Wednesday, January 4, 2023

 シアトルの冬 木石は語る─サイコメトリ現象    Trees and Stones Speak: Psychometric Phenomena



 サイコメトリと言いう現象は木石にも記憶があることを物語っている。つまり生命のない物体が自分の経歴を物語り、その所有者を始めとして、それに係わりのあった環境や人間群像の秘密をあばくことがある、ということである。

 Psychometry(サイコメトリ)と言う用語はギリシャ語で〝魂の測定〟を 意味する。その測定の仕方、つまり物の歴史を読み取る能力の働き方については二つの説がある。

 一つは、これは霊媒能力ではない──つまり背後霊の援助によって行われるのではなく、能力者自身の能力だけで物体の放射物や反応から情報を得ているという説。

もう一つは、結果からみて背後霊や、その物体と係わりのあるスピリットからの情報を得ていることが明らかなので、これは霊媒現象であるという説。私は双方とも考えられるし、時として双方がオーバーラップする場合があると考えている。

 生命のない物体から出ている放射物は人間のオーラのようなものだと思えばよい。すぐれた霊視家にとってはオーラがその人間の個性、性格、健康、性癖、野心、それに知的ならびに霊的成長度の正直な指標であると同時に、サイコメトリでは物体からにじみ出る放射物が手掛かりとなる。

 一見固いように見える物体もその実質は一連の波長、放射線ないしバイブレーションの状態であるということが科学でもすでに一般的である。従ってわれわれが所持している物体は常に我々のオーラに浸っているわけで、その放射物をいっぱい吸収している。

それで、サイコメトリストが一つの物体を手にすると、その歴史とそれに係わったさまざまな人間模様が感知されるわけである。一ばん新しい所有者の印象がやはり一番強い。もっともこれにも例外がある。

その物体にまつわる大きな悲劇やドラマチックな出来事はやはり一番強烈な印象を残している。

 サイコメトリはスピリチュアリストの集会でしばしば披露されている。要領を説明すると、係の者が同じ番号を印した二枚一組のカードを何組か持って座席をまわる。希望の人はカードの一枚を品物に貼り付け、もう一枚を所持しておく。

品物と品物が触れ合うと放射物が乱れるので、他の物体とぶつからないように小さく仕切った盆のようなものの中のマスの中に入れる。それをサイコメトリストのところへ持ち帰ると、一つ一つ手にして、まず番号を読み上げてから測定に入る。

 エステル・ロバーツ女史の測定はその内容の細かさ、奥の深さが驚異的なことで有名である。いくつか例を紹介してみよう。

 〇指輪の例
 指輪を手にしたロバーツ女史はすぐ、これは非常に古いものですと言った。すると所有主は、古いものではなくて最近ロンドンのイスリントンのちっぽけな小間物店で何となく買ったものだという。

しかしロバーツ女史は少しも動揺した様子も見せず、いえ、これは確かに価値の高い指輪で、そう言う小さい店の手にわたるまでに専門家の鑑定を受けるべきでしたと言う。

 さらに、指輪に石をはめ込んだのはまだ新しいことだが石そのものはとても古いものだという。そして自分の言うことに間違いないからぜひ鑑定してもらうようすすめた。

所有主はテストケースとしてそれを大英博物館に持って行って鑑定してもらったところロバーツ女史の言った通りだった。早速ロバーツ女史はこう書き送った。

 「スカラベの指輪についてあなたは本当に素晴らしい測定をしてくださいました。あの日私は、この指輪がいつのものかを大英博物館で鑑定してもらってご返事すると約束しました。ご記憶と思いますが、私はてっきり新しいものと思っていたのですが、鑑定の結果は、金の嵌(は)め込みは新しいが石は新しいものではなく(古代エジプトの)〝中王国時代〟のもので、紀元前一七〇〇年から一八〇〇年頃のものということです。

当時は数多く同じものが作られましたが、ほとんどミイラと共に埋められました。台に刻まれている象形文字はハスの花です。当時は何か秘密の意味があったそうです。指輪は純粋のスカラベ石でした。

 あなたがミイラが見えるとおっしゃったのには驚きました。エジプト館であなたの説明された通りの写真を何枚か見たからです。年代もさっき述べた頃のもので、顔の横に髪を丸めている様子などは、あなたの説明のままでした。

思うに、もしも、これが王のものであったら、自分の名前を台に刻み込んだはずですから、やはり所有主は多分あなたのおっしゃる通り聖職者でしょう。

 私が知りたいのは一体なぜそれほどのものがイスリントンの小さな店に渡ったかということです。」

 〇小石の例
 平らな石を手にしたロバーツ女史はすぐさまこう言った。
 「この石の持ち主の方はこの石のいわれをご存知のはずです。これは遠いところから来たものです。かつては修道院か寺院の一部でした。とても古い石です。

死の感触があります。足で踏み殺すなど、数々の流血を見てきました。一人ではない。もっと大勢の人が災いを受けています。違いますか。」

 持ち主は仰る通りだが、ただそれは古い城の一部だと言った。「石造物から取り出しましたね」と女史が聞くと「その通りです、私が壁の中央部あたりから取り出しました」と持ち主が答えた。女史が言う。

 「もともと壁の一ばん上にアーチ道がついていました。この石を取り出した城は何百年も昔のものです。そこで多くの戦闘が繰り返されました。鎧や兜が見えます。

壁に割目が見えます。こんどは、その壁が大砲で撃ち砕かれています。地面に戦死者が横たわって居ます。近くに大きな川が流れているはずです。」ここでちょっと間を置いてから

 「あなたはもう一つ石をお持ちではありませんか」と聞く。
 「恐れ入りました。もう一つ持っております。」

 女史はその二つの石はもともといっしょに保管されていたものだと言い、手にした石のバイブレーションによってもう一つの石の話をつないでいった。まず初めに修道院か礼拝堂の印象を受けた。

そして「これは別の地方の古い礼拝堂の一部です。一時期その城に王室の人たちが滞在しています。この石のあった場所の近くに覗き穴に使われた胸壁の隙間があり、そこから矢も放たれました。」

 持ち主は興奮気味に「これはルーウェリン王子の生誕地として有名な北部ウェールズの王城から取って来ました」と答えた。


 〇腕時計の例
 腕時計を手にして、これは何か良くないことと係わりがありました、と述べる。さらにこれを所持していた複数の人間のうち一人はすでに他界している。最初は男の人が所有、次に女性、そして最後に又男性が所有したと言う。

「それ以来ずいぶん長い間使われていませんね。素晴らしい性格を感じます。現在の所有者はとても忍耐強い人で、これまで二度大きなショッキングな体験をされています。どなたのですか。」

 「私のものです。今おっしゃったことは全部正確です」と客席の一人が答えた。
 

「かつてこれを使用した一人が大きな悲劇に会っていることを御存じですか。」

 「存じてます。」
 「その方がある人のために法廷に出て決定的な証言をしたこともご存知ですか。」
 「法廷に出たことがあることは知っております。」

 「一人の使用者が大変な事故に会っております。この時計はすでに八五年から九十年も昔のものです。今使用している少年をご存知ですか。」
 

「存じてます。」
 

「細いくさりに付けて首飾りにしていた女性をご存知ですか。」

 「もちろんです。私がその方に差し上げたのです。」
 

「この時計は色柄のハンカチで包まれて切り出しナイフのそばに置かれておりましたが、ご存知ですか。」

 「はい、承知してます。」
 

「この時計に付いていたコインはどうしましたか。」

 「私が持っております。この細いクサリに付けております。」

 それからロバーツ女史は、この時計がこの方の手に渡ってからガラスが割れたので新しく入れ替えたこと、一度行方が分からなくなり、あとで本の間に挟まれていたのが見つかったことを指摘し、「それ以前は分厚い正方形の本の間に入れられておりました。その本の表紙は赤です」と言った。

 持ち主は「おっしゃったことにいささかの間違いもございません」と答えた。

 さてサイコメトリは持ち主が遠距離にいてもかまわない。たとえばすでに他界した人が使用したり身につけたりしたものを霊媒に送ると、それを手がかりに霊界のかつての所有者と連絡を取って情報を得てくれる。

これには明らかに霊視能力が加わっており、何かと引き合いに出される例のテレパシー説の入る余地はない。

 これまで私は代理で交霊会に出ることは絶対にお断りしてきたのであるが、これから紹介するベリー夫人 Mrs. R. Berry の場合だけは例外であった。

なぜ引き受けたかは次の彼女からの手紙をお読みいただけば理解していただけると思う。ベリー夫人と私とは赤の他人である。

 「私は二十四歳で未亡人となった女です。わずか八カ月の幸福な結婚生活のあと愛する夫が他界しました。今私は霊界の夫について何か知りたくてたまりません。

何か聞くことが出来れば、この死ぬほどの悲しい思いも救われると思うのです。どうかお助け下さい。私は寂しくてたまらないのです。一言でも彼と話をすることが出来れば、あるいは彼からのメッセージを受け取ることが出来れば、どんなにか救われることでしょう。私は夫を心から愛しておりました。夫は二カ月前に二十六歳で死にました。」

 さらに手紙には夫が仕事がマイクロメータを使っていたこと、それが仕事が終わる一時間前に故障をしたことを述べ、最後に〝悲しみに暮れつつ〟と結んであった。

 あまりの気の毒さに心を動かされた私は「そのマイクロメータを送ってみて下さいそれを手掛かりに何とかやってみましょう」と書き送った。但し、「これはあくまでも実験です。

絶対的保証はできません」と書き添えておいた。二、三日後にそのマイクロメータが他の〝寄せ集め〟といっしょに送られてきた。

 私はそれを持ってロバーツ女史の交霊会に出た。何の説明もしなかったし、依頼主であるベリー未亡人の書かれた事情を示唆するような言葉は一切出さなかった。ただ一言、この品物を測定していただくことで一人の女性が救われますとだけ述べておいた。

ロバーツ女史は早速測定して印象を細かく述べた。それをメモして私の代理人がペリー夫人のお宅を訪れた。断っておくが、ペリー夫人はロバーツ女史と一面識もないし、手紙を交わしたこともない。

 さて代理人がロバーツ女史の測定結果を読み終えると、ベリー夫人は満足してこう述べた。
 夫人はご主人と同じ会社に勤めていたが、ある日ご主人が「まずいことになったよ。マイク(ロメータ)をこわしちゃったんだ」という。そのマイクロメータはその会社に勤めた時からずっと使っていたものだった。

奥さんが慰めようとしたがダメだった。やがて頭痛を訴えるようになった。そしてその日の正午ごろ急に容体が悪くなり医者が呼ばれた。そしてすぐに病院へ運ばれ〝脳脊髄炎〟と診断された。そして〝マイク〟をこわしてわずか三日で、あっけなく他界した。

大切なものを壊したという気持ちがあまりに強くて、わずか三日間の闘病生活のあいだもそれを修理しようとしていたという。

 ロバーツ女史はそのマイクロメータを手にするとすぐ一人の若者を霊視し、その若者がこの機械を使用していて、それとその若者の死とに何か関係があることを察知してこう言った。

 「この男の人は何だかうろたえていて、死んだことを後悔しています。まだやらなければならないことが沢山あるので、どうしても死にたくなかった、という気持ちです。

成仏できずにいます。ホンのわずかな期間しか結婚生活を送っていないとおっしゃってます。」

 ベリー夫人は私への手紙で結婚して八カ月しか経っていないと述べているが、そのことは一切ロバーツ女史には言っていない。

 マイクロメータと共に送られてきた他の品物についてロバーツ女史は「この小さな箱の中には奥さんが結婚式の日に付けられたカーネーションが入っております」と述べたが、そのことを聞かされたベリー夫人はその通りだと言い、その他のことについても間違いないと言った。

 さらにロバーツ夫人は「この方はしきりに手を頭へ持って行きますね。亡くなる前にケガをされた印象を受けます」と述べたが、奥さんはその通りだと言い、熱がひどくて頭痛がするので、しきりに手を頭へ持って行ったという。そして悶え苦しむのでベッドから何回も転がり落ちて、手や顔に傷を負ったという。

 ロバーツ女史は又名前を幾つか挙げた。「ジョン。これはジャックと呼んだかもしれません。リリーまたはネリー。ジム、トム。それにR・Bと言うイニシャル。」R・Bは奥さんの Rachael Berry であり、トムは奥さんの父親で、二人は非常に仲が良かったという。

ジムとリリーはなくなったご主人の友達で、ご主人の犬をその後世話をしているという。ジョンはご主人のあとを追いかけるように死んだ親友で、ご主人の墓の隣に埋葬されているという。

 最後に私の代理人が「この若者はまだ感情が乱れているので自分の思いを告げることが出来ません。

まだまだ地上にいたかったという気持ちがとても強いです」というロバーツ女史の言葉を告げると、奥さんはすっかり得心がいった様子だった。

奥さんから見れば、夫について予想していたよりはるかに多くのことが分ったという心境だったらしい。というのは、ご主人はローマカトリック教徒で、スピリチュアリズムのことは嫌っていたからである。

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