Saturday, November 16, 2024

シアトルの秋 霊の親族(アフィニティ)

Affinity of Spirits (Affinity)

二人の天使
一九一八年 二月十一日 月曜日 


 では今夜もまた貴殿の精神をお借りして、前回私が〝歓送の儀〟ならびに〝顕現〟と呼んだところの行事を叙述してみたいと思います。この度の行事にはその両方がいっしょに取り行われたのです。

 今しも中央大ホールには大聖殿の総監からの召集で第十一界の各地から晴れやかな面持ちの群集が列をなして集まっていました。が、面持は晴れやかでも、姿全体にどこか緊張感が漂っています。

というのも、彼らにはこれより厳粛な儀式が行われることが分かっており、この機会に自分の進歩を促進させるものを出来るかぎり摂取しておこうという心構えで来ているのです。

その儀式には神秘的かつサクラメント的な性格があり、吾々はその意味を理解し、意図されている恩恵のすべてを身に受けるべく、上層界より届けられる高き波長に合わせる修行を存分に積んでいるのです。

 全員が集合した時、前回申し上げた天上の雲状のものを見上げたところ、その色彩が変化しつつあるのが分かりました。

私がそのホールへ入ったときは青い筋の入った黄金色をしていました。それが今は次々と入場する群集が携えてくる色調を吸収し融合していき、数が増えるにつれて色彩が変化し、そしてついに全員が集結した時は濃い深紅のビロードの色調となっていました。

地上の色彩の用語で説明すれば以上が精一杯です。実際にはその色彩の表情に上層界からの高度なエネルギーの影響が加わっており、すでに何かの顕現が行われる準備が出来ていることを窺わせておりました。

 そう見ているうちに、その雲状のものからあたかも蒸溜されたエッセンスのようなものが霧状となって降下し、甘美な香気と囁きの音楽とともに個々の列席者にふりそそぎ、心に歓喜と安らぎの高まりを引き起こし、やがて吾々全員が完全なる融和状態へと導かれていきました。

その状態はあたかも細胞のすべてが一体となって一個の人体を構成しているごとくに、出席者全員がもはや個人としてでなく全体として一つの存在となっているのでした。それほどまで愛と目的とが親和性において一つになり切っていたのです。

 やがて謁見の間へ通じる道路の前に一個の雲状の固まりが現われ、凝縮しつつ形体を整えはじめました。

さて私はこれより展開することを精一杯描写するつもりですが、貴殿によくよく留意しておいていただきたいのは、かりに貴殿がその通りを私と同じ界の者に語って聞かせたら、その人は確かにそういう現象があったことは認めても、言い落していること、用語の不適切さ等のために、実際に起きたものとは違うことを指摘するであろうと言うことです。

 その雲状の固まりは表面は緑色で、内側に琥珀色の渦巻状の筋が入っており、それに青色の天蓋がかぶさっておりました。

それが休みなくうごめいており、やがてどっしりとしたパピリオン──濃い青紫色の天井と半透明の緑と琥珀色の柱をした館──の姿を見せました。半円形をした周囲に全部で七本の柱が並び、さらに表面玄関の両わきに二本見えます。

この二本は全体が濃紫色で、白の縁どりのある深紅の渦巻状の帯が巻いています。

パピリオン全体がその創造に携わる神霊の意念によって息づき、その構造から得も言われぬメロディの囁きが伝わってくるのが感じ取れました───聞くというよりは感じ取ったのです。こちらでは貴殿らのように聞くよりも感じ取る方がいっそう実感があるのです。


 やがて天蓋の下、七本の柱のちょうど中央に当たる位置に一台の四輪馬車が出現しました。後部をこちらへ向けております。五頭の美しい馬が頭を上げ、その厳かなドラマに一役買っていることをさも喜ぶかのような仕草をするのが見えます。

肌はほのかな黄金色に輝き、たてがみと尾はそれより濃い黄金色をしております。見るからに美しく、胴を飾る繻子(サテン)の掛けものもパピリオンの色彩を反映してうっすらと輝いております。

 続いてその馬車の中に現れたのは美しい若い女性の姿でした。吾々の方を向いておられ、私の目にはその美しさのすべてを見ることができました。見れば見るほど、ただただ美しいの一語に尽きます。全身が地上に存在しない色合いをしております。

琥珀色といってもよろしいが、同じ琥珀でもパピリオンの柱のそれとは感じが異なります。

もっと光輝が強く、もっと透明ですが、柱には見られない実在感と永続性を具えております。上腕部には紫の金属でできた腕輪(バンド)をつけ、手首のところにルビーの金属の輪が見えます。

頭部には白と黄色の筋の入った真っ赤な小さい帽子をつけておられ、髪はあたかも沈みかかった太陽の光を受けているような、オレンジ色の光沢をした茶褐色をしております。目は濃紫に青の混じった色をしておられます。

 さて、そうしたお姿に見入っているうちに突如として私は天上界からお出ましになられたこの女神が・・・・・・いけません。

その方が吾々にいかなる意味を持つのか、本来の界においていかなるお立場にあるのかをお伝えしたいのですが、それを適確に言い表わす用語が思い当たりません。しばらく間を置かせてください。それからにしましょう。


 では、こう綴ってください。母なる女王。処女性。一民族を懐に抱きつつ、進歩と善へ向けての力として、その民族の存在目的の成就へと導く守護神。

一方において惰眠をむさぼり進歩性を失える民族に啓示をもたらしてカツを入れ、騒乱の危険を冒してでも活動へとかきたて、他において、永遠の時がこのいっときに集約され、すべてが安寧の尊厳の中に融和し吸収され尽くしたかの感覚をすべての者に降り注ぐ。

すべてを曝しても恥じることなく、美への誘惑がことごとく聖(キヨ)さと哀れみと愛へ向かうところの、恐れることを知らぬ心と純粋性。

以上のものをひとまとめにして、これを〝女王〟という一語で表してみてください。その時のお姿から吾々が得たものをお伝えするにはそれが精一杯です。

 さて、その女王が後ろを振り向いて一ばん近い二頭の馬に軽く手を触れられると、馬車はくるりと向きを変えて吾々の方へ向きました。

するとそこへホールの反対側の二階の回廊から一人の若者が降りてきて、中央の通路を通って馬車の近くで歩を止められました。そこで女王がにっこりと笑みを送ると、若者は後部から馬車に乗り、女王のそばに立ちました。

そのお二人が立ち並んでいる時の愛と聖なる憧憬の中の、得も言われぬ睦み合い───互いが己れの美を与え合って互いの麗しさを増しております。


──その若者の様子を述べていただけませんか。

 若者は右に立たれる女王をそのまま男性としたようなものです。両者は互いに補足し合うもの、言わば〝対〟の存在です。ただし一つだけ異なるところがありました。

身にまとわれた衣装がわずかながら女王のそれより赤みがかっていたことです。それ以外にお二人を見分けるものはとくにありませんでした。

性別も身体上ではなく霊性に表われているだけでした。にもかかわらず、一方はあくまで女性であり、他方はあくまで男性でした。ですが、お二人には役割があります。

 お二人は、これより、ある雄大な構想を持つ画期的な計画を推進する大役を仰せつかった一団の指揮者として参られたのです。

その計画の推進には卓越した才能と多大な力とを要するために、一団はそれまでに大聖堂を中心とした聖域において準備を整えてきたのでした。その計画というのはこうです。

 現在ある天体上の生命がようやく〝知性〟が芽生えはじめる進化の階梯に到達していて、その生命を動物的段階からヒトの段階へと引き上げ、人類としての種を確立させるためにその天体へ赴くというものです。

人類といっても、現在の地上人類のタイプと同一のものとはならないでしょうが、大きく異なるものでもなく、本質においては同種です。

一団はその人類のこの画期的段階における進化を指導する仕事を引き受けることになっているわけです。計画のすべてを受け持つのではありません。

また今ただちに引き受けるのではありません。今回は彼らの前任者としてその天体を現在の段階にまで導いてきた〝創造の天使たち〟と初めて面会することになっております。彼らは時おり休息と指示を仰ぎに帰ってきます。

その間、一部の者が残留して仕事を続行し、休息を得た者は再びその天体へ赴いて、残留組と交替し、そうやって徐々に仕事を広げて生きつつありますが、他方では(今回の一団のように)この界または他の界において、次の新たな進化の段階を迎える時に備えて、さらに多くの天使からなる霊団を組織して鍛錬を積んでいるのです。

彼らはその天体が天界の虚空を旅しながら首尾よくモヤの状態から組織体へ、単なる組織体から生ける生命体へ、そして単なる生命体から知性を具えた存在へ──これを地上に擬(なぞら)えて言えば、動物的段階から人間的存在を経て神格を具えた存在へと進化していくのを陰から援助・促進するのです。

 間もなく吾々の見送りを受ける一団は、これから最初の試練を受けることになります。

といって、いきなり創造に携わるのではなく──それはずっと先の話です──創造的大業の末端ともいうべき作業、すなわち、すでに創造された生命を別の形体へと発展させる仕事を割り当てられます。

それも、原理的には創造性を帯びておりますが、まったく新しい根源的な創造ではなく、低級な創造物の分野にかかわる仕事です。

 ここで注目していただきたいのは、お二人が出現なさった時、順序としてまず女性の方が馬車の中に姿をお見せになり、それから男性が姿を見せたことです。

この王国においては女性原理が優位を占めているからです。が、お二人は並んでお立ちになり、肩を並べて歩まれます。

そこに謎が秘められているのです。つまり一方が主であり他方が従であるはずのお二人がなぜ等位の形で一体となることが出来るかということです。現実にそうなっているのです。しかし私からこれ以上話さないことにします。

あなた方ご自身でお考えいただくことにいたしましょう。理屈でなしに、真実性を直感していただけると思うのです。(章末にその謎を解くカギが出てくる──訳者)

 いよいよその厳粛なる使命のために選ばれた霊団──遠く深い暗黒の虚空の最果てへ赴く霊団がやってまいりました。彼らが赴くところは霊質に代って物質が支配する世界です。

ああ、光明の天界より果てしなく濃密な暗黒の世界へ──環境はもとより、吾々と同じ根源を有する生命の火花を宿す身体も物質で出来ている奈落の底へと一気に下がって行くことが吾々にとっていかなることを意味するか、貴殿にはまず推し測ることはできないであろう。

 かつて私も霊団を従えて同じような境涯へ赴いたのです。不思議といえば不思議、その私と霊団が今こうして物的身体に閉じ込められた貴殿に語りかけているとは。

もっとも、吾々の目には貴殿の霊的身体しか映じません。それに向けて語りかけているのです。が、可憐なるカスリーン嬢が彼女特有の不思議な魔力を駆使して吾々よりさらに踏み込み、直接貴殿の物的脳髄と接触してくれております。

 さて今回はこれ以上述べることはありません。質問が幾つかおありのようですね。私にはそれが見て取れます。お書きになってください。次の機会にお答えしましょう。
                           アーネル ±

 訳者註──ここには記載されていないが、実際にはこのあと質問事項が箇条書きにしたことが四日後の次の通信の冒頭から窺われる。

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