More Teachings of Silver Birch
Edited by A.W. Austen
ナザレのイエスは今どういう仕事に携っているのだろうか。ある日の交霊会でシルバーバーチは、イエスは今すっかり教義とドグマと権力という雑草におおわれてしまった霊的真理の本来の姿をいま一度明らかにするための霊界からの地球的規模の働きかけの最高責任者であると述べた。
そのことについて別の日の交霊会で次のように述べた。
「ほぼ二千年前にイエスは磔刑(はりつけ)にされました。それはただ、当時の祭司たちがイエスを憎んだからにすぎません。イエスを通して霊力のほとばしりを見せつけられたからでした。まさに神の子に相応しい人物だったからにほかなりません。このままでは自分達の立場が危ないと思ったのです。
私たちが今それとまったく同じ反抗に遭っております。宗教界がこぞって〝真理〟を磔刑にしようとしております。しかし、それは不可能なことです。真理は、ただ真理であるが故に、あらゆる反抗、あらゆる敵対行為の中でも厳然と存在しつづけます。
キリスト教会の外部では次々と霊力が顕現しているにもかかわらず、空虚で侘しい限りの巨大な建造物の中には、その陰気な暗闇を照らす霊力の光は一条も見られません」
───そういうキリスト教は死滅してしまった方がましだとおっしゃるのでしょうか。
「私はレンガとモルタル、祭壇と尖塔で出来た教会には何の興味もありません。何の魅力も感じません。建造物にはまるで関心が無いのです。私が関心を向けるのは〝魂〟です。
それで私は神とその子の間に横たわる障壁を取り除くことに奮闘しているのですが、不幸にして今日では教会そのものがその障壁となっているのです。これほど大きな罪悪があるでしょうか。宇宙の大霊である神は一個の教会に局限されるものではありません。
一個の建造物の中に閉じ込められるものではないのです。神の力は人間各自がその霊性を発揮する行為の中に、すなわち自我を滅却した奉仕の行為、困窮せる無力な同胞のために一身を捧げんとする献身的生活の中に顕現されるのです。そこに宇宙の大霊の働きがあるのです。
確かにキリスト教会にも奇特な行いをしている真摯な人材がそこここに存在します。が、私が非難しているのはその組織です。それが障害となっており、是非とも取り除かねばならないからです。
真の宗教には儀式も祭礼も、美しい歌唱も詠唱も、きらびやかな装飾も豪華な衣装も式服も不要です。宗教とは自分を役立てることです。同胞の為に自分を役立てることによって神に奉仕することです。私はこれまでそのことを何度申し上げてきたことでしょう。
然るに教会は人類を分裂させ、国家と階級を差別し、戦争と残虐行為、怨恨と流血、拷問と糾弾の悲劇を生み続けてまいりました。人類の知識と発明と科学と発見の前進に抵抗してきました。
新しい波に呑み込まれるのを恐れて、既得の権利の確保に汲々としてきました。しかし新しい霊的真理はすでに根づいております。もはやその流れをせき止めることはできません」
───イエスの意気込みが察せられます。
「誤解され、崇められ、今や神の座にまつり上げられてしまったイエス───そのイエスは今どこにおられると思われますか。カンタべリー大聖堂ではありません。セントポール寺院でもありません。ウェストミンスター寺院でもありません。実はそうした建造物がイエスを追い出してしまったのです。
イエスを近づき難い存在とし、人類の手の届かぬところに置いてしまったのです。神の座にまつり上げてしまったのです。単純な真理を寓話と神話を土台とした教義の中に混ぜ合わせてしまい、イエスを手の届かぬ存在としてしまったのです。
今なおイエスは人類のために働いておられます。それだけのことです。それを人間が(神学や儀式をこしらえて)難しく複雑にしてしまったのです。しかし今こうして同じ真理を説く私たちのことを天使を装った悪の勢力でありサタンの声であり魔王のそそのかしであると決めつけております。
しかし、すでにキリスト教の時代は過ぎました。人類を完全に失望させました。人生に疲れ、絶望の淵にいる地上世界に役立つものを何一つ持ち合わせていません」
シルバーバーチによると、イエスは年二回、イースターとクリスマスに行われる指導霊ばかりの会議を主宰しているようである。その時期には交霊会も二、三週間にわたって休暇となる。時おりその前後の交霊会で会議の様子を説明してくれることがある。次に紹介するのは休暇に入る前の最後の交霊会での霊言である。
「この機会は私にとって何よりの楽しみであり、心待ちにしているものです。この時の私は、わずかな期間ですが、本来の自分に立ち帰り、本来の霊的遺産の味を噛みしめ、霊界の古き知己と交わり、永年の向上と進化の末に獲得した霊的洞察力によって実在を認識することのできる界層での生命の実感を味わうことができます。
自分だけ味わってあなた方に味わわせてあげないというのではありません。味わわせてあげたくても、物質界に生きておられるあなた方、感覚が五つに制限され、肉体という牢獄に閉じ込められて、そこから解放された時の無上のよろこびをご存じないあなた方、
たった五本の鉄格子の間から人生をのぞいておられるあなた方には、本当の生命の何たるかを理解することはできないのです。霊が肉体から解放されて本来の自分に帰った時、より大きな自分、より深い自我意識に宿る神の恩寵をどれほど味わうものであるか、それはあなた方には想像できません。
これより私はその本来の自分に帰り、幾世紀にもわたる知己と交わり、私が永い間その存在を知りながら地上人類への奉仕のために喜んで犠牲にしてきた〝生命の実感〟を味わいます。
これまでに大切に仕舞ってきたものをこの機会に味わえることを私がうれしくないと言ったらウソになりましょう。ご存じのとおり、この機会は私にとって数あるフェスティバル(うれしい催し)の中でも最大のものであり、あらゆる民族、あらゆる国家、あらゆる分野の者が大河をなして集結して一堂に会し、それまでの仕事の進歩具合を報告し合います。
その雄大にして崇高な雰囲気はとても地上の言語では表現できません。人間がインスピレーションに触れて味わう最大級の感激も、そのフェスティバルで味わう私どもの実感に較べれば、まるで無意味な、ささいな出来ごとでしかありません。
その中でも最大の感激は再びあのナザレのイエスにお会いできることです。キリスト教の説くイエスではありません。偽りに伝えられ、不当に崇められ、そして手の届かぬ神の座にまつり上げられたイエスではありません。
人類のためをのみ思う偉大な人間としてのイエスであり、その父、そしてわれわれの父でもある神のために献身する者すべてにその偉大さを分かち合うことを願っておられるイエスです」
休憩に入る直前の交霊会では、シルバーバーチがサークルのメンバーにそれまでの成果を語って協力に感謝するのが常である。
「あなた方と私たち霊団との愛の親密度が年とともに深まるにつれて私は、それがほかならぬ大霊の愛のたまものであると感謝していることを知っていただきたいと思います。すなわち大霊の許しがあったればこそ私はこうして地上の方々のために献身できるのであり、たった週に一度あなた方とお会いし、
それも、私の姿をお見せすることなく、ただこうして語る声としてのみ存在を認識していただいているに過ぎないにもかかわらず、私を信じ、人生のすべてを委ねるまでに私を敬愛して下さる方々の愛を一身に受けることができるのも、大霊のお力があればこそだからです。
そのあなた方からの愛と信頼を私はこの上なく誇りに思います。あなた方の心の中に湧き出る私への熱烈な情愛───私にはそれがひしひしと感じ取れます───を傷つけるようなことだけは絶対に口にすまい、絶対に行うまい、といつも誓っております。
私たちのそうした努力が大きな実りを生んでいることが私はうれしいのです。私たちのささやかな仕事によって多くの同胞が真理の光を見出していることを知って私はうれしいのです。無知を打ち負かし迷信を退却せしめることができたことが私はうれしいのです。
真理が前進していること、そしてその先頭に立っているのがほかならぬ私たちであることがうれしいのです。絶え間なくしかけてきた大きな闘いにおいてあなた方が堅忍不抜の心を失わず挫折することがなかったことをうれしく思います。
役割を忠実に果たされ、あなた方に託された大きな信頼を裏切ることがなかったことをうれしく思います。私の使命があなた方の努力の中に反映して成就されていくのを謙虚な目で確かめているからこそ、私はあなた方のその献身をうれしく思うのです」
このあと、いつもの慣例に従ってメンバーの一人ひとりに個人的なメッセージを送り、そのあとこう述べて別れを告げた。
「さて、別れを惜しむ重苦しい気持ちの中にも、再びお会いできる日を心待ちにしつつ、私はみなさんのもとを去ります。これより私は気分一新のために霊的エネルギーの泉へと赴きます。高遠の世界からのインスピレーションを求めに赴きます。
そこで生命力を充満させてから再び一層の献身と、神の無限の恩寵の一層の顕現のために、この地上へ戻ってまいります。あなた方の情愛、今ひしひしと感じる私への餞(はなむけ)の気持ちをいただいて、私はこれより旅立ちます。そうして再び戻って来るその日を楽しみにいたしております。どうか常に希望と勇気を失わないでいただきたい。
冬の雪は絶望をもたらしますが、再び春がめぐってくれば大自然は装いを新たにしてほほ笑みかけてくれます。希望に胸をふくらませ、勇気を持って下さい。いかに暗い夜にも必ず登りゆく太陽の到来を告げる夜明けが訪れるものです。
では、これにてお別れします。神は常にあなた方を祝福し、その無限の愛がふんだんにもたらされております。神の霊があなた方すべての人々の霊に行きわたり、日々の生活の中に誇らしく輝いております。
これより地上の暗闇をあとにして高き世界の光明を迎えに参ります。そしてお別れに際しての私の言葉は、再び訪れる時の挨拶の言葉と同じです───神の祝福の多からんことを」
こうして地上を去って霊界での大集会に列席したあと、再び戻ってきたシルバーバーチはこう述べた。
「その会合において私はかつての私の栄光の幾つかを再び味わってまいりました。地上世界の改善と進歩のために奮闘している同志たち、人類の福祉のために必要な改革の促進に情熱を傾ける同志たちによる会議に私も参加を許されました。
これまでの成果がこと細かに検討され、どこまで成功しどの点において失敗しているかが明らかにされました。そこで新たに計画が立て直され、これから先の仕事───地上人類の進化の現段階において必要な真理を普及させる上で為さねばならない仕事のプログラムが組まれました。
地上世界のために献身している大勢の人々───死によって博愛心を失うことのなかった人々ともお会いしました。そして、ちょっぴり私ごとを言わせていただけば───こんなことは滅多にないのですが───過去数か月間においてささやかながら私が成し遂げたことに対してお褒めの言葉を頂戴いたしました。
もとより私はお褒めにあずかる資格はないと思っております。私は単なる代弁者にすぎないからです。私を派遣した高級霊団のメッセージを代弁したにすぎず、それをあなた方が広めてくださったのです。
ともあれ、こうして私たちの説く真理が人生に迷っている人々、心は重く悲しみに満ち、目に涙をためた大勢の人々に知識と慰めと激励をもたらしていることは確かです」
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