序文 ハンネン・スワッファー
われわれがシルバーバーチと呼んでいる霊は実はレッド・インディアンではない。いったい誰なのか、今もって分からない。分かっているのは、その霊は大変な高級界に所属していて、その次元からは直接地上界と接触できないために、かつて地上でレッド・インディアンだった霊の霊的身体を中継してわれわれに語りかけている、ということだけである。
いずれにせよ、その霊が“ハンネン・スワッファー・ホームサークル”と呼称している交霊会の指導霊である。その霊が最近こんなことを言った。
「いつの日か私の(地上時代の)本名を明かす日も来ることでしょうが、私は仰々しい名前などを使用せずに地上の皆さんの愛と献身とを獲得し、私の説く中身の真実性によって確かに神の使徒であることを立証すべく、こうしてインディアンに身をやつさねばならなかったのです。それが神の御心なのです」
もっとも、一度だけ、シルバーバーチがその本名をもう少しで口にしそうになったことがあった。第1章の冒頭に出ている、自分が使命を仰せつかってそれを承知するに至る場面でのことだった。
ところで、私とシルバーバーチとの出会いは、一九二四年にスピリチュアリズムの真実性を確信して間もない頃のことだった。以来私は、毎週一回一時間あまりシルバーバーチの教えに耳を傾け、助言をいただき、いつしかその霊を地上のいかなる人物よりも敬愛するようになった。
シルバーバーチの地上への最初の働きかけは普通より少し変わっていた。スピリチュアリズムを勉強中の十八歳の無神論者が、ある日ロンドンの貧民街で行われていた交霊会にひやかし半分の気持で出席した。そして霊媒が次々といろんな言語でしゃべるのを聞いて、思わず吹き出してしまった。ところがその中の一人の霊が「そのうちあなたも同じようなことをするようになりますよ」と諌(いさ)めるように言った。
その日はバカバカしいという気持で帰ったが、翌週、再び同じ交霊会に出席したら、途中でうっかり居眠りをしてしまった。目覚めると慌てて非礼を詫びたが、すぐ隣に座っていた人が「今あなたは入神しておられたのですよ」と言ってから、こう続けた。
「入神中にあなたの指導霊が名前を名乗ってから、今日までずっとあなたを指導してきて、間もなくスピリチュアリストの集会で講演するようになると言っておられましたよ」
これを聞いてその青年はまた笑い飛ばしたが、それがその後間もなく現実となってしまった。
当初シルバーバーチは多くを語ることができず、それもひどいアクセントの英語だった。それが年をへるにつれて、語る回数が増えたことも手伝って、英語が飛躍的に上達し、今日ではその素朴で流麗な英語は、私がこれまで聞いたいかなる演説家もその右に出る者はいないほどである。
ところで、霊媒のバーバネルが本当に入神していることをどうやって確認するのか、という質問をよく受けるが、実はシルバーバーチがわれわれ列席者に、霊媒の手にピンを刺してみるように言ったことが一度ならずあった。恐る恐るそっと刺すと、思い切って深く刺しなさいと言う。すると当然、血が流れ出る。が、入神から覚めたバーバネルに聞いても全く記憶がないし、その傷跡も見当たらなかった。
もう一つよく受ける質問は霊媒の潜在意識の仕業でないことをどうやって見分けるのかということであるが、実はシルバーバーチとバーバネルとの間には思想的に完全に対立するものが幾つかあることが、そのよい証拠と言えよう。例えばシルバーバーチは再生説を説くが、バーバネルは通常意識の時は再生は絶対にないと主張する。そのくせ入神すると再生説を説く。
些細なことだが、もう一つの興味深い事実を紹介すると、シルバーバーチの霊言が《サイキック・ニューズ》紙に掲載されることになって速記録が取られることになるまでのことであるが、バーバネルがベッドに入ると、その日の交霊会で自分が入神中にしゃべったことが霊耳に聞こえてくるのだった。
これには訳がある。バーバネルはもともと入神霊媒となるのが嫌だったのであるが、自分がしゃべったことを後で聞かせてくれるのならという条件をシルバーバーチとの間で取りつけていたのである。速記録が取られるようになると、それきりそういう現象は止まった。
翌日その速記録が記事となったのを読んでバーバネルは、毎度のごとくその文章の美しさに驚く―自分の口から出た言葉なのに。
シルバーバーチは教えを説くことに専念しており、病気治療などは行わない。また心霊研究家が求めるような、証拠を意図したメッセージも滅多に持ち出さない。誠に申し訳ないが自分の使命は霊的教訓を説くことに限られているので、と言ってわれわれ人間側の要求の全てに応じられない理由を説明する。
最近私は各界の著名人を交霊会に招待している。牧師、ジャーナリスト、その他あらゆる分野から招いているが、シルバーバーチという人物にケチをつける者は一人としていない。その中の一人で若い牧師を招いた時、私は前もって「あなたの考えうる限りの難解な質問を用意していらっしゃい」と言っておいた。その牧師は日頃仲間の牧師からさんざん悪口を聞かされている“交霊会”というものに出席するというので、この機会に思い切ってその“霊”とやらをやり込めてやろうと意気込んで来たらしいが、シルバーバーチが例によって“摂理”というものを易しい言葉で説明すると、若者はそれきり黙り込んでしまった。難解きわまる神学がいとも簡単に解きほぐされてしまったからである。
さて、そのシルバーバーチを支配霊とする私のホームサークルは毎週金曜日の夜に開かれる。その霊言は定期的に《サイキック・ニューズ》紙に掲載される。その版権が私のホームサークルに所属するのは、サークルとしての私用を目的としてのことではなく、これを世界中に広めるためである。今ではシルバーバーチは地上のいかなる説教者よりも多くのファンをもつに至っている。あらゆる国、あらゆる民族、あらゆる肌色の人種の人々に敬愛されている。
しかし実を言うと、いったん活字になってしまうと、シルバーバーチの言葉も、その崇高さ、その温かさ、その威厳に満ちた雰囲気の片鱗しか伝えることが出来ない。交霊会の出席者は思わず感涙にむせぶことすらあるのである。シルバーバーチがどんなに謙虚にしゃべっても、高貴にして偉大なる霊の前にいることをひしひしと感じる。決して人を諌めない。そして絶対に人の悪口を言わない。
キリスト教では“ナザレのイエス”なる人物についてよく語るが、実は本当のことはほとんど知らずに語っているし、そもそもイエスという人物が実在した証拠は何一つ持ち合わせていないのである。
そのイエスをシルバーバーチは、彼が連絡を取り合っている霊団の中でも最高の霊格を持つ存在と位置づけている。長年にわたってシルバーバーチと親しく交わってきて、私はその誠実な人柄に全幅の信頼を置いているので、われわれはシルバーバーチの言う通り、新約聖書の主役であるイエス・キリストは地上で開始した霊的革新の使命に今なお携わっていると確信している。
そう信じて初めて(マタイ伝の最後に出ている)「見よ! 私はこの世の終わりまで常にあなたたちと共にいる」というイエスの言葉の真実の意味が理解できる。今の教会ではこの説明は出来ない。
これから紹介するシルバーバーチの教えを読まれるに当たってあらかじめ知っておいていただきたいのは、その全てが真っ暗闇の中で語られ、それがベテランの(盲人用の)点字速記者によって書き留められたという事実である。
元来じっくり語りかけるシルバーバーチも時には早口になることもあり、そんな時は付いて行くのは大変だったろうと察せられるが、あとで一語たりとも訂正する必要はなかった。もとよりそれはシルバーバーチの英語が完ぺきだったことにもよるであろう。が、通常の英語に直した時に要求される作業は句読点を書き込むだけで、しかもその位置はいつも、極めて自然に決まるような文章の流れになっていたというから驚きである。
シルバーバーチの哲学の基本的概念は、いわゆる汎神論である。すなわち神は大自然そのものに内在し、不変の法則として全てを支配している。要するに神とはその法則(摂理)なのである。それをシルバーバーチは「あなた方は大霊の中に存在し、また大霊はあなた方の中に存在します」と表現する。と言うことは、われわれ人間も潜在的にはミニチュアの神であり、絶対的創造原理の一部としての不可欠の存在を有しているということになる。
もっともシルバーバーチは理屈をこね回すだけの議論には耳を貸さない。人間は何らかの仕事をするためにこの地上へ来ているのだということを繰り返し説き、宗教とは「人のために自分を役立てること」と単純明快に定義する。そして、お粗末とは言えわれわれは、今この地上にあって、戦争に終止符をうち、飢餓を食い止め、神の恩寵が世界中にふんだんに行きわたる時代を招来するための、霊の道具であることを力説する。
「われわれが忠誠を捧げるのは一つの教義でもなく、一冊の書物でもなく、一個の教会でもなく、生命の大霊とその永遠不変の摂理です」―これがシルバーバーチの終始一貫して変わらぬ基本姿勢である。
それはサークルのメンバーの構成からも窺われる。当初のサークルは六人で構成されていたが、その中には三人のユダヤ人がいた。スピリチュアリズムでは民族の違いも宗教の違いにも頓着しないことの表れである。残りの三人も懐疑論者で、うち一人はメソジストの牧師だった人物で、スピリチュアリズムの真理を知ってメソジストの教義が信じられなくなり、サークルのメンバーになる前に脱会している。
シルバーバーチは、気分転換の意図もあってか、時おり自分以外の人物にも語らせている。《デイリー・メール》の創刊者ノースクリッフ、英国の小説家ゴールズワージー、同じく英国の小説家ホール・ケイン、政治家だったギルバート・パーカー、米国のジャーナリストだったホーラス・グリーリー、英国の聖職者ディック・シェパード、かの有名な大統領リンカーン、その他、サークルのメンバーの親しい知人などが声で出現している。
長年のメンバーである私は、シルバーバーチが前回での約束を忘れたという事実をついぞ知らない。そして、大切な真理を平易にそして人生に役立つ形で説くという本来の使命から一瞬たりとも逸脱したことがない。
Preface Hannen Swaffer
The spirit we call Silver Birch is not really a Red Indian. I still don't know who it is. We know that the spirit belongs to a very high class world and cannot directly contact the earthly world from that dimension, so we relay the spiritual body of the spirit that was once a Red Indian on earth. It's just that he's talking to.
In any case, the spirit is the guiding spirit of the séance, which is called the "Hannen Swaffer Home Circle". The spirit recently said something like this.
"One day, I will reveal my real name (in the earthly age), but I will acquire the love and dedication of everyone on earth without using arrogant names, etc., and what I preach In order to prove by truth that he was an apostle of God, he had to deal with the Indians in this way. That is God's will. "
However, only once, Silver Birch was about to say his real name. It was at the beginning of Chapter 1 that I was asked to do my mission and realized it.
By the way, I first met Silver Birch in 1924, shortly after I was convinced of the truth of spiritualism. Since then, I have listened to the teachings of Silver Birch once a week for about an hour, received advice, and eventually began to admire the spirit more than anyone on earth.
Silver Birch's first approach to the ground was a little unusual. An eighteen-year-old atheist studying spiritualism attended a séance in a shantytown in London one day with half the feeling. And when I heard the mediums speaking in various languages one after another, I suddenly blew out. However, one of the spirits said, "Someday you will do the same thing," he said.
I returned with the feeling that it was ridiculous that day, but when I attended the same séance again the next week, I inadvertently fell asleep on the way. He hurriedly apologized for his disrespect when he awoke, but continued after the person sitting next to him said, "You are now in God."
"Since your spirit guide gave your name during the gods, you've been guiding you to this day, and you've said that you'll soon be speaking at a spiritual rally."
Upon hearing this, the young man laughed again, but soon after that it became a reality.
Initially Silver Birch couldn't say much, and it was a terrible accent in English. As it got older, I spoke more often, and my English improved dramatically, and today its simple and elegant English is to the right of any orator I've ever heard. There is no one.
By the way, I'm often asked how to confirm that Barbanell, the medium, is really in the gods, but in fact Silver Birch once told us attendees to put a pin in the hand of the medium. There was no way. When I stab it gently, I tell him to take the plunge and stab it deeply. Then, of course, blood flows out. However, when I asked Barbanell who woke up from the god, I had no memory at all, and I could not find any scars.
Another frequently asked question is how to tell that it is not the work of the subconscious mind of the medium, but in fact there are some completely ideological conflicts between Silver Birch and Barbanell. Good proof. For example, Silver Birch preaches the theory of rebirth, but Barbanell argues that there is absolutely no rebirth in normal consciousness. He preaches the theory of rebirth when he enters the habit.
It's trivial, but another interesting fact is that Barbanell's ghostly words will be published in the Psychic News newspaper, which will be a quick record. When he went to bed, he heard that he had spoken during the gods at the séance that day.
There is a reason for this. Barbanell originally didn't want to be a medium for gods, but he had a condition with Silver Birch that he would let him know what he was saying later. When the quick record was taken, such a phenomenon stopped.
The next day, when Barbanell read the article about the quick record, he was always amazed at the beauty of the text-even though it came from his own mouth.
Silver Birch is dedicated to preaching and does not treat illness. He also rarely brings up evidence-intended messages, as he seeks from psychic researchers. He regrets that his mission is limited to preaching spiritual lessons, and explains why we cannot meet all of our human demands.
Recently I have invited celebrities from various fields to the séance. Invited from pastors, journalists, and all other disciplines, no one is stingy on a person named Silver Birch. When I invited a young pastor to be one of them, I said in advance, "Please prepare as many esoteric questions as you can think of." The pastor is said to attend a "séance" that is often heard badly by fellow pastors, so he seems to have taken the opportunity to take the opportunity to take the plunge and try to get rid of that "spirit". When Birch explained "providence" in simple terms as usual, the young man was silent. This is because the difficult theology has been unraveled very easily.
Now, my home circle, with the Silver Birch as the ruler, is held every Friday night. The spiritual words are regularly published in the Psychic News newspaper. The copyright belongs to my home circle, not for private use as a circle, but to spread it around the world. Silver Birch now has more fans than any preacher on earth. He is admired by people of all nations, all races and all flesh tones.
But to tell the truth, once in print, Silver Birch's words can only convey a glimpse of its sublime, its warmth, and its dignified atmosphere. The attendees of the séance may even be overwhelmed by tears. No matter how humble the Silver Birch speaks, he feels that he is in front of a noble and great spirit. He never gives up. And he never speaks badly about people.
In Christianity, we often talk about the person "Jesus of Nazareth," but in reality he speaks with little knowledge of the truth, and he has no evidence of the existence of the person Jesus in the first place.
Silver Birch positions Jesus as the highest spiritual being in the spirit group with which he is in contact. Having been intimately associated with Silver Birch for many years, I have full confidence in that sincere personality, and as Silver Birch says, Jesus Christ, the protagonist of the New Testament, is a spiritual beginning on earth. I am confident that I am still involved in the mission of innovation.
Only after believing that can you understand the true meaning of Jesus' words, "Look! I will always be with you until the end of the world" (at the end of Matthew's biography). This explanation cannot be given in the present church.
Before reading the lessons of Silver Birch, I would like you to know in advance that everything was told in total darkness and was written down by a veteran (blind) Braille shorthand. Is.
Silver Birch, who originally spoke slowly, was sometimes quick, and it seems that it would have been difficult to keep up with him, but he didn't have to correct a single word later. Of course, it may be due to the perfect English of Silver Birch. However, I was surprised that the only work required when converting to normal English was to write punctuation marks, and the position was always a very natural flow of sentences.
The basic concept of Silver Birch's philosophy is the so-called pantheism. That is, God is inherent in nature itself and governs everything as an immutable law. In short, God is the law (providence). Silver Birch describes it as "you are in the ghost, and the ghost is in you." This means that we humans are also potentially miniature gods and have an indispensable existence as part of the Absolute Creation Principle.
However, Silver Birch does not listen to the argument that only twists the theory. He reiterates that humans are coming to this earth to do some work, and religion is simply and clearly defined as "helping oneself for others." And, albeit poorly, we are now on earth, a spiritual tool to end war, stop hunger, and bring about an era in which God's grace is abundant throughout the world. He emphasizes.
"It is not a doctrine, a book, a church, but the Spirit of Life and its eternal providence that we offer loyalty."-This is consistently the Silver Birch. This is the basic posture.
It can be seen from the composition of the members of the circle. The original circle consisted of six people, including three Jews. In spiritualism, it is a sign that we do not care about ethnic differences or religious differences. The remaining three were skeptics, one of whom was a Methodist minister, who knew the truth of spiritualism and became unbelievable in Methodist doctrine and left before becoming a member of the circle.
Silver Birch sometimes lets people other than himself speak, perhaps because of his refreshing intentions. North Cliff, founder of Daily Mail, British novelist Goldsworthy, British novelist Hall Caine, politician Gilbert Parker, American journalist Horas Greeley, British priest Dick Shepherd, the famous President Lincoln, and other close acquaintances of members of the circle are appearing in voice.
As a longtime member, I'm unaware of the fact that Silver Birch has forgotten his last promise. And he has never deviated from his original mission of preaching important truths in a simple and useful way in life.
Silver Birch
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1章 シルバーバーチの使命
Wednesday, October 6, 2021
シアトルの秋 シルバーバーチは語る Silver Birch talks
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