時に霊的存在であり、物的身体を通して自我を表現しているという事実をまず理解しなくてはなりません。

 物的身体は、神の意図された通りに、生活上の必需品をきちんと揃えることによって常に完全な健康状態に保たねばなりません。一方、霊はあらゆるドグマと信条による足枷から解放されねばなりません。

そうすることによって実質的価値、つまり霊的に見て意味のないものに忠誠を捧げることなく、真実なるもののためにのみ精を出すことになり、過去幾千年にもわたって束縛してきた信条やドグマをめぐっての戦争、仲違い、闘争を無くすことが出来ます。


 私たちは神を共通の親とする全民族の霊的同胞性を福音として説いております。その理解を妨げるものは地上的概念であり、虚偽の上に立てられた教会であり、特権の横領(※)であり、卑劣な圧制者の高慢と権力です。

(※宗教組織の発達に伴って内部において権力の構造が生まれる。それは人間的産物にすぎないが、それを宇宙の絶対者から授かったものと錯覚し主張しはじめる。それを〝横領〟と表現したのであるー訳者)

 私たちの霊訓が理解されていくにつれて地上の民族間の離反性が消えていくことでしょう。各国間の障壁が取り除かれていくことでしょう。民族的優劣の差、階級の差、肌色の違い、さらには教会や礼拝堂や寺院どうしの区別も無くなることでしょう。

それは、宗教には絶対的宗教というものはなく世界の宗教の一つひとつが宇宙の真理の一部を包蔵しており、自分の宗教にとって貴重この上ない真理が他の宗教の説く真理と少しも矛盾するものでないことを理解するように成るからです。

 そうしていくうちに、表面上の混乱の中から神の意図(プラン)が少しずつ具体化し、調和と平和が訪れます。こう申し上げるのも、あなた方にその神のプランの一部───私たちが霊の世界から携わり皆さんの一人ひとりが地上において果たさなければならない役割を正しく理解していただくためです。

 私たちが説いていることは曽て人類の進歩のために地上へ降りた各時代の革命家、聖者、霊格者、理想主義者たちの説いたことと少しも矛盾するものではありません。彼らは霊的に偉大な人物でしたから、その霊眼によって死後の生命を予見し、その美しさが魂の支えとなって、あらゆる逆境と闘争を克服することが出来たのでした。

彼らは地上世界にいずれ実現される神のプランを読み取り、その日のために物質界の子等の魂を高揚させるべく一身を擲(なげう)ったのでした。

 彼らも悪しざまに言われました。援助の手を差しのべんとしたその相手から反駁(ハンパク)され嘲笑されました。しかしその仕事は生き続けました。それはちょうど、今日世界各地の小さな部屋で行われている、このサークルのような交霊会の仕事が、そのメンバーの名が忘れ去られたのちも末永く生き続けるのと同じです。

強大な霊の力が再び地上世界へ注ぎ込まれ始めたのです。いかなる地上の勢力を持ってしてもその潮流をせき止めることはできません。

 人間は問題が生じるとすぐ流血の手段でカタをつけようとします。が、そんな方法で問題が解決したためしはありません。流血には何の効用もありませんし、従って何の解決にもなりません。

なぜ神から授かった理性が使えないのでしょう。なぜ相手をできるだけ大ぜい殺すこと以外に、解決法が思いつかないのでしょう。なぜ一ばん多くの敵を殺した者が英雄となるのでしょう。地上というところは実に奇妙な世界です。

 地上にはぜひ私たちのメッセージが必要です。霊のメッセージ、霊的真理の理解、自分の心の内と外の双方に霊的法則と導きがあるという事実を知る必要があります。そうと知れば、迷った時の慰めと導きと援助をいずこに求めるべきかが判るでしょう。

 こうした仕事において私たちは、自分自身のことは何一つ求めていません。栄光を求めているのではありません。地上の人たちのために役立てばという、その願いがあるだけです。

永い間忘れられてきた霊的真理を改めて啓示し、新しい希望と生命とを吹き込んでくれるところの霊的なエネルギーを再発見してくれるようにと願っているだけです。

 今や、これまでの古い規範が廃棄され、あらゆる権威が疑問視され、その支配力が衰えつつある中で人類は戸惑っておりますが、そんな中で私たちは絶対的権威者であるところの宇宙の大霊すなわち神の存在を、けっして機能を停止することも誤ることもない法則という形で啓示しようとしているのです。地上世界がその法則に順応した生活規範を整えていけば、きっと再び平和と調和が支配するようになります。

 そうした仕事は、廃棄された信仰の瓦礫の中にいる人類が不信感と猜疑心からその全部を棄ててしまうことなく、真なるものと偽なるもの、事実と神話とを見分け、永いあいだ人類の勝手な想像的産物の下に埋もれてきた真に価値あるもの、すべての宗教の根底にあるもの、霊についての真理を見出すように指導するという、私ども霊団に課せられた大きな使命の一環なのです。


 霊の力───太古において人類を鼓舞し、洞察力と勇気、同胞のためを思う情熱と願望を与えたその力は、今日においてもすぐ身近に発見できる法則の働きの中に求めようとする心掛け一つで我がものとすることが出来るのです。

 教会の権威、聖典の権威、教理の権威───こうしたものが今ことごとく支配力を失いつつあります。次第に廃棄されつつあります。しかし霊的真理の権威は永遠に生き続けます。私がこうして戻ってくる地上世界は騒乱と混沌に満ちていますが、霊の光が隙間から漏れるようなささやかなものでなしに強力な光輝となって地上全土に行きわたれば、そうしたものは立ちどころに治まることでしょう。

 なぜ人間は光明が得られるのにわざわざ暗闇を求めるのでしょう。なぜ知識が得られるのに無知のままでいたがるのでしょう。叡知が得られるのになぜ迷信にしがみつくのでしょう。生きた霊的真理が得られるのに、なぜ死物と化した古い教義を後生大事にするのでしょう。単純・素朴な霊的叡知の泉があるのに、なぜ複雑怪奇な教学の埃の中で暮らしたがるのでしょう。

 外せるはずの足枷を外そうともせず、自由の身になれるはずなのに奴隷的状態のままでいながら、しかもその自ら選んだ暗闇の中で無益な捜索を続けている魂がいるのです。

思うにそういう人は余りに永い間鎖につながれてきたために、それを外すことに不安を覚えるようになってしまったのでしょう。永いあいだカゴの中で飼われた小鳥は、カゴから放たれた時、果たして飛べるかどうか不安に思うものです。

 足枷を外すまではいいのです。が、外した後に自ら歩むべき道がなくてはなりません。何の道しるべもなくて戸惑うまま放置されるようなことになってはいけません。私たちは彼らの魂の解放を望みますが、その自由が手引きしてくれる方向もよく見きわめてほしいのです。

 永いあいだ束縛の中で生きていると、 やっと自由を得た時に、もう何の指図も受けたくないという気持ちを抱きます。そしてこう言います───〝もう指図を受けるのは御免です。疑問と迷いの年月でした。それを振り棄てた今、私はもう宗教と名のつくものとは一切関わりたくありません〟と。
 
 足枷から解放されて迷いが覚めるとともに、激しい反動が起きることもあります。(たとえば神仏の化身として崇めていた教祖がただの人間に過ぎなかったことを知ってー訳者)

そこで私は、私という一個人、ただのメッセンジャー(使いの者) に過ぎない者に過度の関心を寄せられるのを好まないのです。私はメッセージそのものにすべてを賭けております。地上の人間は余りに永いあいだ教えを説く人物に関心を寄せ過ぎ、超人的地位に祭り上げ、肝心の訓えそのものを忘れてきました。

 私たちの使命はもはやそんな、しょせん人間に過ぎない者を超人的地位に祭り上げることではありません。真理と知識と叡知をお届けするだけです。

私が地上で傑出した指導者であったか、それとも哀れな乞食であったか、そんなことはどうでもよいことです。私の述べていることに真理の刻印が押されていれば、それでよろしい。名前や権威や聖典に訴えようとは思いません。訴えるのはあなた方の理性だけです。

 人間の知性に矛盾を感じさせるようなことは何一つ要求いたしません。人間としての道義に反すること、尊厳に関わること、屈辱感を覚えさせること、人類を軽蔑するようなことは決して説きません。

私たちは全人類の意識を高め、地上における一生命としての位置、宇宙における位置、創造神とのつながり、一つの家族としての地上人類どうしの同胞関係を正しく理解する上で必要な霊的真理を明かそうとしているのです。

 これまでのように何かというと聖典の文句を引用したり、宗教的指導者の名前を持ち出したり、宗教的権威を振りかざしたりすることは致しません。私たちは神から授かっている理性を唯一の拠り所として、それに訴えます。ただ単に聖書に書いてあるからというだけの理由で押し付ける方法は取りません。 理性が反撥を覚えたら拒否なさって結構です。

ただ、よく吟味して下されば、私たちの説くところが霊的存在として最高にして最善の本能に訴えていること、その目標が間違った古い考えを洗い落とし、代わって、後できっと有難く思って下さるはずの大切な真理をお教えすることであることが分っていただけるものと確信します。

地上のいわゆる宗教は真実を基盤とすべきであり、理性の猛攻撃に抗しきれないようなものはすべて廃棄すべきです。

 私たちが霊的真理を説くとき、それは霊的世界の摂理に関わることとしてのみ説いているのではありません。物的世界に関わることでもあるのです。私たちの目から見れば物的世界は神の創造された宇宙の一側面であり、それを無視して、つまり絶望の淵に沈む人類の苦しみに無関心でいて〝宗教的〟ではありえません。

そういう人たちのために援助の手を差しのべる人はすべて偉大なる霊と言えます。真理を普及することのみが人のための仕事ではありません。他にもいろいろあります。

 貧困にあえいでいる人々への物的援助もそうです。病に苦しむ人々の苦痛を取り除いてあげることもそうです。不正と横暴を相手に闘うこともそうです。憎しみ合いの禍根を断ち、人間的煩悩を排除して内奥の霊性に神の意図されたとおりに発現するチャンスを与えてあげる仕事もそうです。


 私が残念に思うのは、本来霊的存在であるところの人間が余りにも霊的なことから遠ざかり、霊的法則の存在を得心させるために私たちスピリットがテーブルを浮揚させたりコツコツと叩いてやらねばならなくなったことです。(巻末〝解説〟参照)

 あなた方も一人の例外もなく神の分霊なのです。ということは、あたかも神があなた方にこう語りかけているようなものです───〝私がすべての法則を用意し、あなた方一人ひとりに私の分霊を授けてあります。宇宙を完全なものにするための道具はすべて用意してあります。

そのすべてを利用することを許しますから、自分にとって良いものと悪いものとをみずから選択しなさい。それを私の定めた法則に順応して活用してもよろしいし、無視してもよろしい〟と。

 そこで神の子等はそれぞれ好きなように選択してきました。しかし他方において、霊界から地上の経綸に当たっている者は神の計画を推進するために、地上において間違いなく神の御心に感応出来る人材を送り込まねばならないのです。

地上の神の子等はこれまで大きく脇道に外れてしまったために霊的なことにすっかり無関心となり、物的なことしか理解できなくなっております。

 しかし冷たい冬の風が吹きまくった後には必ず春の新しい生命が芽生えるものです。地面に雪が積もり、すべてが寒々とした感じを与える時は、春の喜びは分かりません。が春はきっと訪れるのです。そして生命の太陽はゆっくりと天界を回って、いつかは生命の壮観がその極に達する時が参ります。

 今、地上全体を不満の暗雲がおおっています。が、その暗雲を払いのけて夢を抱かせる春、そしてそれを成就させる夏がきっと訪れます。その時期を速めるのも遅らせるのも、あなた方神の子の自由意志の使い方一つに掛かっております。

 一人の人間が他の一人を救おうと努力する時、その背後に数多くのスピリットが群がり寄って、その気高い心を何倍にも膨らませようと努めます。善行の努力が無駄にされることは絶対にありません。奉仕の精神も決して無駄に終わらせることはありません。

誰かが先頭に立って藪を開き、後に続く者が少しでもラクに通れるようにしてあげなければなりません。やがて道らしい道が出来上がり、通れば通るほど平坦になっていくことでしょう。
 
 高級神霊界の神が目にいっぱい涙を浮かべて悲しんでおられる姿を時おり見かけます。今こそと思って見守っていたせっかくの善行のチャンスが踏みにじられていく人間の愚行を見て、いつかはその愚かに目覚める日が来ることを祈りつつ眺めているのです。

そうかと思うと、うれしさに顔を思い切りほころばせておられるのを見かけることもあります。無名の平凡な人が善行を施し、それが暗い地上に新しい希望の灯をともしてくれたからです。

 私はすぐそこまで来ている新しい地球の夜明けを少しでも早く招来せんがために、他の大勢の同志と共に波長を物質界に近づけて降りてまいりました。その目的は神の摂理を説くことです。その摂理に忠実に生きさえすれば神の恵みをふんだんに受けることが出来ることを教えてあげたいと思ったのです。

 物質界に降りてくるのは、正直言ってあまり楽しいものではありません。光も無く活気も無く、うっとうしくて単調で生命力に欠けています。たとえてみれば弾力性のなくなったヨレヨレのクッションのような感じで、何もかもがだらしなく感じられます。

どこもかしこも陰気でいけません。したがって当然、生きる喜びに溢れている人はほとんど見当たらず、どこを見渡しても絶望と無関心ばかりです。

 私が住む世界は光と色彩にあふれ、芸術の花咲く世界です。住民の心は真に生きるよろこびが漲り、適材適所の仕事に忙しくたずさわり、奉仕の精神にあふれ、お互いに自分のたらざるところを補い合い、充実感と生命力とよろこびと輝きに満ちた世界です。

 それにひきかえ、この地上に見る世界は幸せがあるべきところに不幸があり、光があるべきところに暗闇があり、満たさるべき人々が飢えに苦しんでおります。なぜでしょう。

神は必要なものはすべて用意して下さっているのです。問題はその公平な分配を妨げる者がいるということです。取り除かねばならない障害が存在するということです。

 それを取り除いてくれと言われても、それは私どもには許されないのです。私どもにできるのは物質に包まれたあなた方に神の摂理を訓え、どうすればその摂理が正しくあなた方を通じて運用されるかを教えて差し上げるだけです。今日ここにいらっしゃる方にはぜひ、霊的真理を知ればこんなに幸せになれるのだということを身を持って示していただきたいのです。

 もしも私の努力によって神の摂理とその働きの一端でも教えて差し上げることができたら、これにすぎるよろこびはありません。これによって禍を転じて福となし、無知による過ちを一つでも防ぐことができれば、こうして地上に降りてきた苦労の一端が報われたことになりましょう。

私たちの霊団は決して本来あなた方人間が果たすべき義務を肩代わりしようとするのではありません。なるほど神の摂理が働いているということを身を持って悟っていただける生き方をお教えしようとしているだけです。
 
 そう言うとある人はこんなことを言います───〝おっしゃる通りです。だから私たちも施しをします。が、施しを受ける者はまず神に感謝しなければいけません〟と。施しをしたあと、その相手がそのことを神に感謝しようがすまいが、そんなことはどうでも良いことではないでしょうか。

お腹を空かした人がいれば食べ物を与えてあげる───それだけで良いではありませんか。寝るところに困った人に一夜の宿りを提供してあげる。それは良いことですが〝どうぞウチで泊っていってください。ですが、ちゃんと神にお祈りをなさって下さいよ〟などと余計なお説教をしてはいけません。

 スピリチュアリズムの真実を知ったあなた方は、その分だけを物的なもので差し引いて勘定してみたことがおありですか。つまりあなた方は地上的なものでは計れない貴重なものを手に入れられた。霊的真理という掛けがいのない高価なものをお持ちになっている。

自分が霊的に宇宙の大霊と直結していることを悟られた。神の分霊であるという事実を悟られた。その神から遣わされた使者の働きかけを受け止める心掛けも会得された。 

 そうしたことに比べれば、俗世的な宝はガラクタも同然です。あなた方はこれから先も永遠に生き続けるのです。すると、この地上で学んだ知識、体験から得た叡知が、俗世で追い求めている物的なものに比して、その永遠の魂にとっていかに大切であるかがお判りになるはずです。
 
 見かけの結果だけで物ごとを判断してはいけません。あなた方は〝物〟の目でしか見ていないのです。〝霊〟の目でご覧になれば、一人ひとりの人間に完全に公正な配慮がなされていることを知るでしょう。私は時おりあなた方をはじめ他の多くの人間の祈りに耳を傾けることがあります。

そしていつもこう思うのです───もしも神がそのすべてを叶えてあげたら、ゆくゆくはあなた方にとって決してうれしくない結果をもたらすであろう、と。

 地上を去って霊の世界へ来る人たちに私はよく質問して見ることがあるのですが、霊となって自分の地上生活を振り返ってみて、そこに納得のいかないことがあると文句を言う人は一人もいません。

(訳者注ーこれは、すべてなるべくしてそうなっていた、つまり自分が蒔いたタネだったということで、〝文句を言う人は一人もいない〟というのは誰しもその事実関係は認めざるを得ないことを言っているのであるが、だからみんなすぐに反省して殊勝な心掛けに立ち帰るという意味ではない。

頭でそう認めても心が素直に従うとは限らないのは地上でもよくあることで、地上ならば片意地を張って通すことは出来ても霊界ではそうはいかない。その頑な心の奥にある恨みや嫉妬等の悪感情がすぐさま身辺の雰囲気に漂い、環境にそぐわなくなり、親和作業によって同じような感情の中で生きる霊ばかりのいる境涯へと引きつけられていく。そこを地獄という)

 地上世界には今三つの大きな問題があります。一つは無知であり、もう一つは悲劇であり、三つ目は貧困です。この三つは霊についての認識が政治と結びつき、みんながその新しい知識の指し示す方向で思考し、そして生きるようにならない限り、いつになっても無くならないでしょう。

 しかし勝利の潮流は着実に押し寄せてきます。古い秩序が廃れ、新しい秩序にその場を譲っていきます。新しい世界は近づいております。しかし、新しい世界になったら地上から暗い場所が完全に無くなるとは思ってはいけません。相変わらず涙を流す人がいることでしょう。心を痛める人がいることでしょう。大いなる犠牲が求められることもあるでしょう。

 神の計画に関わる仕事は犠牲なしには成就されないのです。取り壊しなしには建て直しは出来ません。人間は大きな悲劇に遭遇して初めて霊的なことに関心を抱きはじめ、その拠ってきたる源を探ろうとします。つまり、あれこれと物的手段を試みてその全てが何の役にも立たないことを知ると、ワラをもつかむ気持ちでどこかの宗教団体にすがりつき、そしてやがて失望します。

 そうしたことの繰り返しの中で霊的真理が台頭し、新しい世界───神の摂理が正しく機能している世界───の建設が始まります。そうなるまでは何かと大きな問題の絶えることはありません。が、いずれにしても、何も言うことのない完全な世界にはなりません。なぜならば完全に近づけば近づくほど、その先により高い完全が存在することを知るからです」


───霊界が地上のスピリチュアリズムの普及に関心があるのなら、なぜもっとマスコミに働きかけないのでしょうか。

 「これは、これは。どうやら貴方は(真理のあり方について)あまり理解がいっていないようですね。知識が普及すること自体は良いことにきまっております。でも、いきなりマスコミを通じての宣伝効果の話を持ち出されるとは驚きました。あなたは魂というものがいついかなる状態で真理に感動するものかをご存じないようです。

 私たちは私たちなりの手段を講じております。計画はちゃんと出来ているのです。後はあなた方地上世界の協力を俟(ま)つのみなのです。

 忘れないでいただきたいのは、私たちは〝魔法の杖〟は持ち合わせていないということです。〝魔法の呪文〟をお教えするのではありません。宇宙の自然の理法を明かして差し上げようとしているだけです。

 その理法を知って魂が目を覚まし、自分も神の分霊であること、自分を通じて神が地上へ働きかけることもあり得ることを理解してもらいたいと願っているのです。そのために私たちなりの普及活動は行っております。が、地上の雑音(マスコミを通じての宣伝)によってそれを行ってみても必ずしも効果は期待できません。

一個の魂、一つの心に感動を与えていくこと、つまり霊とのより密接な一体化を体験させることによって成就していくほかはありません。


───地上の体験、たとえば戦争、苦難、精神的並びに肉体的受難、病気、悲しみ、憎しみ等々は人類の進化と発達にとって不可欠のものとして神の計画の中に組み込まれているのでしょうか。

 「いえ、そんなことはありません。戦争は神が計画されるのではありません。病気は神が与えるのではありません。人類が自由意志の使用を誤ってみずから招来しているのです。その中にも学ぶべき教訓があることは確かです。しかしそれは、何も人類同士で野蛮な行為や恐ろしい残虐行為をし合わなくても学べることです。人間が勝手にやり合っていることを神の行為と取り違えてはなりません」


───今は連邦となっている英国の〝王室〟の存続は有益であると思われますか。

 「そう思います。なぜなら、何であれ国民を一つに結び合わせるものは大切にすべきだからです。世界人類が共存していくための団結の要素を求め、お互いに近づき合うようにならなければいけません。離反、孤立を求めて争うことを私がいけないというのはそこに理由があります。魂が一切の捉われを無くすると、世界中の誰とでも調和した一体化を求めるようになるものです」


───霊界のプランがあることを何度も聞かされておりますが、それらしい明確な証が見当たらないのですが・・・・・・。

 「物的な目を持ってご覧になるから見えないのです。あなた方は全体の進歩というものを自分一人の短い生涯との関連において判断されますが、私たちは別の次元から眺めております。その私たちの目には霊的真理の普及、霊的知識の理解、寛容的精神の向上、善意の増大、無知と迷信と恐怖心と霊的奴隷状態の障壁の破壊が着実に進行しているのが見えます。

進歩は突発的な改革のような形で為されるものではありません。絶対にあり得ません。霊的成長はゆっくりとした歩調で為されねばならないからです。どうか失望なさらないでください。

なるほど物質万能主義の風潮がはびこるのを見ていると失望の要素ばかりが目につきます。が、他方では、霊的真理がそうした物質万能的な利己主義のモヤに浸透していくにつれて、希望の光が射し込みつつあります。正しい認識が広まれば真理が勝利を収めます。
 
 だからこそ私たちのメッセージが大切なのです。私たちにとって大切なのではありません。あなた方にとって大切なのです。私たちは地上の人類がその利己主義に対して、その理不尽な無知に対して、その計画的な残虐行為に対して払わねばならない代償の大きさを認識させるべく努力しているのです。あなた方のために努力してるのです。何とか力になってあげようとしているのです。その動機はあなた方に対する私たちの愛に他なりません。

 私たちは人類を破滅の道へ追いやろうと画策している悪霊の集団ではありません。私たちはあなた方の品性を汚すことや残虐な行為、あるいは罪悪を犯させようとしているのではありません。

それどころか、逆にあなた方の内部に宿る神性、神から授かっている霊的能力を認識させ、それを駆使して自分を他人のために役立てる方法を説き、そうすることによって神の計画の推進に役立たせてあげたいと望んでいるのです」(巻末〝解説〟参照)

シルバーバーチ

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