Monday, February 5, 2024

シアトルの冬 シルバーバーチと名のる古代霊  訳者あとがき

An Ancient Spirit Named Silver Birch Translator's Afterword

 シルバーバーチと名のる古代霊が地上時代の実名も身分も明かさぬまま約半世紀にわたって英国の霊媒モーリス・バーバネルを通じて語り続けた、人類史上空前絶後ともいうべき霊言集を翻訳・編纂してきたシリーズも、本巻を持ってひとまず完結する。

 再三紹介してきたように、サイキックニューズ社から発行された原書は一九三八年第一巻を皮切りに〝シルバーバーチ〟に名を冠した第一期のものが十二冊、冠していない第二期のものが一九八八年八月現在で三冊ある。

 第一期は九名のメンバーが独自の視点から編集しているが(うち三名が二冊ずつ)、中には互いに重複する箇所が幾つかあり、それを削除して他のもので補充したり、ページ数が他の倍ほどのもあって二冊に分けざるを得なかったものもあったりして、結局は私の翻訳シリーズも本巻を入れて同じく十二冊となった。

 ここで改めてお断りしておきたいのは、原書の第一巻は桑原啓善氏が 『シルバーバーチ霊言集』 と題して同じ潮文社から出しておられる。テキスト風にまとめられ、私の訳し方とかなり趣きが異なるが、同じ出版社から同じものが出るのもおかしいので、私はこれを完訳することは遠慮して、他の巻の補充や差し替えに使用したり、

本巻のために名言だけを拾ったりして、一応その大半を摂り入れるという形をとった。又その〝序文〟はシルバーバーチ交霊会(正式の名称は〝ハンネン・スワッハー・ホームサークル〟)の産みの親であるハンネン・スワッハー氏のものなので、その抄訳を本巻に掲げて最後の締めくくりとした。

 洋の東西を問わず〝霊言〟と名のつくものは数多く存在する。が、シルバーバーチ(と名のる霊)ほど気取らず、何のてらいもなく、格好も付けず、親しみ深く語りかけながら、しかも威厳を失わず、そして最後までその自分の地上時代の名前も地位も国家も明かさなかった霊を私は他に知らない。

 私は今でも、ふと、一体シルバーバーチのどこがいいのだろう、と自問することがある。そして、これといって取り立てて挙げられるものがないのに、実際に霊言を読み、あるいはカセットを聞くと何とも言えない魅力を覚え、知らぬ間に読み耽り、聞き耽り、いつしか体に熱いものが込み上げてきて涙が頬をつたう。

スワッハ―も〝序文〟の中で述べているが、シルバーバーチに語りかけられると、姿はバーバネルなのに、思わず感涙にむせぶ者が多かったという。

 確かにそうだったに違いない。何しろひねくれ者の毒舌家として世界にその名を知られ、英国では〝フリート街の法王〟と呼ばれて恐れられていたハンネン・スワッハーその人が一も二もなく参ったという事実そのものが、シルバーバーチの大きさを何よりも雄弁に物語っている。更に、頑固おやじのようなバーバネルを霊媒として手なずけたという事実も見落としてはなるまい。

 ところで、そのシルバーバーチの霊言の素晴らしさに触れた者が心しなければならないのは、この霊言集に盛られている真理が真理として受け入れられるか否かは、その人の霊性にとってそれが必要であるか否かによって決まることであって、その素晴らしさの分からない人のことをつまらない人、分かった人は霊性が高いといった判断を下すべきではないということである。

それはシルバーバーチが何度も言っているように当人の問題である。そして受け入れた瞬間から〝責任〟が生じる。

 その責任には二つの面がある。一つはその真理の指示する通りを素直に生活の中で実践すること、言いかえれば、自分に正直に生きるということであり、もう一つはその知識を縁ある人々を通して広げていくということである。

イエスの時代から二千年もたち、人類は少なくとも知的には確実に進化している。そしてこうした出版機構の発達により書物がかつてのように貧しい人の手に入りにくい時代と違って、誰でもいつでも手に入れられる時代である。そして一人静かに、しかも何度でも繰り返して読むことができる。

 このシリーズを愛読してくださっている方の中には、心に残る言葉を抜き書きにしたりテープに吹き込んだりしていらっしゃる方が少なくないようである。理解しにくい箇所や疑問に思う箇所について質問をお寄せになる方も多い。

その一つ一つに私なりの理解の範囲内でご返事を差し上げているのは無論であるが、それは、その責任が私にあると自覚しているからであると同時に、そうした関係の中で真理が理解されていくのが、これからの時代の一番正しい、そして有効なあり方だと信じるからである。

 カセットテープという便利なものもできて、お陰でシルバーバーチの生の声(といってもバーバネルの声を太くしたものに過ぎないのだが)を聞いて、交霊会の雰囲気を味わうこともできる。そこで気心の合った少人数で読書会や研究会あるいは親睦会といった形で横のつながりを持っておられる方が多いようである。私はこのことを非常にうれしく思い、今後の発展を祈っている。

 ただ一言だけ私見を述べさせていただけば、そうした会の発展が特定の人物を中心としたタテの組織を持つに至るのは感心しないであろう。組織であるがゆえの無用の義務、無用の規約、無用の出費が要求されるようになり、それはシルバーバーチが指摘しているように、人類が自らを束縛することを繰り返してきたその轍を、またぞろ踏むことになりかねないからである。規模の大きい小さいには関係なく言えることである。

 ご自分のワープロで印刷したものを知人・友人に配布しておられる方も多い。その中には、九州の獣医さんで、ペットの死をわが子の死のように悲しんで、見るも気の毒なほど塞ぎ込んでいる人たちのために、動物の死後についてシルバーバーチが語っている箇所をワープロで印刷したものを渡してあげているという方もいる。素晴らしいことだと思い、私の労が報われる思いがする。きっとシルバーバーチも喜んでいることであろう。

 シルバーバーチはバーバネルの死とともに地上との縁を切ってしまったわけではない。バーバネルという地上の人間の肉体を借りての〝語りかけ〟は終わっても、同じ霊団を従え、それにバーバネルやスワッハーなども加えて、何らかの形で地上の霊的革新のために活動しているはずである。それはイエスが地上を去ったのちも霊団を組織して大々的に働きかけてきたのと同じで、その延長線上にあると考えればよいであろう。

 本書はそのシルバーバーチが地上に残してくれた霊言でまだ紹介されていないものの中から、熟読玩味に値すると私がみたものを選んでまとめたものである。サイキックニューズ紙やツーワールズ紙に掲載されたもので霊言集に摂り入れられていないものが多い。が、前後の関係と内容理解の上で必要とみたものは、すでに紹介されているものでも加えてある。

 特に最後の章は紙面に少し余裕があることが分かったので、全巻に目を通しながら〝これはぜひ〟と思うものを拾って追加した。もしかしたら私の記憶違いで、すでに前に掲載されたもの、あるいはそれに類似したものが混じっているかもしれない。が、名言は何べん読んでも価値は薄れないという言い訳をさせていただいて、ご寛恕願いたい。結果的には本書一冊にシルバーバーチの霊的教訓のエキスが凝縮されることとなった。

 本書を人生の友として末永く座右に置いていただければ幸いである。 一九八八年  




   新装版発行に当たって
多くの読者に支持され、版を重ねてきた、このシリーズが、この度、装いを新たにして出されることになりました。天界のシルバーバーチ霊もさぞかし喜ばしく思っていてくれていることでしょう。

                        平成十六年一月   近藤千雄

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