Monday, June 27, 2022

シアトルの夏 シルバーバーチは語る 巻頭言  Silver Birch Speaks Introduction







巻頭言


本書は霊の世界の祝福を受けて物質の世界へ届けられるものです。願わくば今本書を手にされたあなたが、これを読まれることによって心の目を開き、魂に感動を覚えられんことを祈ります。生命の物的諸相の背後にある、より高い、より深い、より尊い、そしてより雄大な側面に気づくまでは、その人は暗い霧の中で生きていることになるのです。

シルバーバーチ

編集者ノート


ここに集められたシルバーバーチの教えは――シルバーバーチ自身はこれは自分の教えではなく、自分の所属界よりさらに高い界層から送られたものを自分が中継しているに過ぎないと言うのだが――全てを知り尽くした存在による、絶対に誤ることのない言葉として披露するものではない。

そもそも霊的交信なるものの目的は人間の批判的能力を殺(そ)いで盲目的に受け入れることではない。また、新しい宗教をこしらえたいという願望から行うものでもない。霊的啓示というのは固定されたものではなく、常に進歩的で、受け入れる人間の側の能力一つに掛かっているからである。

さて、シルバーバーチは常に人間の理性に訴えることを主義としている。従ってもしもその言説の中に読者の理性が納得しかねるものがあれば遠慮なく拒否するか、さらなる証明が得られるまで留保すればよい。

読者の便宜を考慮して私は、各章に掲げたテーマに関して、数多くの交霊会での霊言から適切なものを拾って編纂した。と言うことは、各章が一つの交霊会(の速記録)をそっくり文章におこしたわけではなく、三十回ないし四十回の交霊会でのシルバーバーチの霊言からの抜粋で構成されていることを承知されたい。

当然その構成に当たっては思想の流れに一貫性をもたせることに意を用いたが、さらに読み易さを考慮して文字を通常のローマン体と肉太のボールド体と斜体のイタリック体の三種類に使い分けた。

一九三八年三月

A・W・オースティン


 



序文 ハンネン・スワッファー


われわれがシルバーバーチと呼んでいる霊は実はレッド・インディアンではない。いったい誰なのか、今もって分からない。分かっているのは、その霊は大変な高級界に所属していて、その次元からは直接地上界と接触できないために、かつて地上でレッド・インディアンだった霊の霊的身体を中継してわれわれに語りかけている、ということだけである。

いずれにせよ、その霊が“ハンネン・スワッファー・ホームサークル”と呼称している交霊会の指導霊である。その霊が最近こんなことを言った。

「いつの日か私の(地上時代の)本名を明かす日も来ることでしょうが、私は仰々しい名前などを使用せずに地上の皆さんの愛と献身とを獲得し、私の説く中身の真実性によって確かに神の使徒であることを立証すべく、こうしてインディアンに身をやつさねばならなかったのです。それが神の御心なのです」

もっとも、一度だけ、シルバーバーチがその本名をもう少しで口にしそうになったことがあった。第1章の冒頭に出ている、自分が使命を仰せつかってそれを承知するに至る場面でのことだった。

ところで、私とシルバーバーチとの出会いは、一九二四年にスピリチュアリズムの真実性を確信して間もない頃のことだった。以来私は、毎週一回一時間あまりシルバーバーチの教えに耳を傾け、助言をいただき、いつしかその霊を地上のいかなる人物よりも敬愛するようになった。

シルバーバーチの地上への最初の働きかけは普通より少し変わっていた。スピリチュアリズムを勉強中の十八歳の無神論者が、ある日ロンドンの貧民街で行われていた交霊会にひやかし半分の気持で出席した。そして霊媒が次々といろんな言語でしゃべるのを聞いて、思わず吹き出してしまった。ところがその中の一人の霊が「そのうちあなたも同じようなことをするようになりますよ」と諌(いさ)めるように言った。

その日はバカバカしいという気持で帰ったが、翌週、再び同じ交霊会に出席したら、途中でうっかり居眠りをしてしまった。目覚めると慌てて非礼を詫びたが、すぐ隣に座っていた人が「今あなたは入神しておられたのですよ」と言ってから、こう続けた。

「入神中にあなたの指導霊が名前を名乗ってから、今日までずっとあなたを指導してきて、間もなくスピリチュアリストの集会で講演するようになると言っておられましたよ」

これを聞いてその青年はまた笑い飛ばしたが、それがその後間もなく現実となってしまった。

当初シルバーバーチは多くを語ることができず、それもひどいアクセントの英語だった。それが年をへるにつれて、語る回数が増えたことも手伝って、英語が飛躍的に上達し、今日ではその素朴で流麗な英語は、私がこれまで聞いたいかなる演説家もその右に出る者はいないほどである。

ところで、霊媒のバーバネルが本当に入神していることをどうやって確認するのか、という質問をよく受けるが、実はシルバーバーチがわれわれ列席者に、霊媒の手にピンを刺してみるように言ったことが一度ならずあった。恐る恐るそっと刺すと、思い切って深く刺しなさいと言う。すると当然、血が流れ出る。が、入神から覚めたバーバネルに聞いても全く記憶がないし、その傷跡も見当たらなかった。

もう一つよく受ける質問は霊媒の潜在意識の仕業でないことをどうやって見分けるのかということであるが、実はシルバーバーチとバーバネルとの間には思想的に完全に対立するものが幾つかあることが、そのよい証拠と言えよう。例えばシルバーバーチは再生説を説くが、バーバネルは通常意識の時は再生は絶対にないと主張する。そのくせ入神すると再生説を説く。

些細なことだが、もう一つの興味深い事実を紹介すると、シルバーバーチの霊言が《サイキック・ニューズ》紙に掲載されることになって速記録が取られることになるまでのことであるが、バーバネルがベッドに入ると、その日の交霊会で自分が入神中にしゃべったことが霊耳に聞こえてくるのだった。

これには訳がある。バーバネルはもともと入神霊媒となるのが嫌だったのであるが、自分がしゃべったことを後で聞かせてくれるのならという条件をシルバーバーチとの間で取りつけていたのである。速記録が取られるようになると、それきりそういう現象は止まった。

翌日その速記録が記事となったのを読んでバーバネルは、毎度のごとくその文章の美しさに驚く――自分の口から出た言葉なのに。

シルバーバーチは教えを説くことに専念しており、病気治療などは行わない。また心霊研究家が求めるような、証拠を意図したメッセージも滅多に持ち出さない。誠に申し訳ないが自分の使命は霊的教訓を説くことに限られているので、と言ってわれわれ人間側の要求の全てに応じられない理由を説明する。

最近私は各界の著名人を交霊会に招待している。牧師、ジャーナリスト、その他あらゆる分野から招いているが、シルバーバーチという人物にケチをつける者は一人としていない。その中の一人で若い牧師を招いた時、私は前もって「あなたの考えうる限りの難解な質問を用意していらっしゃい」と言っておいた。その牧師は日頃仲間の牧師からさんざん悪口を聞かされている“交霊会”というものに出席するというので、この機会に思い切ってその“霊”とやらをやり込めてやろうと意気込んで来たらしいが、シルバーバーチが例によって“摂理”というものを易しい言葉で説明すると、若者はそれきり黙り込んでしまった。難解きわまる神学がいとも簡単に解きほぐされてしまったからである。

さて、そのシルバーバーチを支配霊とする私のホームサークルは毎週金曜日の夜に開かれる。その霊言は定期的に《サイキック・ニューズ》紙に掲載される。その版権が私のホームサークルに所属するのは、サークルとしての私用を目的としてのことではなく、これを世界中に広めるためである。今ではシルバーバーチは地上のいかなる説教者よりも多くのファンをもつに至っている。あらゆる国、あらゆる民族、あらゆる肌色の人種の人々に敬愛されている。

しかし実を言うと、いったん活字になってしまうと、シルバーバーチの言葉も、その崇高さ、その温かさ、その威厳に満ちた雰囲気の片鱗しか伝えることが出来ない。交霊会の出席者は思わず感涙にむせぶことすらあるのである。シルバーバーチがどんなに謙虚にしゃべっても、高貴にして偉大なる霊の前にいることをひしひしと感じる。決して人を諌めない。そして絶対に人の悪口を言わない。

キリスト教では“ナザレのイエス”なる人物についてよく語るが、実は本当のことはほとんど知らずに語っているし、そもそもイエスという人物が実在した証拠は何一つ持ち合わせていないのである。

そのイエスをシルバーバーチは、彼が連絡を取り合っている霊団の中でも最高の霊格を持つ存在と位置づけている。長年にわたってシルバーバーチと親しく交わってきて、私はその誠実な人柄に全幅の信頼を置いているので、われわれはシルバーバーチの言う通り、新約聖書の主役であるイエス・キリストは地上で開始した霊的革新の使命に今なお携わっていると確信している。

そう信じて初めて(マタイ伝の最後に出ている)「見よ! 私はこの世の終わりまで常にあなたたちと共にいる」というイエスの言葉の真実の意味が理解できる。今の教会ではこの説明は出来ない。

これから紹介するシルバーバーチの教えを読まれるに当たってあらかじめ知っておいていただきたいのは、その全てが真っ暗闇の中で語られ、それがベテランの(盲人用の)点字速記者によって書き留められたという事実である。

元来じっくり語りかけるシルバーバーチも時には早口になることもあり、そんな時は付いて行くのは大変だったろうと察せられるが、あとで一語たりとも訂正する必要はなかった。もとよりそれはシルバーバーチの英語が完ぺきだったことにもよるであろう。が、通常の英語に直した時に要求される作業は句読点を書き込むだけで、しかもその位置はいつも、極めて自然に決まるような文章の流れになっていたというから驚きである。

シルバーバーチの哲学の基本的概念は、いわゆる汎神論である。すなわち神は大自然そのものに内在し、不変の法則として全てを支配している。要するに神とはその法則(摂理)なのである。それをシルバーバーチは「あなた方は大霊の中に存在し、また大霊はあなた方の中に存在します」と表現する。と言うことは、われわれ人間も潜在的にはミニチュアの神であり、絶対的創造原理の一部としての不可欠の存在を有しているということになる。

もっともシルバーバーチは理屈をこね回すだけの議論には耳を貸さない。人間は何らかの仕事をするためにこの地上へ来ているのだということを繰り返し説き、宗教とは「人のために自分を役立てること」と単純明快に定義する。そして、お粗末とは言えわれわれは、今この地上にあって、戦争に終止符をうち、飢餓を食い止め、神の恩寵が世界中にふんだんに行きわたる時代を招来するための、霊の道具であることを力説する。

「われわれが忠誠を捧げるのは一つの教義でもなく、一冊の書物でもなく、一個の教会でもなく、生命の大霊とその永遠不変の摂理です」――これがシルバーバーチの終始一貫して変わらぬ基本姿勢である。

それはサークルのメンバーの構成からも窺われる。当初のサークルは六人で構成されていたが、その中には三人のユダヤ人がいた。スピリチュアリズムでは民族の違いも宗教の違いにも頓着しないことの表れである。残りの三人も懐疑論者で、うち一人はメソジストの牧師だった人物で、スピリチュアリズムの真理を知ってメソジストの教義が信じられなくなり、サークルのメンバーになる前に脱会している。

シルバーバーチは、気分転換の意図もあってか、時おり自分以外の人物にも語らせている。《デイリー・メール》の創刊者ノースクリッフ、英国の小説家ゴールズワージー、同じく英国の小説家ホール・ケイン、政治家だったギルバート・パーカー、米国のジャーナリストだったホーラス・グリーリー、英国の聖職者ディック・シェパード、かの有名な大統領リンカーン、その他、サークルのメンバーの親しい知人などが声で出現している。

長年のメンバーである私は、シルバーバーチが前回での約束を忘れたという事実をついぞ知らない。そして、大切な真理を平易にそして人生に役立つ形で説くという本来の使命から一瞬たりとも逸脱したことがない。



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