スピリチュアリズム的な霊的原理を理解した者は、健全な意味で楽天的人生をもつようになるのであるが、どんなに悟ったつもりでいる人でも、人生の荒波に疲れ果てる時期が必ず訪れるものだ。思わぬ災難が重なる・・・・・・腹の煮えかえるかのような不快な思いをさせられる・・・・・・
が、そうした耐えがたい苦難の体験もそれぞれに意義を持っており、長い視野で眺めれば、ごく些細な出来事にすぎないものらしい。
シルバーバーチの教えも楽天主義を基調としており、またその必要性を強調する。ある日の交霊会でも、スピリチュアリズムがキリスト教を始めとする数々の既得権力による反抗にもかかわらず、振り返って見ると大きな前進を勝ち得ていることを強調してこう述べた。
「私たちの仕事が始まった当初、世間の人は、何とたわいもないことをして・・・・・・と軽蔑の眼差しを向けたものでした。〝テーブルラッパー〟(※)そう呼んで軽蔑し嘲笑しました」
℘90
※───初期の頃はテーブルの叩音(ラップ)による通信が盛んにおこなわれた。出席者がテーブルを囲んで両手をテーブルの上において瞑目していると、蓄積したエネルギーを利用して霊団側がそのテーブルを浮上させ、少し傾斜させて脚の一本で床を叩いて、一定の符牒で通信を送ってくる。極めて幼稚な通信法で、したがって高等な内容のものは送ってこないが、心霊実験の中では簡単に行えてしかも危険性の少ない現象である───訳者
しかし実はそうした現象も大きな目的を持った一大計画に組み込まれていたのです。私たちの意図した影響力は次第に強くなり、世界中に広がっていきました。各分野で名声を得ている名士を次々とその影響下に誘っていきました。
偏見によって目隠しをされ、理性が迷信によって曇らされている者は別として、やはり著名人の証言は一般の人から尊重されるという考えから、そういう手段を選んだのです。
その後もますます多くの人材が、同じ影響下に置かれていきました。霊媒も増えました。サークル活動が広まり盛んになりました。科学・医学・思想・宗教その他、ありとあらゆる分野の人をこれに参加させ、当時すでに猛威をふるっていた誤った物質万能主義を否定する現象、新しい高度な生命観を思考する霊的事実、
唯物思想の終焉を予告する眼に見えない力の存在へ目を向けさせました。ほどなくして───実に短期間のうちに───そのテーブルラッパーたちは、宗教を腐敗から守る運動の旗手となっていったのです。
わずか百年足らずの間にどれだけ多くのことが成就されたか───それをこうした経過の中から読み取って、それを教訓として、それ以後どれだけのことが成就できるか、そこに皆さんの先見の明を働かせて下さい。
私たちが今まさに欲しているのは、もっと多くの道具───背後から導き鼓舞している霊の力に満腔の信頼を置いてくれる人材です。霊的実在を悟り、それは他の同胞のために使用してくれる人、真理を生活の灯として持ち歩いてくれる人です。
私たちが望んでいるのは、まずそうした霊的真理のメッセンジャー自らが日常生活においてそれを実践し、その誠実さと公明正大さに貫かれた生活を通して、見る人の目に、なるほど神のメッセンジャーであることを認識させることです。
それから今度は積極的に世に出て、社会生活のすべての面にそれを応用していってほしいのです。
℘92
つまり、まずみずからが身を修め、それから他人のために自分を役たてる仕事に着手するということです。これまでも、あなた方が想像なさる以上に多くの仕事が成就されてまいりましたが、これから先さらに成就されていく可能性に較べればそれは物の数ではありません。
世の中を見回して、あなた方の努力のしるしを読み取ってごらんなさい。古くて使い物にならない教義やドグマの崩壊が見て取れるはずです。誤った信仰の上に築かれた構築物が、いたるところで崩壊しつつあります。
私たちの説く霊的真理(スピリチュアリズム)は、心霊学という知識を土台として築かれております。その土台はいかなる嵐にもビクともしません。なぜなら、それは事実を───霊的事実を───土台としているからです。
あなた方が建造の一役を担ったその殿堂は、あなたがたが地上を去って物質界に感応しなくなったのちも、あなた方の奮闘努力の記念碑として、末永くその勇姿をとどめることでしょう」
同じテーマについて別の交霊会で───
「真理は前進し、暗黒と無知と迷信と混迷を生み出す勢力は後退します。霊力はますます勢いをつけ、これまで難攻不落と思われていた分野にまで浸透しながら凱旋し続けます。それが、私たちが繰り返し宣言しているメッセージです。
皆さんは今まさに、地上に新しい存在の秩序を招来するために貢献しておられるのです。ゆっくりとではありますが、変革が生じつつあります。新しいものが旧いものととって代る時、数々の変動が生じるのは避けられません。それも神の計画のうちに組み込まれているのです。
常に基本的な霊的真理を忘れぬように、と私は申し上げております。常にそれを念頭に置き、その上に宗教感・科学感・哲学感・倫理感・道徳観を打ち立てて下さい。口を開くと大言壮語をする御仁に惑わされてはなりません。
私たちの説く真理は至って単純であるがゆえに、誰にでも分かり、誰にでも価値を見出すことができます。神の子としての人間のあるがままの姿を何の虚飾もなしに説いているからです。
すなわち神の分霊を宿し、その意味において真実〝神の子〟であり、永遠にして不変の霊的な絆によって結ばれているという意味において真実〝同胞〟であり、人類全体が一大霊的家族であり、神の前に平等であるということです。
℘94
霊の目を持って見る者は、民族・国家・気候・肌の色・宗教の別を超えて見つめ、全人類を一つにつなぐ霊の絆を見て取ります。地上世界は今こそ、そうした単純な真理を見直す必要があります。余りに永い間教義とドグマ、祭礼と儀式といった宗教の本質、ないしは生命の大霊とは何の関係もないのに躓(つまず)いてきました。
私は、魂をより意義ある生活へ誘ってくれるものでないかぎり、教義とか信条、ドグマといったものには関心がありません。日常の行い以外のものには関心を向けません。根本的に重要なのは、日常生活の生き方だからです。
いかなる教義も、いかなるドグマも、いかなる儀式も、原因と結果の法則を一寸たりとも変えることはできません。霊性を一分たりとも増すことも減らすことも出来ません。それは日常生活によってのみ決定づけられるものだからです。
私たちが忠誠を捧げるのは、宇宙の大霊すなわち神と、永遠不変の摂理であって教義でもなく、書物でもなく、教会でもありません。
霊の力がこうした形で地上に顕現するようになったことを喜んでください。真理を普及するための新しい人材が次々と霊力の支配下に導かれて行きつつあることに着目して下さい。新しい通信網ができたことに着目してください。
人類の進歩を妨げてきた既得権力が崩され、障害が取り除かれていきつつあることに目を向けてください。
私たちは刀剣や銃を手にせずに愛と寛容心と慈悲と奉仕の精神を持って闘っている大軍の一翼を担っております。私たちの武器は真理と理性です。そして目指すのは、人間として当然受け取るべきものを手に出来ずにいる人々の生活に、豊かさと美しさをもたらしてあげることです。
神とその子等の間に立ちはだかろうとする者には、いかなる地位にあろうと、いかなる人物であろうと、容赦は致しません。地上に神の王国を築くためには、地上のいずこであろうと赴く決意はけっして揺らぎません。
これまでも数々の虚言・中傷・敵意・迫害にあってまいりました。しかし勇気ある心の持ち主、断固たる決意を秘めた魂が闘ってくれたお陰で、こうして霊の力が地上に顕現することができたのです。
今も、新しい世界の前哨地に、多くの勇士が歩哨に立ってくれております。ですから私は、みなさんに、元気をお出しなさい、と申し上げるのです。心に迷いを生じてはなりません。
変転極まりない世の中の背後にある神の計画を読み取り、あなた方もその新しい世界の建設の一翼を担っていることを自覚して下さい。真理は絶え間なく前進しているのです。
℘96
意気消沈した人、悲しげにしている人たちに、元気を出すように言ってあげてください。先駆者たちの努力のたまものを、これから獲り入れるのです。そしてそれが、明日を担う子供たちにより大きな自由、より大きな解放をもたらすための地ならしでもあるのです。
不安は無知という暗闇から生まれます。勇気は自信から生まれます。すなわち、自分は神であるとの真理に目覚めた魂は、いかなる人生の嵐を持ってしても挫かせることはできないという自信です。
私がお教えしているのは、ごく単純な真理です。しかし単純ではあっても、大切この上ない真理です。地上人類が自らの力で自らを救い、内在する神性を発揮するようになるためには、そうした単純な霊的真理を日常生活において実践する以外にはないからです。
皆さんはその貴重な霊的な宝を手にされていること、それが全ての霧とモヤを払い、悟りの光によって暗闇を突き破ることを可能にしてくれることを知ったからには、自信を持って生きて下さい。
しかし同時に、知識には必ず責任が伴うことも忘れてはなりません。知った以上は、知らなかった時のあなたとは違うからです。知っていながら霊的真理を無視した生き方をする人は、知らないために霊的摂理にもとる生き方をする人よりも大きな罪を犯していることになります。
℘97
その知識を賢明に、そして有効に生かして下さい。一人でも多くの人がその知識を手にすることができるように、そしてそれによって魂が鼓舞され、心が開かれる機縁となるように配慮してあげてください。
私たちの方でも、一人でも多くの人の涙を拭い、心の痛みを癒し、燦然たる霊的真意を見えなくしている目隠しを取り除いてあげる為の態勢を整えているのです。
言いかえれば、親である神を子等に近づかせ、子等を神に近づかせ、人生の奥義に関わる摂理を実践に移させようと、心を砕いているのです。そうすることによって利己主義が影をひそめ、生命の充足感を地上に生きる人の全てが味わえることになるでしょう」
ここでメンバーの一人が、こうした霊的真理の普及を既成宗教の発端と同列に並べようとする意見を述べたのに対して、シルバーバーチはこう説いた。
「私たちはこれまで、確かに成功を収めてまいりました。しかし、そうしたスピリチュアリズムの発展を他の宗教と同列に並べて考えてはいけないことを銘記してください。
私たちにとってスピリチュアリズムは、宇宙の自然法則そのものなのです。これを体系化して幾つかの信条とすべきものではありません。」
キリスト教の発生とて、当初は自然法則の一つの顕現でした。ユダヤ教もそうですし、仏教もそうです。そのほか地上に誕生した宗教のすべてが最初はそうでした。
それぞれの創始者が霊覚によって、その時代の民衆の成長・発展・進化・慣習・鍛錬・理解力などの程度にふさわしいビジョン、インスピレーション、悟りを手にしました。
それがさらに、受けいれる用意のある者に受け継がれていきました。それは全体の一部であったとはいえ、真理であることには間違いありませんでした。ところが残念なことに、そのささやかな真理が人間的不純物の下に埋もれてしまいした。
真理の持つ純粋な美しさを留めておくことができなかったのです。周りに世俗的な信仰や神学的なドグマ、宗教的慣習、伝承的習俗などが付加されて、玉石混交の状態となってしまいました。やがて神性が完全に息の根を止められてしまいした。そして新たにそれを蘇生させる必要性が生じたのです。
過去の宗教はすべて───例外なしに───今日こうして届けられつつあるものと同じ啓示の一部であり、ひとかけらなのです。一つの真理の側面に過ぎないのです。それらを比較して、どちらがどうということは言えません。届けられた時の事情がそれぞれに異なるのです。
たとえば今日の世の中ですと、昔では考えられなかった通信手段が発達しております。伝達し合うことに、あなた方は何の不自由も感じません。何秒とかからずに、お互いがつながり、メッセージを送り、地球を一周することができます。
唯一これまでの啓示と異なるところは、入念な計画にしたがって組織的な努力が始められたということです。それが地上の年代でいえば、十九世紀半ばのことでした。
今度こそは何としてでも霊的知識を地上に根づかせ、いかなる勢力を持ってしても妨げることのできない態勢にしようということになったのです。
その計画は予定通りに進行中です。その事は霊的知識が世界各地で盛んに口にされるようになってきていることでもお分かりでしょう。霊力は霊媒さえいれば、そこがどこであろうとお構いなく流入し、新しい前哨地が設立されます。
ご承知のように、私は常づね、一人でも多くの霊能者が排出することの必要性を強調しております。霊界からの知識・教訓・愛・慰め・導きが地上に届けられるためには、ぜひとも霊的中継者が必要なのです。
一人の霊媒の排出は物質万能思想を葬る棺に打ち込まれるクギの一本を意味します。神とその霊的真理の勝利を意味するのです。
霊媒の存在が重要である理由はそこにあります。両界をつなぐ媒体だからです。
知識の光と叡智の世界から私に届けられるものを、こうした形で皆さんにお伝えすることを可能にしてくれる、このバーバネルという霊媒を見出したことを嬉しく思うのも、そこに理由があります」
シルバーバーチ
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