Monday, December 29, 2025

シアトルの冬 ベールの彼方の生活(二) G・Vオーエン

 シアトルの冬 ベールの彼方の生活(二) G・Vオーエン

七章  天界の高地


3 霊界の情報処理センター     

一九一三年十二月二三日 火曜日

 神に仕える仕事において人間と天使とが協力し合っている事実は聖書に明確に記されているにも拘らず、人間はその真実性が容易に信じられない。その原因は人間が地上的なものに心を奪われ、その由って来たる起原に心を向けようとしないからである。

物質に直接作用している物理的エネルギーのことを言っているのではない。

ベールの彼方においてあたかも陶芸家が粘土を用いて陶器を拵えるように、そのエネルギーを操って造化に携わっている存在のことである。それについては貴殿もすでにある程度の知識を授かっているが、今夜はベールのこちら側から見たその実際を伝えてみようと思う。

 こちらのどの界においても、全ての者が一様に足並みそろえて向上するとはかぎらない。ある者は速く、ある者は遅い。前回の兄弟などはこの十界においては最も遅い部類に入る。ではこれより、それとは対照的に格別の進化を遂げた例を紹介しよう。

 その兄と妹の住む村を離れてさらに旅を続ける途中で、私は他の居住地を数多く訪ねてまわった。その一つに次の第十一界が始まる区域へ連なる山の中に位置しているのがあった。私が守護霊と対面した場所とは異なる。高さは同じであるが、距離的にかなり離れた位置にある。

連山の中に開けた台地へ向けて曲がりくねった小道を行ったのであるが、登り始めた頃から緑色の草の鮮やかさと花々の大きさと豊富さとか目についた。

紫色の花は影に包まれた森の中を通るビロードのような道のまわりには小鳥のさえずりも聞こえる。また多くの妖精たちが明るい笑顔で、あるいは戯れあるいは仕事に勤しんでおり、私の挨拶に気持ちよく応えてくれた。

 そのうち景色が変わり始めた。樹木が彫刻のようなどっしりとした姿になり、数も少なく葉の繁りも薄くなっていった。花と緑の木陰に囲まれた空地に代わって今度は円柱とアーチで飾られた堂々たる聖堂が姿を現わした。

光と影の織りなす美は相変わらず素晴らしかったが、その雰囲気がただの木蔭とは異なり聖域のそれであった。通る道の両側の大部分は並木である。

その並木にも下層界のそれとは異なり、瞑想の雰囲気と遥かに強力な霊力が感じられる。

そして又、登りがけに見かけた妖精とは威厳と聖純さにおいて勝る妖精たちの姿を見かけた。さらに頂上へ近づくと景色が一段と畏敬の念を誘うものへと変わっていった。

それまでの田園風の景色が消え、白と黄金と赤の光に輝く頂上が見えてきた。それは上層界から降下してきた神霊がその台地でそれぞれの使命に勤しんでいることを物語っていた。

 かくて目的地に辿り着いた。そこの様子を可能な限り叙述してみよう。目の前に平坦な土地が開けている。一マイルの四方もあろうかと思われる広大な土地で、一面に大理石(アラバスター)が敷かれ、それが炎の色に輝いている。

その様子はあたかも炎の土地にガラスの床が敷かれ、その上で炎の輝きが遊び戯れ、さらにガラスを通して何百ヤードも上空を炎の色に染めている感じである。むろん炎そのものが存在しているのではない。私の目にそのように映じるのである。

 その中に高く聳える一個の楼閣がある。側面が十個あり、その各々が他と異なる色彩と構造をしている。数多くの階があり、その光輝を発する先端は周囲の山頂──遠いのもあれば近いのもある──の上空へ届けられる光を捉えることができる。

それほど高く、まさに天界の山脈に譬える望楼の如き存在である。その建物が平坦地の八割ほどを占め、各々の側面に玄関(ポーチ)がある。

と言うことは十個の入口が付いているということである。まさに第十界の中で最も高い地域の物見の塔である。が、ただ遠くを望むためのものではない。

 実は十個の側面はその界に至るまでの十個の界と連絡し、係の者が各界の領主と絶え間なく交信を交えているのである。莫大な量の用件が各領主との間で絶え間なく往き来している。資料の全てがその建物に集められ統一的に整理される。

強いて地上の名称を求めれば〝情報処理センター〟とでも呼べばよかろうか。地上圏と接する第一界に始まり、第二界、第三界と広がり、ついには第十界まで至る途方もなく広大な領域内の事情が細大漏らさず集められるのである。

 当然のことながらその仕事に携わる霊は極めて高い霊格と叡智を具える必要があり、事実その通りであった。この界の一般の住民とは異なっていた。常に愛と親切心に溢れる洗練された身のこなしをもって接し、同胞を援助し、喜ばせることだけを望んでいる。が、

その態度には堂々とした絶対的な冷静さが窺われ、接触している界から届けられる如何なる情報に対しても、いささかの動揺も見せない。すべての報告、情報、問題解決の要請、あるいは援助の要請も完璧な冷静さをもって受け止める。

普段とは桁外れの大問題が生じても全く動じることなく、それに対処するだけの力と誤ることのない叡智に自信を持ってその処理に当たる。

 私は第六界と接触している側面の玄関内に腰かけ、その界の過去の出来ごとと、その出来ごとの処理の記録を調べていた。

すると肩越しに静かな声で「ザブディエル殿、もしその記録書で満足できなければどうぞ中へお入りになって吾々のすることをご覧になられたら如何ですか」という囁(ささや)きが聞こえた。振り向くと、物静かな美しいお顔をされた方が見つめておられた。私は肯(うなず)いてその案内に応えた。

 中へ入ると室内は三角形をしており、天井が高い。それが次の界の床(フロア)である。壁のところまで行ってみると床と壁とは直角になっている。

案内の方が私にそこで立ったまま耳を傾けているようにと言う。すると間もなく色々な声が聞こえてきたが、その言葉が逐一聞き分けられるほどであった。

説明によると、今の声は五つ上の階の部屋で処理されたものが次々と階下へ向けて伝達され、吾々のいる部屋を通過して地下まで届けられたものであるという。その地下にも幾つかの部屋がある。私がその原因を聞くとこう説明された。

その建物の屋上に全情報を受信する係の者がいて、彼らがまず自分たちに必要なものだけを取り出して残りをすぐ下の階へ送る。そこでまた同じようにその階で必要なものだけを取って残りを下の階へ送る。

この過程が次々と下の階へ向けて続けられ、私のいる地上の第一階に至る。そこで同じ処理をして最後に地下へ送られる。各階には夥しい数の従業員が休みなく、しかも慌てることなく、手際よく作業に当たっている。

 さて貴殿はこれをさぞかし奇妙に思うことであろう。が実際はもっともっと不思議なものであった。例えば私が言葉を聞いたという時、それは事実の半分しか述べていない。実際はその言葉が目に見えるように聞こえたのである。

地上の言語でどう説明したものであろうか。こうでも述べておこう。例の壁(各種の貴金属と宝石をあしらっており、その一つ一つが地上でいう電気に相当するものによって活性化されている)を見つめていると、どこか遠くで発せられた言葉が目に見えるように私の脳に感応し、それを重要と感じた時は聴覚を通じて聞こえてくる。

この要領でその言葉を発した者の声の音質を内的意識で感得し、さらにその人の表情、姿、態度、霊格の程度、携わる仕事、その他、伝えられたメッセージの意味を正確に理解する上で助けとなるこまごましたものを感識する。

 霊界におけるこうした情報の伝達と受信の正確度は極めて高く、特にこの建物においては私の知る限り最高に完璧である。そこで私が見たものや聞いたことを言語で伝えるのはとても無理である。

なぜなら、全ての情報は地上からこの十界に至るまでの途中の全界層の環境条件の中を通過して到達しており、従って一段と複雑さを増しており、とても私には解析できないのである。そこで案内の方が次の如く簡略に説明して下さった。

 例えば、あるとき第三界で進行中の建造の仕事を完成させるために第六界から援助の一行が派遣された。

と言うのは、その設計を担当したのが霊格の高い人たちであったために、建造すべき装置にその界の要素ではうまく作れないものが含まれていたのである。

これを判り易く説明すれば、例えばもし地上の人間が霊界のエーテル質を物質へ転換する装置を建造するとなったら、一体どうするかを考えてみるとよい。

地上にはエーテル質を保管するほど精妙な物質は見当たらないであろう。エーテル質はいわゆる物質と呼ぶ要素の中に含有されている如何なるエネルギーにも勝る強力かつ驚異的エネルギーだからである。

 第三界においても幾分これと似通った問題が生じ、如何にすればその装置の機能を最大限に発揮させるかについての助言を必要としたのであった。これなどは比較的解決の容易な部類に入る。

 さて、これ以上のことは又の機会に述べるとしよう。貴殿はエネルギーを使い果たしたようである。私の思う通りを表現する用語が見当たらぬようになってきた。

 貴殿の生活と仕事に祝福を。確信と勇気をもって邁進されよ。  ♰

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