What's wrong with having the right knowledge but still not being able to put it into practice?
地上界は訓練学校
別の日の交霊会で〝サイキック・ニューズ〟紙のレポーターをしているクリス・ライダー氏がフィアンセと一緒に招待されていた。
まずシルバーバーチの方から歓迎の挨拶をした。
「この交霊会にお若い方をお迎えするのを私はいつも楽しみにしています。地上人生の早いうちから霊的知識と出会って、大変しあわせな方だと思うからです。
地上界が抱える問題の一つは、無意味な生活をしている人が多すぎることです。自分がどちらへ向かってるのかを知りません。自分がどこにいるのかも知りません。何のために生まれてきたのかも分からずにいます。
地上生活の何もかもが、そういう人にとって無意味に思えるのです。人生とは大きな〝?〟に過ぎません。神(ゴッド)という言葉も、それが何であるかを知らずに使っております。自我を成長させるチャンス───内在する美と威厳と気高さと壮大さと豊かさを発見させる機会をことごとく失っております。
肉体的にはちゃんと目と耳と口をそなえていても、霊的には何も見えず、何も聞こえず、何も語ることができません。
こうした人達が地上を去って私たちの世界へ来た時、意識的にも能力的にも、新しい次元への備えがまったく出来ていないために、こちらで一からやり直さないといけないのが厄介なのです。訓練学校である地上界の方がよほど学びやすいのです。
その点、あなたはすでに永遠不変の霊的真理を知り、無限の生命機構の一端を理解し、みずからもその活動に参画し、人のために役立つことをすることの大切さもご存知です。
もとよりそれは口で言うほど簡単にできることではありません。いろいろと難しいことが生じます。問題も起きます。しかし、そういうものを嫌って安楽な道を選ぶ人は、私には用はないのです。
そうした葛藤を強いられるのは、あなたの地金を試すためです。克服すべきものとして次々と困難が用意されるのです。それを一つ克服するごとに、内在する霊的能力と霊性がより大きく発現するのです。
忘れないでください。私達は地上のガンともいうべき唯物主義の勢力と、かつてない大規模な闘争を繰り広げているのです。その最前線で将軍として活躍していただく人材は、その役柄にふさわしい霊力を身につけて貰うために鍛え上げないといけません。
ですから、あなたも困難を歓迎しないといけません。地上生活で生じるいかなる困難も、背後霊団の力で克服できないものはありません。今夜この会に集まっている方々は、信じられない程の働きかけを身をもって体験しておられる方ばかりです。
その力は、あなたの意志で操ることはできません。こうあって欲しいというあなたの望み通りに従わせることはできません。命令はできないのです。
が、同時に、霊団側が一方的に命令を下すこともしません。この道の仕事はあくまでも協調です。今日ご出席のベテランのメンバーに聞いてごらんなさい。もうダメだと思った窮地、それこそ十一時五十九分になって、救いの手が差し伸べられたという経験をお持ちの方ばかりです。
いかがですか、皆さん、今私が述べたことに反論なさりたい方がいらっしゃいますか」
魂が永遠に消えない傷を負うことはない
「私はおっしゃる通りだと思います」とレギュラーの一人が言うと、シルバーバーチが続ける。
「皆さんは霊的知識という要塞をお持ちです。霊力という兵器庫が、イザという時に持久力と増援を提供してくれます。困難との闘いを前にして逃げ出すよりも、堂々と闘って敗ける方が立派です。
それによって一時的には傷つくかも知れませんが、永遠の魂にまで傷が及ぶ事は絶対にないとの自信を得るきっかけとなるでしょう。永遠なる生命は無限の可能性を提供してくれます。
毎朝の到来が素敵な機会の前触れです。霊的並びに精神的にわくわくする体験をもたらしてくれます。毎朝、新しい世界が誕生しているのです。大いなる気持ちで迎えることです。
そして一日が終わって、これから一時的にその肉体を離れる(眠る)前に、今日一日のうちに人のために役立つ機会をいただいたことを大霊に感謝すると同時に、自分の行なったことに間違いがなかったことを祈ることです。
もしも明らかに間違っていたと思われることがあれば、もう一度やり直す機会を下さるようにお願いすることです。失敗を恐れる必要はありません。転ぶということは、もう一度立ち上がることができるということです。一度も転んだことのない人は、真っすぐに立つということがどういうものかを知らない人です。
物質界も霊界も限りない可能性と素敵な褒賞と永遠に色褪せることのない富─── 一度手にしたら二度と失うことのない宝を提供してくれます。
黄金は地中から掘り出された時から輝いているわけではありません。打ち砕かれ、精錬され、不純物を取り除かれて、ようやく純金の輝きを見せるのです。立派な人材も、困難との葛藤を経てはじめて本物となるのです。
永遠不滅に真理にしがみつくことです。影がさし、太陽の光が遮られても、それは一時的に雲が通りかかったに過ぎないと思いなさい。その雲の後ろでは太陽が輝いているのです。
逆境の時にも、大霊の愛が働いているのです。人生の計画は必ずその通りに推移します。皆さんは今、わくわくするような体験をさせてくれる人生の出発点に立っていることを喜ばないといけません」
何かご質問がおありですかとシルバーバーチから言われて、〝サイキック・ニューズ〟のレポーターのクリス・ライダー氏が訊ねた。
───私は、他の多くのスピリチュアリストと同じように、普遍的な生命原理の存在と地上人生の有り方を知識としては知っているつもりです。ところが現実には、いけないと知りつつも自然の摂理に反することをやっては、痛い目にあっております。
正しい知識を手にしながら相変わらずそれが実行できないのは、どこがいけないのでしょうか。
「それはまだまだ霊性がひ弱だからです。強健でないからです。これで答えになりましたでしょうか」
───まったくそうだ思います。が、簡単なことが意外に実行できないものですね。私はまだまだです。
ところで、宇宙の摂理に従って生きる方法を同胞に教えるにはどうすればよいかという質問に対して、あなたは〝手本を示すことです〟とおっしゃいました。
私には、手本はそこらじゅうにありながら、それが無視されているように思えるのです。何か別の方法を考えるべき時期に来ているのではないかと思うのですが・・・・・・
「たとえば?」
生きざまによって手本を示す
───手本を示すこと以外に、何かもっと良い方法はないものでしょうか。
「でも、うまく行けば、これほど効果的なものはありませんよ。
よくお考えなさい。地球が生まれてからずいぶんと年月が経っています。科学者も地質学者も地球の誕生の頃のことはあまりよく知りません。それも無理はありません。百万単位の年数の差も大して問題とならない程、悠久の歴史があるのです。
言わばその地球の管理人の立場にあるのが大霊です。もちろん人間的存在ではありません。神々しい人間でもありません。私が〝愛と叡知の権化〟と呼んでいる、崇高なる力です。無限の知性であり、全知識と全真理の極致です。
あなたも、地上界についてある程度の知識をお持ちです。地上の生命活動がことごとく自然法側によって規制されていることもご存知です。結果には必ず原因があります。
自分が蒔いたタネは自分で刈り取るのです。四季は一つ一つ順序よく巡ります。地球の回転も地軸にさからうことはありません。潮は干満を繰り返し、その正確さは数式できちんと計算できるほどです。
銀河系の大星雲といえども、その中の星の一つ一つ、惑星の一つ一つ、そして星座の一つ一つが、それぞれに定められた軌道上を動いているのです。
あらゆる草木、花、果実、野菜、小鳥、人間の男女、子供の一人一人にいたるまで、不変の自然の法則によって規制され、考え得る限りの行動や変化もきちんと認知されているのです。
こうした大機構の中にあって人間は、手本によって学ぶように大霊が配慮しておられるのです。あなたは〝他にもっと良い方法はないものでしょうか〟とおっしゃいましたが、そういうものはありません」
薬物の使用は禁物
「分かりました」とクリス・ライダー氏は答え、さらに次のような質問を述べた。
───ある種の薬物を使用することで一時的に心霊能力が覚醒した状態となります。私はこのことに関心を持っています。これは将来の霊的能力の開発の新しい方法として一考の価値があると思うのですが、いかがでしょうか。
「断じて、そして真っ向から、私は薬物の使用には反対です。
心霊能力は人類に先天的に潜在しているものです。霊が使用すべき能力として用意されているのです。物質と霊とをつなぐ懸け橋であり、当然開発し発達させるべきものですが、あくまでも鍛錬と正しい心掛けと生き方の中ではぐくまれるべきものであって、
不自然な促進剤の使用によって行なうべきものではありません。一個の種子を例にとっても、それを不自然に促成栽培したらどういうことになるか、ご存知のはずです。
薬物によって幻覚症状が誘発されることがあることは事実です。それによって一時的に身体と精神と霊とのつながりが緩められるからです。しかし、そんな状態で実在を直観し次元の高い啓示に接することはできません。
さらに、それ以前の問題として、私は、たとえ健康のためであっても薬剤を使用するのは間違いであると考えます」
───おっしゃることは分かるのですが、そういう代替の手段もあってもよいのではないかと思うのです。今のお考えは古い薬物観ではないでしょうか。
「そういうご意見にも私は耳を傾けてまいりましたが、いかなる手段を講じようとも、インスタントコーヒーを入れるような調子で霊性を発現することは出来ません。霊性の伴わない能力を発揮してどうしようというのでしょう? まだ反論なさいますか」
───正直を申しますと、ここへ来た時はあくまでも自論を主張してやろうと思っておりましたが、お話を伺って我が身の浅はかさを恥じ入っております。
「恥をかかせるつもりなど毛頭ありません。私は人を傷つけたり辛い思いをさせるようなことを申し上げたくはないのですが、永遠の真理から外れるようなことを申し上げるようになった時は、私の使命から外れたことになってしまいます。
薬物中毒患者───いかなる種類のものであれ、安易な手段、手っ取り早い方法で幸せを求めようとする堕落者───を扱うのも、私たちの仕事なのです。
いけません! 幸せに近道はありません。タネ蒔きと刈り取り、原因と結果の法則が厳然と存在するのです。万一その摂理が逆転して、一瞬のうちに罪が赦されて聖人君子になれるとしたら、神の公正が愚弄されたことになります。摂理の働きは絶対なのです。
人間には三つの義務があります。自分自身への義務、生活を共にする者への義務、そして地上の同胞への義務です。自分一人の勝手な振舞いは許されません。
薬物を使うのは自分の勝手という言い訳は許されません。正しい手段で、しかも努力の積み重ねによって身につけないといけません。もしも努力も葛藤もなしに得られるものだったら、それは初めから手に入れる価値のないものです」
───分かりました。最後にもう一つだけ質問があります。
さる有名なスピリチュアリストの本に、戦地で戦友と共に一瞬のうちに戦死して、その時のショックがその後も残っている霊の話が出ておりました。あなたのお話では霊が傷つくことはないとおっしゃっていますが、この場合はどう理解すればよいのでしょうか。
「一時的に傷つき、ショックが残ることはあります。が、肉体の傷が癒えるのと同じで、そのうち正常に復します。
事故死や戦死のような予期せぬ状態での死は霊にショックを与えます。死というものに何の予備知識もなかったために、その反動のようなものが生じるわけです。それで調整期間というものが必要となり、その間に自分が置かれている身の上についての理解と、霊的感覚の覚醒を促します。
あくまでも一時的なものです。霊が取り返しのつかない傷を負うことはありません」
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