More Wisdom of Silver Birch Edited by Sylvia Barbanell 巻頭言 編者まえがき
一章 二つの世界が交わる場所───ある日の交霊会───
頑固(かたくな)な心、石ころのような精神では真理の種子(たね)は芽を出しません。受容性に富む魂───率直に受け入れ、それが導くところならどこへでも付いて行ける魂においてのみ花開くものです。
あなたがそのような気持ちになるまでには、つまり真理を魂の中核として受け入れる備えができるまでには、あなたはそのために用意される数々の人生体験を耐え忍ばなくてはなりません。
もしもあなたがすでにその試練を経ておられるならば、その時点においては辛く苦しく無情に思え、自分一人この世から忘れ去られ、無視され、一人ぼっちにされた侘しさを味わい、運命の過酷さに打ちひしがれる思いをされたことでしょう。しかし魂は逆境の中にあってこそ成長するものです。黄金は破砕と精錬を経て初めてその純金の姿を見せるのです。
あなたがもしもそうした体験をすでに積まれた方ならば、今手にされている本書の中で私が語り明かす真理に耳を傾ける資格があることを、堂々と宣言なさることができます。しかしそのことは私が語ることのすべてを受け入れることを要求するものではありません。あなたの理性が反撥することは遠慮なく拒絶なさってください。あなたの常識的感覚にそぐわないものはどうぞお捨てになってください。
私もあなた方と少しも変わるところのない一個の人間的存在です。ただ私は、死後もなお続く人生の道を少し先まで歩んできました。今その道を逆戻りしてきて、あなたが死の敷居をまたいだのちに絶対的宿命として直面することになっている新しい、そしてより広大な人生がどのようなものであるかを語ってあげております。
どうか謙虚に、そして畏敬の念をもって真理を迎えてやってください。謙虚さと畏敬の念のあるところには真理は喜んで訪れるでしょう。そして、せっかく訪れてくれた真理が少しでも長居をしてくれるよう、手厚くもてなしをあげてください。
真理こそがあなたに自信と確信と理解力と、そして何にもまして、永遠に失われることのない、掛けがえのない霊的叡智をもたらしてくれることでしょう。
シルバーバーチ
編者まえがき
私はこれまでシルバーバーチの交霊会に何百回も出席しているが、その霊言を聞き飽きたという感じを抱いたことは一度もない。
三千年前に地上で北米インディアンとしての生涯を送ったというシルバーバーチは、現在では大へんな高級霊であるらしいことは容易に察しが付くが、その本来の霊的位階をけっして明かそうとしない。そのわけは、こうして霊界から戻ってくるのは地上人類のための使命を遂行するためであって、自分を崇めてもらうためではないからだという。
その使命とは、聞く耳を持つ者に永遠不変の霊的真理を説くこと、これに尽きる。その説くところは常に単純・素朴であり、そして単刀直入的である。宗派や信条やドグマにはいっさい囚れない。
その主張するところはきわめて単純・明快である。すなわち、われわれの一人一人に神の火花───完全なる摂理として顕現している宇宙の大霊の一部が宿っているのであるから、お互いがお互いのために尽くし合うのが神に尽くすゆえんとなるというのである。
そうした内容もさることながら、シルバーバーチが語るときのその用語の巧みさ、美しさ、流暢さは、初めて出席した者が等しく感動させられるところである。美辞麗句を並べるというのではない。用語はきわめて素朴である。それがいかなる質問に対しても間髪を入れずに流れ出てくる。
それを耳にしていて私は時おり、シルバーバーチが初めて霊媒(編者の主人モーリス・バーバネル)の口を使って語り始めた時のことを思い出すことがある。
もう二十年以上も前のことになるが、私たち夫婦は、あるスピリチュアリストの招きで、ロンドンでも貧民層が集まっている地域のある家で開かれている交霊会に出席した。第一回目の時は女性霊媒を通じていろんな国籍の霊がしゃべるのを聞いて主人はあほらしいといった気持ちしか抱かなかったが、第二回目の時にいきなり入神させられ、何やらわけのわからないことを喋った。
その時はシルバーバーチとは名のらなかったが、今のシルバーバーチと同じ霊である。そのころはぎこちない英語、どうにか簡単な単語をつなぐことしか出来なかったころのことを思うと、今は何という違いであろう。が、ここまでに至るのには大変な時間と経験を要したのである。
そのシルバーバーチの道具として選ばれた十八歳の青年霊媒は、その後の用意されている仕事の遂行に備えて、さまざまな試練と訓練を耐え忍ばねばならなかった。その目指す目標はただ一つ───シルバーバーチの語る教説を少しでも遠く広く地上に行きわたらせるための機会をもつことにあった。
良く知る者から見ればシルバーバーチは良き助言者、よき指導者であると同時に、よき友人でもある。決して人類から超然とした態度を取らず、世俗的な問題や人間的煩悩に対しても深い同情心を見せてくれる。
当初にくらべてシルバーバーチも性格が発達し深みを増した───というよりは、本来の霊的個性がより多く霊媒を通じて発揮できるようになったといった方が適切であろう。最初のころはふざけっぽく、時には乱暴なところさえ見せながらも、つねに愛すべき支配霊という感じだった。
それが次第に今日の如き叡智に長けた、円熟した指導者へと徐々に〝進化〟してきた。声の質も変化して、今では霊媒の声とはまったく異質のものとなった。
今でも、続けて出席していないと同一霊であるかどうかを疑うかも知れないほどの異質の側面を見せることがある。が、いつも変わらぬ側面がある。特にユーモアのセンスと当意即妙の応答の才能は少しも変わらない。
シルバーバーチの霊言はサイキック・ニューズ紙にずっと連載されてきており、書物にもなっている。その間には第二次世界大戦が勃発したこともあって各地の戦地においても読まれている。そして陸軍・海軍・空軍の兵士から、苦悶と苦難と疑問の中にあってシルバーバーチの言葉から何ものにも変え難い慰めと勇気を得ることが出来たとの喜びの手紙が数多く寄せられた。そのうちの一つを紹介しておこう。これは陸軍の一下司官からの手紙で、こう述べている。
〝私はたった今〟 More Teachings of Silver Birch (邦訳シリーズ第五巻)を読み終えたところです。終わりの部分はオランダを転戦中に読みました。その壮麗な説得力とさまざまな疑問に対する明快そのものの応答は深い感銘を受けました。
ぜひシルバーバーチ霊に、こうした戦地においても霊言が愛読され掛け替えのない影響を及ぼしていることを知っていただきたいと思って筆をとりました。どうかシルバーバーチの努力が今後とも何らかの形で認識されていくことを心から願っております。シルバーバーチ霊に神の祝福のあらんことを!
私はこうした霊的真理を折ある毎に僚友に伝え、それがこの戦地においてさまざまな波紋を呼び起こしております。私がスピリチュアリズムに関心を抱いて十五年にもなりますが、その測り知れない深さと高さを私の魂が身に沁みて味わったのは、やっとこの一、二年のことです云々・・・。
同じくシルバーバーチを知り尊敬してきた者の一人として、このたび新たに本書を編纂することになったのも、私にとっては愛の行為の結実に他ならない。その編纂の作業が終わったのは(第二次大戦の)戦乱が終わって間もなくのことだった。(それから二か月後に日本が降伏して全面的に終結する───訳者)
願わくは戦乱によって傷ついた暗い西欧世界にようやく訪れた平和がシルバーバーチのいう〝新しい世界〟の夜明けであってくれればと祈らずにはいられない。シルバーバーチが〝必ず来ます〟と述べ、そのためにわれわれに求めてきた視野も常にその方角である。そこにおいて初めて真の同胞精神が招来される。シルバーバーチの霊訓の基盤もまたそこにあるのである。
一九四五年六月 シルビア・バーバネル
訳者注───この〝まえがき〟の原文はかなり長文のものであるが、他のまえがき、特に第一巻の〝古代霊シルバーバーチと霊媒モーリス・バーバネル〟と重複する部分と、重複しなくてもあまり重要と思えない部分とがあり、それよりは霊言そのものを少しでも多く載せた方がよいとの私の判断で、それらは省いてある。
一章 二つの世界が交わる場所───ある日の交霊会───
その日の出席者は六人だった。ロンドンのアパートの一室で小さなテーブルを囲んで座り、全員が両手をそのテーブルの上に軽く置いた。そしてスピリチュアリスト用に作られた、霊力の素晴らしさを讃える讃美歌を歌っているうちにテーブルが動きはじめる。
そこでシルバーバーチ霊団の各メンバーがかわるがわるそのテーブルを動かすことによって挨拶した。最も、これは誰であるかが明確に分かるのは二人だけで、それ以外は挨拶の仕方にこれといった特徴はないのであるが、霊団を構成しているのが複数の男性のインディアンと英国人、二人のかつての国教会の牧師、著名なジャーナリスト一人、
アラブ人が一人、ドイツ人の化学者が一人、中国人が一人、英国人の女性が二人であることは分かっている。その全員がテーブルによる挨拶を終わるころには、そろそろ霊媒のモーリス・バーバネルの入神(トランス)の用意が整う。
トランスは段階的に行われる。軽いトランスの段階でシルバーバーチが〝主の祈り〟を述べ、出席者との間で挨拶ていどの会話を交わす。その間によくシルバーバーチは、霊媒をもっと深くトランスさせたいのでもう少し待ってほしい、と述べることがある。
いよいよ望み通りのトランス状態になるとシルバーバーチはまず祈りの言葉をのべ、それが速記されていく。その日の祈りは次のようなものだった。
「神よ。私たちは到達しうるかぎりの高く尊く清きものとの調和を求めて祈りを捧げるものです。私たちはあなたの中に完全なる愛と叡知の精髄と、宇宙の全生命活動を支配する永遠不減の大精神の存在を確信いたしております。小さき人間の精神ではあなたのすべてを捉らえることはできませぬ。それゆえに人間が抱くあなたについての概念は、ことごとく真理の全体像のおぼろげな反映にすぎないのでございます。
しかし同時に私たちは、全宇宙をその愛の中に抱擁し、規律と不変性をもって、過失も欠陥も汚損もなく統括し支配している絶対的摂理の驚異を理解することはできます。
すなわち、あなたはその叡知によって全存在の一つ一つの側面、活動の一つ一つが管理され、すべてが一つのリズムのある、調和のとれた宇宙機構の中で滞ることなく流動しております。その中にあってあなたの子等はそれぞれの定められた位置を有し、全体に対して必須にして不可欠の役割を演じているのでございます。
その一つ一つの小さな火花があなたの巨大なる炎の存在に貢献いたしております。私どもは各自に潜在する未熟なる霊の萠芽がその始源であるあなたとのつながりに気づき、永遠に切れることのない霊的きずなによって結ばれていることを悟ることによって、その霊性を存分に発揮することになるよう指導いたしております。
私たちの仕事は、人間が今発揮している資質よりさらに精妙なる霊的資質を発揮することによって、今は手の届かない高所を目指し、待ち受ける霊の宝庫へ一歩でも近づこうとする向上心を鼓舞すべく、力と知識と叡知の源であるあなたの存在を説くことにあります。
宇宙には、資格ある者なら自由にそして存分にわがものとすることのできる、莫大な霊的宝庫が存在いたします。そして地上よりはるかに広大な生活の場における新たな体験から生み出された叡知によって、地上世界に光明と豊かさをもたらさんとしている進化せる先輩霊もまた無数に存在いたします。
その活動の障害となるのは偏見と歪曲、迷信と無知、そして人間生活の暗黒面に所属するものすべてが蓄積せるものです。
私たちは地上世界を知識の照明によって満たし、人間がつねに真理によって導かれ、あなたの愛の存在に気づいてくれることを望んでやみませぬ。そうすることがあなたからの豊かな遺産と崇高なる宿命を悟らせ、手にした真理に則った生活を送らせてあげるゆえんとなるからに他なりませぬ。
ここにあなたの僕インディアンの祈りを捧げます」
少し間を置いてから一同に向かって───
本日もこうして皆さんとともに一堂に会し、霊の世界からの私の挨拶の言葉と愛をお届けできることをうれしく思います。前回お会いして皆さんの愛の温もりを感じて以来久しぶりですが、またこの部屋を訪れて霊的仕事の回線をつなぎ、地上の人々のためにお役に立つことができることになりました」
そう述べてから、まず最初に、しばらく病気のために欠席していた女性に向かって、
「ようこそお出でになりました。あなたのお姿が見えないと、どうも物足りなく思えるのです」と言うと、その女性が、
「これはまた有難いお言葉をいただいて恐縮です」 と月並みな挨拶をした。するとシルバーバーチが、
「いえ、事実を申し上げているのです」 と真剣な調子で述べた。 (訳者注───すぐれた指導霊による交霊会ではレギュラーメンバーは何らかの存在価値を持った者が厳選されている。中にはただ出席して椅子に腰かけているだけで好影響を及ぼす人もいる)
続いてその女性のご主人で、交霊会の速記係をしている人に挨拶をし、それから二言三言出席者と軽いやり取りをしたあと、いよいよ本題へと入っていく。たとえばその日は次のような話をした。
「ここにおいでの皆さんは人類全体の役に立つ才能、能力をお持ちの方ばかりです。これまで、その能力ゆえに、さらに豊かな才能を持つこちらの世界の者から援助を受けてこられました。
ぜひその能力を実らせて、代わって皆さんが多くの人々によろこびを与え、さらにその人たちが自分にも世の中の役に立つ資質があることに気づいてくれるようになる───こうしてお互いがお互いにのためにという輪がどんどん広がっていきます。
世間の中傷を気にしてはいけません。反発に動揺してはなりません。嫌悪の態度を見せられても気になさらないことです。あなた方がこの地上に生を受けたそもそもの使命に向かってひたすら努力している限り、そんなものによって困った事態になることはありません。
地上世界にはまだまだ奉仕の精神が足りません。絶望の淵にあえぐ人が多すぎます。心は傷つき、身体は病に冒され、解決できない問題に苦悶する人が無数にいます。
そういう人たちを真理の光の届くところまで連れてきてあげれば、悩みへの解答を見出し、乱れた生活を規律あるものにしようとする心が芽生え、すべての人間が平和と調和の中で生きていける環境作りに意欲を燃やすことになりましょう。
休暇中に私は、長い間住みなれた界層に戻ってまいりました。そこで多くのことを見聞して、それを出来るだけ皆さんにお分けしてあげるべく、こうしてまた帰ってくるのです。
そのとき私はあなた方のまったくご存知ない霊たち───私が誇りを持って兄弟と呼び姉妹と呼べる進化せる霊たちからの愛と善意をたずさえてまいります。その霊たちも地上の悩める者、苦しむ者、人生に疲れはてた者のために献身している私の仲間であり協力者なのです」
こう述べてから、一転してシルバーバーチ一流のユーモアを混じえて、
「ああ、そうそう、うっかり忘れるところでした。あなた方のことをなかなかしっかりした人たちだと感心しておりました」
「誰がですか」 と一人のメンバーが聞くと
「ですから、私が話をしてきた上層界の霊たちです」
「あなたの〝秘密の参謀(ブレーン)〟ですか」 と、別のメンバーが冗談めかして聞いた。
「いえ、いえ、そんなんじゃありません。〝父の住処〟にいる人たちです」(訳者注───ヨハネ14・2〝わが父の家には多くの住処がある〟からの引用で、これがキリスト教においてどの程度の現実味をもって理解されているか疑問であるが、 『ベールの彼方の生活』 によると、それが地上を最低界とする広大な宇宙を経綸する〝政庁〟とも言うべき実在の世界であることが分かる。
〝秘密のブレーン〟かと聞かれて〝とんでもない〟といった調子で答えているのは、人間からすれば目に見えないから秘密であるかに思えるだけで、シルバーバーチにすればごく当たり前の現実の世界なのである)
続いて別のメンバーが友人が他界した話を持ち出すと、
「この会(の霊団)も最初は小さな人数で始めましたが、その後どんどん数が増えて、今では大所帯となってきました。しかし、いくら増えても、これ以上入れられなくなるようなことはありませんから、ご心配なく」とユーモアを交えて述べた。
交霊会も終わりに近づいて、シルバーバーチは最後に次のようなメッセージを述べた。
「私はあなた方のすべてに好意を抱き、これからのちも援助の手を引っ込めるようなことは致しません。そして、きっとあなた方も私に対して好意を抱いてくださり、私の意図することに献身して下さるものと信じております。
どうか、どこのどなたであろうと、私に好意をお寄せ下さる方のすべてに私からの愛の気持ちをお伝え頂き、さらに次のメッセージをお届けください。
私に対して愛念と思念と善意と祝福をお届けくださる大勢の見知らぬ方々に対して、私は喜びと感謝の気持ちをお伝えしたく思います。私は自分がそういう情愛の運び役であることを誇りに思っております。
それは私がその方たちにとって何らかのお役に立っているからこそであると信じるからであり、たとえ私の姿を御覧になることはなくても、私はその方たちのご家庭へお邪魔していることをご承知ください。実際にお伺いしてお会いしているのです。
私にとっては愛こそが生活であり、人のために自分を役立てることが宗教であるからです。そうした私の考えにご賛同くださり、同じ生活信条を宗(むね)とされる方すべてを心から歓迎するものです」
そして最後を次の言葉でしめくくった。
「さて、みなさん、ほんの僅かな時間でもよろしい、時には日常的な意識の流れを止めて、まわりに溢れる霊の力に思いを寄せ、その影響力、そのエネルギー、永遠なる大霊の広大な顕現、その抱擁、その温もり、その保護を意識いたしましょう。
願わくはその豊かな恵みに応えるべく日常生活を律することが出来ますように。その中で神の永遠なる摂理に適っているとの認識が得られますように。どうか神の道具としての存在価値を存分に発揮し、豊かな祝福をもたらしてくれた真理の光を輝かせて、人々がわれわれの生活をその真理の模範となすことができますように」
そう言い終わると霊媒がいつものモーリス・バーバネルに戻り、一杯の水を飲み干して、それで会が終わりとなる。以上がある日のホームサークルであり、いつもこれと似たようなことが行われているのである。