The Life Beyond the Veil Vol. II The Highlands of Heaven by G. V. Owen
六章 常夏の楽園
1 霊界の高等学院
一九一三年十二月九日 火曜日
私の望み通り今宵も要請に応じてくれた。ささやかではあるが、これより貴殿を始めとして他の多くの者にとって有益と思えるものを述べる私の努力を、貴殿は十分に受け止め得るものと信ずる。たとえ貴殿は知らなくても、貴殿にそれを可能ならしめる霊力が吾々にあり、それを利用して思念を貴殿の前に順序よく披瀝して行く。
いたずらに自分の無力を意識して挫けることになってはならない。貴殿にとってこれ以上は無理と思える段階に至れば、私の方からそれを指摘しよう。そして吾々も暫時(ざんじ)ノートを閉じて他の仕事に関わるとしよう。
では今夜も貴殿の精神をお借りして引き続き第十界の生活について今少し述べようと思う。ただ、いつものように吾々の界より下層の世界の事情によってある程度叙述の方法に束縛が加えられ、さらには折角の映像も所詮は地上の言語と比喩の範囲に狭(せば)められてしまうことを銘記されたい。
それは己むを得ないことなのである。それは恰も一リットルの器に一〇リットルの水は入らず、鉛の小箱に光を閉じ込めることが出来ぬのと同じ道理なのである。
前回のべた大聖堂は礼拝のためのみではない。学習のためにも使用されることがある。ここはこの界の高等学院であり、下級クラスを全て終了した者のみが最後の仕上げの学習を行う。他にもこの界域の各所にさまざまな種類の学校や研究所があり、それぞれに独自の知識を教え、数こそ少ないがその幾つかを総合的に教える学校もある。
この都市にはそれが三つある。そこへは〝地方校〟とでも呼ぶべき学校での教育を終えた者が入学し、各学校で学んだ知識の相対的価値を学び、それを総合的に理解していく。
この組織は全世界を通じて一貫しており、界を上がる毎に高等となって行く。つまり低級界より上級界へ向けて段階的に進級していく組織になっており、一つ進級することはそれだけ霊力が増し、且つその恩恵に浴することが出来るようになったことを意味する。
教育を担当する者はその大部分が一つ上の界の霊格を具えた者で、目標を達成すれば本来の界へ戻り、教えを受けた者がそのあとを継ぐ。その間も何度となく本来の上級界へ戻っては霊力を補給する。
かくて彼らは霊格の低い者には耐え難い栄光に耐えるだけの霊力を備えるのである。
それとは別に、旧交を温めるために高級界の霊が低級界へ訪れることもよくあることである。その際、低級界の環境条件に合わせて程度を下げなければならないが、それを不快に思う者はまずいない。そうしなければ折角の勇気づけの愛の言葉も伝えられないからである。
そうした界より地上界へ降りて人間と交信する際にも、同じく人間界の条件に合わさねばならない。大なり小なりそうしなければならない。天界における上層界と下層界との関係にも同じ原理が支配しているのである。
が同じ地上の人間でも、貴殿の如く交信の容易な者もあれば困難なるものもあり、それが霊性の発達程度に左右されているのであるが、その点も霊界においても同じことが言える。
例えば第三界の住民の中には自分の界の上に第四界、第五界、あるいはもっと上の界が存在することを自覚している者もおれば、自覚しない者もいる。それは霊覚の発達程度による。自覚しない者に上級界の者がその姿を見せ言葉を聞かせんとすれば、出来るだけ完璧にその界の環境に合わさねばならない。現に彼らはよくそれを行っている。
もとより、以上は概略を述べたに過ぎない。がこれで、一見したところ複雑に思えるものも実際には秩序ある配慮が為されていることが判るであろう。
地上の聖者と他界した高級霊との交わりを支配する原理は霊界においても同じであり、さらに上級界へ行っても同じである。
故に第十界の吾々と、更に上層界の神霊との交わりの様子を想像したければ、その原理に基いて推理すればよいのであり、地上に置いて肉体をまとっている貴殿にもそれなりの正しい認識が得られるであろう。
──判りました。前回の話に出た第十界の都市と田園風景をもう少し説明していただけませんか。
よかろう。だがその前に〝第十界〟という呼び方について一言述べておこう。吾々がそのように呼ぶのは便宜上のことであって、実際にはいずれの界も他の界と重なり合っている。
ただ第十界には自ずからその界だけの色濃い要素があり、それをもって〝第十界〟と呼んでいるまでで、他の界と判然と区切られているのではない。天界の全界層が一体となって融合しているのである。それ故にこそ上の界へ行きたいと切に望めば、いかなる霊にも叶えられるのである。
同時に、例えば第七界まで進化した者は、それまで辿って来た六つの界層へは自由に行き来する要領を心得ている。かくて上層界から引きも切らず高級霊が降りてくる一方で、その界の者もまた下層界へいつでも降りて行くことが出来るのであり、その度に目標とする界層の条件に合わせることになる。
又その界におりながら自己の霊力を下層界へ向けて送り届けることも出来る。
これは吾々も間断なく行っていることであって、すでに連絡の取れた地上の人間へ向けて支配力と援助とを放射している。貴殿を援助するのに必ずしも第十界を離れるわけではない。もっとも、必要とあらば離れることもある。
──今はどこにいらっしゃいますか。第十界ですか、それともこの地上ですか。
今は貴殿のすぐ近くから呼びかけている。私にとってはレンガやモルタルは意に介さないのであるが、貴殿の肉体的条件と、貴殿の方から私の方へ歩み寄る能力が欠けているために、どうしても私の方から近づくほかはないのである。
そこでこうして貴殿のすぐ側まで近づき、声の届く距離に立つことになる。こうでもしなければ私の思念を望みどおりには綴ってもらえないであろう。
では、私の界の風景についての問いに答えるとしよう。最初に述べた事情を念頭に置いて聞いてもらいたい。では述べるとしよう。
都市は山の麓に広がっている。城壁と湖の間には多くの豪邸が立ち並び、その敷地は左右に広がり、殆どが湖のすぐ近くまで広がっている。その湖を舟で一直線に進み対岸へ上がると、そこには樹木が生い繁り、その多くはこの界にしか見られないものである。
その森にも幾筋かの小道があり、すぐ目の前の山道を辿って奥へ入っていくと空地に出る。
その空地に彫像が立っている。女性の像で天井を見上げて立っている。両手を両脇へ下げ、飾りのない長いロープを着流している。この像は古くからそこに建てられ、幾世期にも亘って上方を見上げてきた。
が、どうやら貴殿は力を使い果たしたようだ。この話題は一応これにて打ち切り、機会があればまた改めて述べるとしよう。
その像の如く常に上方へ目を向けるがよい。その目に光の洗礼が施され、その界の栄光の幾つかを垣間みることができるであろう。 ♰
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